ピエール瀧で窮地の「いだてん」 「菊間」「極楽・山本」の不祥事で、あのドラマはどう対応した?

ピエール瀧で窮地の「いだてん」 「菊間」「極楽・山本」の不祥事で、あのドラマはどう対応した?

ピエール瀧

■NHKは注意喚起


 NHKは3月14日、番組制作などの部門に、「電気グルーヴの楽曲をBGMに使用しないこと」の周知徹底を呼びかけた。

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 もちろん、ピエール瀧容疑者(51)が12日にコカインを使用したとして逮捕されたからだ。

 メールの内容を、箇条書きでご紹介しよう。文面が丁寧な「です・ます調」というのも、何となく“皆さまのNHK”っぽい。

《出演作のリストアップは終了しましたが、電気グルーヴの音楽は比較的使いやすいため、番組のBGMに使わないよう注意喚起させていただきます》

《ちなみに今夜放送分の番組でBGMに使われていたケースが見つかっています。先ほど、急遽差し替えました。音響担当にも注意喚起しています》

《NHKオンデマンドの配信番組のうち、ピエール瀧氏の出演している番組については、いったん配信を停止します。例外的に「いだてん」だけは、ピエール氏の出ていない回はオンデマンドに残します》

 そのNHKだが、BSで放送予定だった映画の差し替えを発表すると、ネット上で思わぬ“ツッコミ”が起きてしまったのをご存知だろうか。

 NHKはBSプレミアムで16日と23日に放送する予定だった「ALWAYS 続・三丁目の夕日」(2007年:東宝、山崎貴監督)と「ALWAYS 三丁目の夕日'64」(12年:同)の2作品を差し替えると14日に発表した。どちらの作品にも、ピエール瀧が「水野」という役で出演しているからだ。

 そして、差し替えられる映画が「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(1984年:パラマウント映画、スティーヴン・スピルバーグ監督)と「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」(89年:同)であることが明らかになると、たちまちネット上で話題になった。

 例えばJ-CASTニュースは15日、「ピエール瀧『差し替え』が乱用死のリバー・フェニックス出演作 これはNHKの抵抗なのか」と報道した。

 23日に放送予定の「最後の聖戦」には、リバー・フェニックス(1970〜1993)が出演している。ところが彼は23歳で夭折しており、その死因はヘロインとコカインの過剰摂取を原因とする心不全だったのだ。

 これでネット上は「よりひどいケースに差し替えてどうする」とツッコミの嵐。ちなみにJ-CASTニュースのタイトルにある「抵抗」だが、「リバー・フェニックスの死因を知りながら、担当者がわざと選び、安易な自粛ムードに“抵抗”を示したのではないか」という冗談半分の推測を指す。

 過去に発表された作品でも、これほど“配慮”するのだ。これから公開を迎える作品は、文字通りの大騒動となっている。


■「働き方改革」で地獄


 スポニチアネックス(電信版)が15日に報じた、「『麻雀放浪記』公開へ 重要な五輪組織委元会長役で再撮影不可 有料コンテンツとして判断は観客に委ねる」によると、「麻雀放浪記2020」(東映・白石和彌監督)は予定通り4月5日に上映されることが決まったという。

 この作品にピエール瀧容疑者は、「2020年の五輪組織委員会の元会長」という重要な役で出演。同紙によると、編集でのカットは無理とされ、公開まで1か月を切っているため再撮影も不可能と判断。「有料コンテンツとして観客の判断にゆだねる」ことを決めたと報じた。

 更に、この記事は5月17日に公開予定の「居眠り磐音」(松竹・本木克英監督)にも言及。こちらは「ピエール瀧容疑者の代役を立てて再撮影を行う」と伝えた。

 もちろんNHKも他人事ではない。日刊スポーツ(電子版)は15日、「NHK大河『いだてん』瀧容疑者の代役探しに本腰」の記事を掲載した。

 大河ドラマでも、ピエール瀧容疑者は重要な役を演じている。「足袋職人の黒坂辛作」という役どころで、中村勘九郎(37)が演じる主人公の金栗四三の盟友。今さら脚本から消すわけにもいかず、代役を決断したのだろう。

 ドラマの制作に関わったベテランのテレビマンは、「不祥事が起きると、我々にとっては地獄が待っています。今も昔も、それは同じです」と振り返る。

「映画の撮影現場では、カメラが1台というのは当たり前の光景です。ところがテレビドラマでは、数台のカメラを使うことは珍しくありません。俳優さんに1シーンをぶっ通しで演技してもらい、複数のカメラが主役さんや相手役を狙うわけです。場合によっては、手や背中にしかレンズを向けないカメラもあります。そうして撮影した素材を編集で組み合わせて、テレビドラマが放送されているわけです」

 出演者が不祥事を引き起こすと、ドラマのプロデューサーや監督は「編集でカットされた別カメラの撮影分」を大急ぎでチェックするわけだ。

「不祥事を起こした役者さんのセリフを消しても、ストーリー上の問題がなく、カメラもしっかり他の役者さんの顔や背中を撮影。編集で差し替えても話は見事につながる、というのが理想的ですが、そんなにうまくいくのは稀です。しかも昨今は“働き方改革”で、ドラマ班の労働時間も厳守が徹底されています。時間は足りないけど、徹夜作業もできない、という別の問題も発生するようになりました」(前出・テレビマン)

 実例として、このテレビマンは、2005年に発覚した大スキャンダルを挙げる。スポーツ報知が同年7月20日に報じた「田口淳之介がフジ『がんばっていきまっしょい』でNEWS飲酒メンバー代役」の記事をご覧いただこう。要点がわかりやすいよう箇条書で引用させてもらった。年齢も肩書も当時のものだ。


■共演者も“大損”


《フジテレビは19日、人気グループ「NEWS」に所属する未成年タレント(18)を飲酒に誘った菊間千乃(ゆきの)アナ(33)らの減給処分を発表した》

《未成年タレントが出演していた同局系ドラマ「がんばっていきまっしょい」の代役を、人気グループ「KAT-TUN」の田口淳之介(19)が務めることが決定》

《関西テレビでは、未成年メンバーの処分が発表された16日、「19日放送分以降に関して当人の出演を見合わせる処置を取る」との方針を発表。19日に放送された第3話は、未成年メンバーの出演シーンをカットして放送した》

 テレビマンが地獄だったと回想するのは、19日の放送に間に合わせるため、処分の下ったメンバーを編集で消す作業だ。

「完成は放送直前です。19日まで一睡もできませんでした。使わなかった別カメラの映像をピックアップし、差し替えていくわけです。しかし、彼の役柄は非常に重要なものでしたから、編集でごまかすのは1話が限界でした。ドラマの途中で役者が代われば、当然ですが、視聴者はシラケます。背に腹は帰られず、結局は代役が決まりました」(同・テレビマン)

 代役は代役で茨の道だ。このテレビマンは「代役を立てるにしても、スケジュールの確保が大変なんです。その代表例が『東京タワー』でしょう」と指摘する。

 こちらも、まず関連記事をご覧いただこう。2006年8月31日にスポーツニッポンは「フジ『東京タワー』 代役・ドランク塚地で撮り直し――11・18放送」との記事を掲載した。一部を引用させていただく。同じく、年齢も肩書も当時のものだ。

《放送が7月から延期になっていたフジテレビドラマ「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜」が11月18日(後9・00)に放送されることになった。強姦(ごうかん)の疑いで書類送検された元「極楽とんぼ」の山本圭一容疑者(38)の出演シーンに代役を立てて、収録し直す。代役はお笑いコンビ「ドランクドラゴン」の塚地武雅(34)がつとめる》

《山本容疑者が演じた役は、主人公・雅也(大泉洋)の幼なじみ「バカボン」。小太りで愛きょうあるキャラクターだ。代役が塚地に決定したのは今月の半ば。代役探しに約1カ月かかったのは、“小太りキャラ”は意外にも!?売れっ子が多く、スケジュール確保などの点で難航したためという》

 無事に代役が決まっても、再撮影は更に大変だ。連続テレビドラマなら、本編の撮影を続けながら、共演者に「かつて演じた場面」をもう一度、カメラの前でやってもらうことになる。コストが馬鹿にならないのは言うまでもない。

「再撮影を行う場合、代役の役者さんには、当然ですがギャラを支払います。ところが、再撮の現場に駆け付けてくれた共演者の皆さんは、ノーギャラが業界の不文律です。予算的にギャラの捻出が不可能なのが理由ですが、そのためにスタッフは頭を下げっぱなしです。どんな業界でも苦労はあるでしょうが、現場の負担は並大抵のものではありません」(同・テレビマン)

 テレビ局としても、ノーギャラでこき使うだけでは今後に差し支える。共演者を次回作のドラマで優遇したり、共演者が所属する事務所の役者をバーターで出演させるといった配慮をするなど、きめの細かな“アフターサービス”が求められる。

「NHKもありとあらゆることをやったでしょうし、これからもやっていかなければならないわけです。同業者として、本当に同情を禁じ得ません」(同・テレビマン)

 日刊スポーツ(電子版)は16日、「NHK『いだてん』瀧容疑者の代役は来週中にも発表」と報じた。

 先に触れた「東京タワー」の代役探しとは比べものにならないスピードには驚かされるが、NHKが関係各位に莫大な“借り”を作ったのは間違いないだろう。そしてこればかりは、ピエール瀧容疑者に損害賠償ができない。

 フリーの赤江珠緒アナ(44)は13日、毎週月曜から木曜までパーソナリティーを務めるTBSラジオの「赤江珠緒たまむすび」(午後1時〜午後3時半)に出演。同番組の木曜パートナーを務めるピエール瀧容疑者の逮捕について「本当にバカたれが、何やっているんだという感じです」と泣きながら叱責して話題となった。

 こうして関係者の苦労を見ると、「バカたれ」の言葉が、よりリアルなものとして伝わってくる。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月17日 掲載

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