「今日俺」「3年A組」「俺スカ」……日テレ“新・学園ドラマ”に共通する“巧みな手法”

 日本テレビは「日曜ドラマ」(日曜・22時30分〜)枠で、去年秋クールの賀来賢人・伊藤健太郎主演「今日から俺は!!」、今年1月クールの菅田将暉主演「3年A組−今から皆さんは、人質です−」、そして今春クール「土曜ドラマ」(土曜・22時〜)枠で古田新太主演「俺のスカート、どこ行った?」と、3クール連続で“学園ドラマ”を編成してきた。

 実はこれら3本は、いずれも満足度で好成績を収めている。しかも前2本は、尻上がりに視聴率も上昇し、特に若年層の支持が集まり、広告の営業でも成功していた。

 今世紀に入り、学園ドラマは数字が獲れないため、減少傾向にあった。ところがここに来て、日テレは流れを変えようとしているようだ。何が起こっているのかを考えてみた。

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■3クール連続満足度好調の日テレ“学園ドラマ”


「テレビ視聴しつ」(eight社)の満足度調査によると、去年秋クールに放送された『今日俺』の満足度は4.26(5段階評価、1クール平均)。TBS「大恋愛」「下町ロケット」やテレビ朝日「リーガルV」を抑えてトップだった。

 今年1月期の「3年A組」も4.22で首位。同期2位の常盤貴子主演「グッドワイフ」(TBS)3.98を大きく上回る成績だった。

 また4月スタートの「俺スカ」も、各ドラマの序盤の評価となる4月調査では3.89。トップだった天海祐希主演「緊急取調室」(テレビ朝日)の3.96に次ぐ、春ドラマ2位を記録している。

 しかも日テレ“学園ドラマ”は、1話完結型でないこともあってか、過去2作は序盤より中終盤の満足度が上がっている。その意味では、「俺スカ」も今後数字を上げ、全ドラマの中で首位となる可能性も十分ある。

 3期連続で、“学園ドラマ”が好成績となる流れなのである。

■高満足度の要因は若年層


 高い満足度の要因は、若年層の支持にある。「今日俺」では、10代男性が4.41、10代女性で4.69と驚異的な記録となった。「3年A組」も10代男性4.24、10代女性4.44と、どの視聴層よりも高く、同一クール全ドラマの中でトップだった。「俺スカ」も10代男性4.38、10代女性4.14で、やはり断トツ。ここまで10代に支持を集め続けるのは、近年のドラマでは珍しい。

 各ドラマに対する10代視聴者の感想をみると、ヒットの理由が垣間見られる。

〇「今日から俺は!!」
「ストーリー性がとても面白い」男性15歳・満足度5
「喧嘩だけど見てて飽きないし、嫌な気持ちにならない」女性18歳・満足度5
「これを見ると月曜日も頑張ろうと思えました!」女性18歳・満足度5
「ヤンキー感や友情を重んじるようなシーンが好感を持てる」男性18歳・満足度5
「バカっぽいけど感動した」男性16歳・満足度5
「クラスで話題になっていた」女性13歳・満足度5

“バカバカしいが笑える”“感動できる話がある”“月曜からのやる気をもらった”“学校で話題”など、久しぶりにテレビが翌日の話題になったようだ。敷居を低くしつつも、大切なメッセージが込めれるなど、視聴者に届く仕掛けが上手く機能した。

〇「3年A組」
「出演者の熱量がすごい」女性19歳・満足度5
「回を重ねるごとに暴かれる謎が面白くてあっという間に時間が過ぎます」女性19歳・満足度4
「見てて飽きない。ハラハラドキドキ、そして感動」女性18歳・満足度5
「柊先生の言葉が毎回心に沁みる」女性18歳・満足度5
「SNSについて考えさせられた良いドラマだった」女性14歳・満足度5
「メッセージ性が強く、勉強になる!」男性15歳・満足度5
「見ないと学校での話題にはついていけない」男性18歳・満足度5

 キャスティングの力で見始め、次第にストーリーやメッセージに引き込まれる若者が多かったようだ。『今日俺』と同様、学校で話題になっていた。日テレ“学園ドラマ”が、テレビをかつての位置づけに押し戻しているようだ。

〇「俺のスカート、どこ行った?」
「真面目なことも言うけれど、面白い」女性16歳・満足度4
「現代のLGBTの問題を取り上げててとてもいいドラマ」男性13歳・満足度5
「生徒一人一人変わってくるのが楽しみ」男性16歳・満足度4
「教師らしく無い感じで今の教育の世界では無いような世界観が好き」男性19歳・満足度5
「ドラマから伝わるものがあった」男性17歳・満足度4
「非常に感動した」男性15歳・満足度5

 自殺した生徒がなぜ死に至ったのかに向き合う中で、生徒たちに負の側面を直視させ、そこから明日への力を引き出させようとした「3年A組」。人の死やネット社会の功罪などの大問題に対して、「俺スカ」はより身近で小さいけど大切な課題を取り上げた。「人として知っておかなければならないことを教えにきた」と、主人公も言っている。勇気を出して一歩前に出る、自分の本当の想いに向き合う、相手の気持ちを思いやるなど、大上段に構えてはいないが、身近な切り口が若い世代に刺さったようだ。


■進化する“学園ドラマ”


 3つの“学園ドラマ”の共通点を、「テレビ視聴しつ」の大石庸平室長はこう分析する。

「“考えさせられる”や“良いドラマ”といった、ドラマから何らかのメッセージを受け取ったという感想が多い。最近のドラマは刑事ドラマなど事件解決ものが多く、視聴者に訴えかるメッセージ性の強いドラマは少ない。だからこそ若い視聴者にとっては新鮮で、より心に響く作品になったのだろう」

 ただし同じ“学園ドラマ”と言っても、視聴者の反応に異なる点もある。「今日俺」は10代の他、M3の満足度が高かった。「ある意味、郷愁も誘い、ついつい視てしまう」(男性54歳・満足度4)、「爽快オバカで楽しめた」(男性53歳・満足度5)、「とてもいい暇つぶし」(男性60歳・満足度5)など、30年ほど前のヤンキー文化を懐かしみつつ、当時の心情を回顧する視聴者が少なくなかったようだ。

「3年A組」はF2(女性35〜49歳)を中心に、女性陣に受けが良かった。「家族で見てます」(女性41歳・満足度4)、「子どもにもしっかり見せたい大切な番組」(女性40歳・満足度5)、「セリフひとつひとつが心に残ります」(女性59歳・満足度5)など、役者・演技・内容への評価の他、我が子を想定して見ている母親が少なくなかったようだ。

 以上2ドラマと「俺スカ」が大きく異なる点は、男性10代とM1(男性20〜34歳)が最も高く評価している点。「この学園ドラマは気持ちを変えてくれる」(男性28歳・満足度5)、「新しい感じ」(男性19歳・満足度4)、「奇想天外で楽しかった」(男性26歳・満足度4)など、ドラマの設定や切り口などの新しさを評価する声が多い。

 日テレで“学園ドラマ”が3クール続いたが、新しい領域に挑戦し続けている点を見逃していないようだ。時代の変化に敏感な若者らしい声と言えよう。

 回顧趣味の入った「今日俺」、生徒の誘拐やSNSの問題などセンセーショナルな問題を意識していた「3年A組」、ゲイで女装家の教師を主役に置いた「俺スカ」。

 入り口を入りやすく工夫しつつも、大切なテーマをしっかり忍び込ませる手法は、3ドラマに共通している。「一歩間違えると説教くさくなってしまいがちなメッセージ性の強いセリフも受け入れられやすくする設定の巧さ」(「テレビ視聴しつ」大石室長)がヒットの要因だろう。

 同時に、刑事モノ・医療モノ・弁護士モノに各局が走る昨今、減っていた“学園ドラマ”でイノベーションを起こし、定着させようという日テレの姿勢は高く評価したい。

鈴木祐司(次世代メディア研究所代表、メディア・アナリスト)
1982年にNHK入局。主にドキュメンタリー番組の制作を担当。2003年より解説委員(専門分野はIT・デジタル)。編成局に移ると、大河などドラマのダイジェスト「5分でわかる〜」を業界に先駆けて実施したほか、各種番組のミニ動画をネット配信し視聴率UPに取り組んだ。2014年独立、次世代メディア研究所代表・メディアアナリストとして活動。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月21日 掲載

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