東野幸治が描く“トミーズ健伝説”「中国でお尻を4回出して謹慎処分になった男」

東野幸治が描く“トミーズ健伝説”「中国でお尻を4回出して謹慎処分になった男」

東野幸治

 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「元気が出る男、トミーズ健(4)」。

 ***

 番組の企画でホノルルマラソンに挑戦したトミーズ健ちゃんの話の続きです。

 スタートの号砲と共に自分の靴紐がほどけているのに気がつき身体を屈めた健ちゃん。後ろには何十何百何千のランナーが走り出しているわけですから、大混乱が起こりました。

 当たり前ですが、健ちゃんの後ろのランナーは健ちゃんの上に覆いかぶさり、またその後ろのランナーも覆いかぶさり……止めようにも後ろからどんどんランナーが来るのでもうメチャクチャです。誰がスタート地点でいきなり屈みますか? 危ないに決まっています。自殺行為です!

 健ちゃんは案の定、膝を強打しました。助けを呼んでも誰も来てくれません……って当然です。スタート地点ですから。覆いかぶさってしまったランナーたちが気の毒でなりませんが、2万人以上の市民ランナーが健ちゃんの後ろにはいて、その後もたくさんのランナーに覆いかぶさられ、蹴られ踏まれました。

 健ちゃんは死ぬ思いで転げ回り、大通りの真ん中から道の端にたどり着きました。そして担架に乗せられ、救急車で地元の病院に運ばれて行きました。診断の結果、膝のお皿が割れていたそうです。もちろんロケも中止。スタートしか撮影できないマラソン企画ってあります? 聞かされた我々は大爆笑でした。

 またこんな事もありました。2007年2月、中国での番組ロケ中、「健、観光客の人にケツ出すなや」と相方の雅さんに言われた健ちゃん。その言葉をフリだと思ったのか、観光客に向かってお尻を露出しました。完全に調子に乗っていました。現地のスタッフに注意されたにもかかわらず、その後もロケ中に尻出しを計4回。

 それにより地元公安当局から厳重注意を受けました。たちまち中国政府から日本政府に抗議が来たそうです。もう完全に国際問題です。そして、芸人がお尻を4回出した結果、会社からは謹慎処分を受けました。本人は「二度とお尻は出しません」と謝罪しました。

 謝罪会見の前に会社からは「絶対に笑うな! 10秒間頭を下げ続けろ!」と怖い顔で言われたそうです。その通りに真面目な顔で謝ったら、知っている記者の数人が笑っていたそうです。

 そして当時入院していた嫁の病室に行き謝りましたが、めちゃくちゃ叱られ、嫁が入院しているので台所でお米を研いでいた子供達にも謝ったそうです。

「すまんなぁ。お父ちゃんお尻を4回出して謹慎処分になってん。もうお尻は出さへんからなぁ。学校でいじめられてないか?」

 真剣ゆえに余計に滑稽なその姿に私はまたまた大いに笑い、元気をもらいました。

 お忘れかもしれませんが、健ちゃんは漫才師です。吉本の大看板「トミーズ」で、雅さんはもちろん健ちゃんも漫才に命をかけてます。それなのに、若手漫才師が命を削る漫才の祭典「M-1グランプリ」の生放送は、毎年ストリップ劇場のロビーのテレビで観るそうです。なぜなのか? 実は年末恒例、人気ストリップ嬢が集まる「S-1グランプリ」が開かれているからだそうです(S-1のSはストリップのSだと思われます)。

「なかなかの面子が揃ってんねん。そら、M-1よりS-1やろ。でも休憩中はロビーに出て、テレビでM-1観てたで」

 全く悪気がありません。それでこそ、健ちゃんです。最強で最高です。これからも私のために面白いエピソードをどんどん作ってください。なにせ私の元気の源ですから。お願いします! 健ちゃん!

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。

「週刊新潮」2019年4月4日号 掲載

関連記事(外部サイト)