樹木希林さんが「週刊新潮」に語った「夫・内田裕也をそれでも見放さなかった理由」

樹木希林さんが「週刊新潮」に語った「夫・内田裕也をそれでも見放さなかった理由」

内田裕也を掌で転がしていた

■樹木希林さんが週刊新潮に語った「全身女優」「内田裕也」「死生観」(1/2)


 大女優でありながら、樹木希林さんは本誌(「週刊新潮」)の、時に意地悪な取材にも嫌な顔一つ見せずに答えてくれた。生死に関わる話も彼女が語ると、上質なユーモアを帯びた人生訓に変換された。樹木が本誌に遺した膨大な談話から、読み伝えるべき言葉を厳選してお届けする。(以下敬称略)

 ***

〈たしかに世知辛い世の中である。リップサービスすれば炎上し、居場所を明かせばストーカーに付きまとわれる。だから、芸能人の面々が我々の取材に、メールやFAXでのやり取りだけで済ませたがる気持ちは、わからないではない。

 だが、昨年9月15日、彼岸へと渡っていった女優の樹木希林(享年75)は、昔かたぎの姿勢を最後まで変えなかった。時間が許すかぎり、訪ねた本誌記者を受け入れ、含蓄のある言葉を並べてくれたのである。

 諧謔(かいぎゃく)を交えながら語られた言葉の数々は、まさに達観であり、そのまま人生訓だった。全体で10時間にも及んだその語りを、厳選して庫出しするが、なかでも樹木の人生観が色濃く表れるのは、伴侶に絡む話だった。

 まずは、今年3月17日、樹木の後を追うように逝った夫の内田裕也(享年79)について尋ねた際の言葉を。2011年5月、内田がCAの女性に復縁を迫り、強要未遂などの疑いで逮捕された直後、自宅を訪ねた記者に、〉

 刑事さんが12時に来るので、ちょっと慌ただしくて申しわけないです。でも、お宅は面白い週刊誌だから、いいですよ。

〈と前置きし、語りはじめた樹木。腰の低さにはいつも恐れ入った。〉


■「あたしに1円もくれません」


 ワイドショーのレポーターの方が留守番電話に、「樹木さん、大変なことになりました」って、血相変えたメッセージを入れてくれてたんですけど、あたしとしては全然大変じゃないのよ。これまでもいっぱいあったから。最近も本木さんやあたしに「お前、好事魔多しっていうから気をつけろよ。ちゃんとしてろよ」と言ってたんです。「はい、わかりました」と言ったけど、魔は自分だったじゃないかと言いたいですね。

 今までもこんなことはあったんですけど、女性が届け出なかったんだよね。刑事さんの話を聞くと、内田さんは「謝りたい」って言ってるみたいね。「あたしに謝ると言ってるの?」と聞いたら、「相手の女性には謝りたいみたい」ですって。

〈この時、夫の逮捕を受け、樹木も会見を開いたが、そこには女優としての責任感も垣間見える。〉

 家の前にワーッと人だかりができて、家族が一歩も外に出られないから会見になっただけなんです。こんな話でみなさんをお招きして会見なんて、こんなおこがましいことありません。でも、みなさんにご迷惑をおかけしているわけですから、ハッキリさせたほうがいいかと思いまして。

 あぁ、(1981年に)勝手に離婚届を出された時も会見しましたね。あの時は筋が通らないと思ったから、ハッキリさせようと思ったの。でも、そのあとに会ったら、内田さんも会見の様子を知ってて、「お前、面白いこと言ってたじゃねぇか」ですって。

 まぁ今回は蓮舫さんの反応も見れましたしね。なんと申しますか、器の小ささと言いますか、この国は大丈夫かな、と思いました。

〈内閣府特命担当大臣だった蓮舫参院議員は記者から、事業仕分けによく姿を見せていた内田逮捕の感想を求められ、「感想はありません」と冷たく言い放っていた。

 ところで、逮捕時に内田の住所として発表されたのは、樹木名義のマンションだった。〉

 内田さんが住んでるマンションは、あたしのお金を管理している「希林館(きりんかん)」の持ち物です。あれはそうねぇ、「あれは3年前〜♪」くらいですね。内田さんは別の賃貸マンションに住んでいたんですけど、「家賃が払われていないから出て行ってくれ」って言われてるんだと。「じゃ、あたしの持ってるところに住んだらどうですか」ってね。

 内田さんは今日まで三十数年間、あたしに1円もくれませんね。「なんでお金をくれないんですか」と何度も聞いたんですけど、「ねぇんだ。俺だってあれば払うよ」の一言。でも、入る先からみんな使っちゃうんだから。で、「こっちの借金を払っといてくれ」とか平気で言ってくるんですよ。「それだけ女の人を作って遊んでいるのに、どうしてあたしにお金を無心するの」って聞いたこともあるんですよ。そしたら「夫婦なら助け合うのが当然だろ」。


■「出会った責任」


〈それでも見放さなかった理由には、おいおい触れるが、まずは内田が住んでいたマンションの室内について。〉

 一度、地震が起きたあとに部屋の写真を持ってきたんです。物が崩れたというので見たんですけど、地震の前と全然変わらない。あまりに雑然としていて気が滅入るから、最近は全然行ってません。とはいえ、月1回は会っていますね。外食するくらい。普段はFAXで連絡をとってます。内田さんは携帯を持ってるけど、あたしはほとんど持ち歩かないので、FAXは紙が届くから、年寄り同士のやり取りには確実なの。それでも日付を間違ったりするからね。あたしがいない日に勝手にFAXを出して、会いに来たら家の扉が閉まってる。そりゃそうよ、FAXが来たことも知らないで仕事に出てるんだから。

〈女グセが治らない内田への嫉妬心はないか、尋ねてみた。〉

 嫉妬とか言ってたら、首に縄つけて引っ張ってなきゃいけない。うふふ。そういう元気はないなぁ。でも、世間に対して不始末があった時に引き受け手がいないと迷惑かけるでしょ。だからあたしがいるのよ。人間はそんなに変わるものじゃありません。年齢は関係ないわね。それでもあたしが見放すことはないわね。出会った責任というのがあるんです。自分が内田さんと出会って、ましてや子供までいる。あたしが生きていて責任を取れるかぎりは取ろうと思ってます。

 でも、向こうが「もう勘弁してくれ」と言ってきたら、別れる覚悟はあるよね。あたしが名前を知ってる方だけでも何人かいるわけですよ、恋人が。「その方と結婚するのはどうですか」と言ってるんですよ。でも内田さんは「俺は結婚は1度しかしねぇ。当たり前だろ、人間として」。うふふ、面白いところで筋が通ってるんですよ。そういう人と出会ったんだから。

 未成熟で勝手なんだよね。大人になってる部分と子供のまんまの部分が体の中でグルグル回ってるから。でも人間としては面白いから。次に会ったら、そうね、「いやぁ、大変だったんだ」と言われてもプッと吹いちゃう。でも、それは悪いから後ろを向いてね。

 毎年、ハワイに行ってるんですよ。向こうで待ち合わせして。部屋は別々に取ってますけどね。やっぱり、あたしも危ないものを持っているから、たまに会うには面白いんですよ。もちろん経費は全部、あたしが持ちますけど。ふっふっふっ、面白く生きないとね。

〈暴力を振るわれたりはしないのだろうか。〉

 刑事さんが言うには、今回の女性には暴力じゃなくて、ステッキを持って振り回したりね。あたしの場合は肋骨を折られたこともありましたしね。包丁だって何本も欠けてるし。あたしもやるんだから、「コノヤローッ」って。やり合うから欠けるんです。だから、あっちばかり悪いということはないし、だから収まらないわけです。背中合わせでそっくりなんです。

〈歪な夫婦関係のなかに、人間の出会いや絆の本質が見えるのは、樹木ならではだろう。さて、この時の後日談は、翌12年2月に語ってくれた。〉

 示談金から弁護士費用まで本木さんが出してくれたの。あたしにはそういうお金を払う人の良さはありません。今は月々の生活費も本木さんが面倒を見てます。それでも内田さんは「こんなんじゃ足りねぇ」って。まぁ本木さんにとっては親ですから、怒るもなにもそういうことを承知で(娘と)結婚したわけで、今はあきらめていると思いますよ。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年5月2・9日号 掲載

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