〈わたし、定時で帰ります。〉「ヒロインは最初から吉高由里子さんをイメージ」 原作者が語る「ドラマの愉しみ方」

 吉高由里子さんが“残業ゼロ! 定時で帰る!” がモットーのニューヒロインを演じるTBS火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」が、いよいよ本日スタートする。撮影が熱を帯び始めた3月某日、ドラマの原作『わたし、定時で帰ります。』『わたし、定時で帰ります。ハイパー』の著者・朱野帰子さんが撮影現場を訪問。大のドラマ好きでもある朱野さんが、「こだわりのセット」や「キャストへの思い」など、ドラマの「見どころ」を存分に語った。

■ネットヒーローズの「オフィス社会学」


――ドラマの主要な舞台となるのが、主人公・東山結衣(吉高)が働くWEB制作会社「ネットヒーローズ」制作4部だ。スタジオ入りした朱野さんが、まず興味津々で見て回ったのが、実際のオフィスにしか見えない、そのセットだった。

「結衣をはじめ、三谷(シシド・カフカ)、吾妻(柄本時生)、来栖(泉澤祐希)など同僚たちのデスクが、すぐ『あの人の机だ』と分かるのに驚きました。PCやキーボードに対するこだわりなど美術でもそれぞれの『働き方』を見せている。

 特に吾妻の机は、原作を読んだ方はすぐに分かると思います。一瞬しか映らないかもしれない細部を、大勢のプロフェッショナルが作り込む……テレビドラマの贅沢さ、素晴らしさを感じました。ネットヒーローズのオフィスがホワイト企業仕様になっているのも面白かった。

 現在のIT関連企業が、少子化で人手不足の中、いかに優秀な人材を囲い込もうとしているか、という背景も感じられて、『オフィス社会学』的な観点からも興味深かったです」

――テレビドラマは昔から、その時々のトレンド、ファッションやインテリアの最先端を取り込み、視聴者はその世界に憧れ、真似してきた。

「私が今見ている海外ドラマ『スーツ』では、弁護士事務所の女性管理職のまとうファッションが“私もああいう地位に就きたい”と思えるほど、かっこいい。そういう細部を見るのが大好きなので、結衣のオフィスファッションが楽しみです。

 晃太郎(向井理)がスーツの下に着ているTシャツには“服装に頓着しない仕事人間”、三谷の服からは“問題を抱えてはいるがデキる社員”という、それぞれのパーソナリティが伝わってくる。リアタイではストーリーに集中、録画では細部をチェック、という風に少なくとも2回は見たくなるドラマだと思います」

■吉高由里子と原作の「幸せなマリアージュ」


「私が仕事小説を書くときに、勝手にイメージしていたヒロインが、実は吉高さんでした。後出しで言っているっぽいですがホントです。マキヒロチさんが描いてくださった原作の表紙の結衣のイラストも、限りなく吉高さんっぽいでしょう? 

 一世代前の“お仕事もの”のヒロインは、女を捨てて男性化したキャラクターか、あるいは男性たちと対立する超人的な女性キャラクターが多かった。でも、私の世代はそんな特別な女性だけがキャリアを積んでいるわけではない。だから原作では、等身大のままで仕事します、という主人公を描きたいと思っていました。

 実は『普通』でいられる人が最も強い。そういう役は難しいだろうと思うのですが、吉高さんならきっとやってくださると思っていましたし、試写を拝見して、私が想像していた以上に魅力的な結衣が誕生していることに驚きました。やっぱりすごい!

 そんな吉高さんと東山結衣というキャラクターを引き合わせてくださったプロデューサーのYさんには感謝しかありません。幸せなマリアージュだと思います」

■向井理の晃太郎は「しげぇさん」?


――そんなヒロインの一方で、向井理が演じる結衣の上司・種田晃太郎は、仕事に集中しすぎると周りが見えなくなり長時間労働も辞さないワーカホリック体質。周囲には明かしていないが、実は、結衣の元婚約者でもある。

「向井さんについては、ぜひ言いたいことがあるんです。私はNHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』で、向井さんが演じた水木しげる、『しげぇさん』役が大好きなんです。徹夜してマンガを描くシーンの横顔がとても恐ろしくてかっこいい。原稿用紙にしがみつくようにして描き上げたマンガの原稿料は結局もらえず、なのに次の仕事をもらって帰ってくる。成功するとわかって見ているからいいものの、身を削って仕事をして報われなくても文句一つ言わない姿が痛々しくて、でもその姿につい感動してしまう。

 原作の晃太郎には『長時間労働がかっこよく見える危うさ』をまとわせたかったので、書いている間は『ゲゲゲの女房』の向井さんを何度となく思い浮かべていました。だから、晃太郎の役が向井さんで決まったと聞いた時は、ちょっとびっくりしました……」

■居心地のよい「中丸雄一」とカッコいい「内田有紀」


――主人公・結衣が現在付き合っているのは、ネットヒーローズのライバル会社に勤務する諏訪巧。KAT−TUNの中丸雄一が演じる巧は、アウトドアが趣味で、料理をしたり、遠出をしたり、仕事よりもプライベートな時間を大切にしている。

「原作では、枚数の関係で結衣がなぜ巧のことを好きになったかは書けずに終わったんです。でも、なかなか変われない晃太郎よりも、時流に合わせて変化できる巧と結婚したほうが楽なんじゃないかという気持ちで書いていました。結衣も巧といたほうが居心地いい。ドラマではそのあたりがきちんと描かれるはずです。巧にも色々と問題はありますけど、完璧な男性はいませんしね」

――そして、双子を出産後わずか半年で仕事復帰するワーキングマザー・賤ヶ岳を演じるのが、内田有紀。

「結衣にとって賤ヶ岳は大好きな先輩ですが、その先輩が出産を経て少しずつ変わっていってしまう。原作では2人がどんな先輩・後輩関係を築いていたのかまでは書いていないので、ドラマでどう描かれるか楽しみです。

 最近は柔らかい役が多い内田さんですが、デビューした時はボーイッシュではっきりものを言う、憧れの先輩というキャラクターでした。TRFのヒット曲『サバイバルダンス』とともに新しい時代の女子が登場した!とワクワクしたのを覚えています。

 昨年NHKで放送された内田さん主演の『荒神』も大好きなドラマですが、内田さんが勇気ある強い女性として出てきて嬉しかった。その内田さんが、人の何倍もエネルギーを持っている賤ヶ岳という役をやってくださるなんて感激です。とにかく今回はかっこいい内田有紀さんが観たいです」

――最後に、このドラマへの期待を改めて朱野さんに語ってもらった。

「『わたし、定時で帰ります。』というドラマタイトルがテレビだけでなく、ネットでも街頭広告でも流れて、皆さん心がザワザワしていると思うんです。残業せざるを得ない人は、ムカっとしているかも。でも、観ていただけたら、いろいろな働き方をする人の心に寄り添った話だということが分かってもらえると思います。

 ドラマにはオリジナルの設定やストーリーもたくさん入れていただいていて、原作をはるか超えて心に響く物語になっています。 “絶対に会社を休まない”三谷のエピソードが出てくる第1話の試写を拝見しましたが、就職氷河期世代で長時間労働体質である私は、シシドさんの台詞を聞いて涙が出そうになりましたし、ユースケ・サンタマリアさん演じる福永が本当に怖いです(笑)

 働き方というのは生き方の問題なので、否定された時に心が大きく動くのは当たり前のことだと思うんです。向井さんがインタビューで『いろんな人の主観がぶつかりあってる』と仰っていましたが、その通りで、みんないろんな人生や過去や感情を背負ってひとつの職場に集まってきている。どれか一つが正義ではなくって、それぞれの働き方、生き方があるんだということを実感できる、素晴らしいドラマになると思います」

デイリー新潮編集部

2019年4月16日 掲載

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