“令和よろしく”でTWICE日本人メンバーが炎上、徴用工の子孫も抗議で韓国メディアは…

“令和よろしく”でTWICE日本人メンバーが炎上、徴用工の子孫も抗議で韓国メディアは…

炎上を招いたサナ

■改元をまたいで炎上したインスタのコメント


 改元の話題で一色になった2019年のゴールデンウィーク。一方お隣の韓国では同じ頃、日本の元号が反日感情に火をつける騒ぎが起きていた。きっかけは4月30日、ある女性アイドルが公式インスタグラムに投稿した次のコメントだ。(高月靖/ノンフィクション・ライター)

「平成生まれとして、平成が終わるのはどことなくさみしいけど、平成お疲れ様でした!!! 令和という新しいスタートに向けて、平成最後の今日はスッキリした1日にしましょう!」。コメントにはまた「#平成ありがとう #令和よろしく #fancy(※編集部註:4月22日発売の新曲)もよろしく」のハッシュタグ(リンク)も添えられていた。

 日本語で書かれたこのコメントの主は、K-POP市場で1、2を争う人気女性アイドルグループTWICEのサナ(22)。本名は湊崎紗夏、大阪府出身の日本人だ。

 だがこの発言に対して、韓国では多くのネットユーザが不快感を露わにした。「韓国の公式アカウントに日本語で政治的な投稿をするのは、韓国人ファンに対して失礼」「日本人メンバーが公式アカウントで天皇の話をするのは非常識」「自分の祖先のせいで年号がなくなった国があるのに」「アイドルをやるなら日本に帰ってやれ」――。日本でも翌5月1日頃にいくつかのメディアが取り上げていたが、韓国ではその後もしばらく話題がくすぶり続けている。


■平成へのメッセージと軍国主義


 TWICEのデビューは2015年。直後から韓国国内で高い人気を集め、トップアイドルに。日本でも2017年にCDデビューし、2019年3〜4月にはドームツアーを開催。さらに5月下旬から、世界9カ国を回るワールドツアーを控えている。

 メンバーは1995〜1999年生まれの9人。そのうち韓国人5人、台湾人1人、そして日本人がサナを含む3人の多国籍グループだ。所属事務所はK-POP界を代表する最大手の1つ、jypエンターテインメント。1996年生まれのサナは2012年に同社のグローバルオーディションを経て「練習生」となり、3年7ヶ月の下積みを経てTWICEメンバーに選ばれた。現地の音楽番組で司会を務めるなど、堪能な韓国語でも親しまれる人気者だ。

 だが人気が高いほど、何かあった時のバッシングも激しい。サナのコメントが注目を集め出すと、一部の現地メディアがこぞってセンセーショナルに取り上げた。見出しは「TWICEサナ、天皇退位に『さびしい』発言で物議」(釜山日報)、「天皇退位の日、TWICEのインスタグラムに日本語で投稿されたコメント」(wikitree)、「日本人サナ、天皇退位にさびしさ…『お疲れ様でした』」(mkスポーツ)といった調子だ。

 日本統治時代に皇民化政策が推進されたこともあり、戦後の朝鮮半島で天皇制は日本の軍国主義の象徴とも見なされる。サナのコメントは日本中のメディアにあふれていた平凡な言説だったが、韓国ではそれが軍国主義に結びついて炎上するロジックが存在するわけだ。


■「強制徴用被害者の孫」まで登場


 さらに投稿の翌日、徴用工問題というまたデリケートでタイムリーな話題も、この騒ぎに加わった。「日本の軍艦島に強制徴用された被害者の孫」という人物が、jypエンターテインメント代表のインスタグラムアカウントに抗議コメントを送りつけたのだ。この長文コメントは、次のような内容で埋め尽くされている。「軍艦島が捏造された歴史に基づいてユネスコ世界遺産に登録されるのを防ごうと、不自由な体を押して辛い過去が染み込んだ軍艦島まで再訪した祖父を思うと、サナさんが投稿したコメントを直視することさえも、申し訳ない気になるというのが私の心情です」「日本でいまも続いている軍国主義的歴史を、韓国でプロデュースされ活動する日本人メンバーが恥とも思わないことが問題なのです」。

 なお投稿者の祖父チェ・ジャンソプ氏(故人)は、過去20数年にわたって軍艦島での徴用工体験を語り続けてきたとされる人物。韓国映画「軍艦島」の製作にあたり、証言を提供したともいわれる。ただしこの映画は、史実考証の正確さが大きく疑問視されていることで有名だ。また軍艦島と強制徴用を巡る韓国側の証言も、日本側との食い違いが数多く指摘されている。(参考:デイリー新潮「トンデモ韓国人に軍艦島の元住民が激怒、日本への憎悪を煽る荒唐無稽な言動とは」)


■「過剰な民族主義情緒」への批判も


 しかし韓国でも、こうした過敏な反応にうんざりしている世論も少なくないようだ。まず、改元に対する素朴な感想を軍国主義に結びつけるのは強引だとの意見が、あちこちのメディアで見受けられた。

 例えばスポーツ東亜は、光云大学教授の次のようなコメントを紹介している。「年号の使用は日本人にとってごく日常的なことであり、時代を大きく区分するのに使っている」「天皇制への崇拝や過去の歴史の美化と結びつけるのは不自然だ」。

 またハンギョレは「『平成終わってさびしい』TWICEサナのインスタ、それほど問題だったのか」と題した5月2日付の記事で、上述の「強制徴用被害者の孫」にも触れながら次のように記した。「こうした非難が、過剰な民族主義情緒に基づいた飛躍または外国人女性への嫌悪として理解されるという批判も出ている」「日本国民として年号が変わったことへの所感を示すことに何の問題もなく、批判の対象にはならないということだ」。

 さらにオーマイニュースが5月3日付で掲載した記事には、次のような下りがある。「ネットコミュニティやSNSなどオンラインでは、『個人の正しくない歴史関連発言』を見つけ出して『親日疑惑』を主張することが愛国的行為だと思っている人がたくさんいる」「日本の『天皇制』とそれに基づく年号の使用に批判する点はある。だが愛国に囚われて客観的な視線を排除したままできごとを見るなら、私たちの社会や国にとって何の助けにもならない」。

 韓国でスポットライトを浴びる日本人アイドルを見舞った炎上騒動。華やかなステージにも歴史問題の陥穽が潜んでいることを、改めて浮き彫りにする結果となった。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月13日 掲載

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