佐藤浩市「空母いぶき」炎上騒動を小林よしのりと高須克弥が大いに語る

■百田尚樹に“三流”と指弾された「佐藤浩市」名演の見所(1/2)


 まるで映画さながらの全面戦争である。映画「空母いぶき」を巡って、俳優・佐藤浩市(58)の発言が大炎上。ホリエモン、小林よしのり、百田尚樹各氏らを巻き込み、「三流役者」と指弾される騒ぎになったのだ。以下は、売れっ子俳優“名演”の正しい鑑賞ガイド。

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 今回の騒動について、

「佐藤さんらしいな、と思いましたね」

 と感想を述べるのは、さる映画ライターである。

「彼はよくインタビューで政治状況を絡めた発言をするんです。以前も出演作の宣伝で野党が当時、『共謀罪』と批判していた法律に触れて“問題だ”と語り、映画のテーマとも通じると述べていました。やっぱりお父さんの“血”なんですかね」

 佐藤の父は、言わずとしれた故・三國連太郎氏。徴兵を忌避した過去を持ち、また、同和地区の出身であることをカミングアウトしている。生前はメディアで「護憲」を訴え、「赤旗」に登場したことも。佐藤もその「遺志」を受け継いだのか。もっとも、三國氏がその“思想”を芝居に持ち込んだという話も聞かない。凶悪殺人者から権力者、革命家、市井の父親まで、どんな役でも融通無碍に演じ、“怪優”と評された。

 既に報じられているが、騒動のキッカケは、漫画誌「ビッグコミック」のインタビューである。「空母いぶき」の原作は、かわぐちかいじ氏による同名のコミック。突如、尖閣諸島に中国が軍事侵攻。同盟国・米国も静観の構えを取る中、空母「いぶき」を擁する自衛隊が立ち向かうというストーリーで現在も連載中だ。

 24日公開のその映画版で首相の役を演じるのが佐藤。インタビューで、彼は、「総理大臣役は初めてですね」との問いに、

〈最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残っているんですね。でも、監督やプロデューサーと「僕がやるんだったらこの垂水総理をどういうふうにアレンジできるか」という話し合いをしながら引き受けました〉

「総理は漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いていますね」との質問にも、

〈彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです〉

 と述べているのである。

 これが物議を醸した。「反体制」の立場だと明確に述べ、その上で、総理役を下痢に悩む設定に変えさせた――。

「これが安倍総理とその病気を揶揄したものだ、と指摘されたのです」

 とは、先の映画ライター。

 第1次政権時代、難病の「潰瘍性大腸炎」もあって安倍総理が辞任したのは広く知られた話である。

「原作の垂水総理は、判断力、決断力に優れたキャラクター。自衛隊に攻撃を命じた後、そのプレッシャーに耐えかねてトイレで嘔吐するシーンがあるのですが、佐藤さんはこれを映画では常にストレスに弱いキャラにして、しかも嘔吐を下痢に変えたと読めるのです」(同)

 と、すぐに“批判”が相次いだ。


■小林よしのりが改めて語る


〈三流役者が、えらそうに? 何がぼくらの世代では、だ。人殺しの役も、変態の役も、見事に演じるのが役者だろうが!〉とツイートしたのは、作家の百田尚樹氏。〈思想的にかぶれた役者のたわごとを聞いて、下痢する首相に脚本を変更するような監督の映画なんか観る気がしない〉。

 堀江貴文氏もここに参戦し、〈これはひどいな〉とボソリ。誰が?という問いに〈佐藤浩市がひどいに決まってんだろ〉。

 すると、逆にこれらへの「反論」も相次ぐ。

 タレントのラサール石井氏は、〈佐藤浩市氏のどこが三流なのか。役者の何を知ってるのか〉。

 漫画家の小林よしのり氏も〈佐藤浩市は男である〉〈権力に対する批判精神を持っているのは立派なことだ〉と、まるでまあ、異種格闘技戦となったのは周知の通りだ。

「元々、芸能は河原乞食から始まったものでしょ」

 と改めて述べるのは、その小林氏である。

「時の権力に虐げられ、搾取されたものたちが強者たちを茶化し、からかうことにこそ、芸能の神髄がある。それを忘れず、権力に抗うのは意味のあることです」

 病気の揶揄への批判があることについても、

「権力と戦うものにとって、風刺は大事な武器なんです。“王様は裸だ!”とバカにすることが出来ないと、表現者は丸腰になってしまいますよ。安倍はこの国で最も偉い立場にいる人です。その病気をバカにしてはいけんというのでは、表現者は何も出来なくなる」

 ただ、と、こう言うのだ。

「もし佐藤浩市が単純に権力に反対すれば良いと思っているのならまだ青いよね。体制の核に“公”があれば応援するし、なければ叩く。それが大切なんですよ」


■高須院長は「クサい役者」


 対して、

「いい役者というのは自分のイデオロギーと関係のない役が出来る人でしょう」

 とは、怒りの絵文字をツイートした、高須クリニックの高須克弥院長。

「悪役を完璧に出来る善人こそが真の役者。ホントはやりたくなかったと事前に言うなんて言い訳じみている。クサい役者がすることですよ。三國連太郎さんは寒気のするほどすごい演技をされる方でしたが、どう想像しても、三國さんは生前、おんなじようなことは言ってなかったでしょ」

 そして、

「『空母いぶき』の原作は大好きなんですが……。佐藤さんとも1回食事をしたことがあるんですけどね。おだやかな人で、政治の話なんて出ませんでしたよ」

 と首を捻るのである。

 ネット社会の常だが、これらの主張は拡散し、そこにあれやこれやの解釈が加わって罵声まじりの激論に拡大した。しかし、喧々囂々に見えて、両者の主張を丹念に見ると意外と論点は整理出来る。権力批判は結構。しかし、その方法として、役を利用することの評価は如何に、という点だ。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年5月30日号 掲載

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