サラリーマン川柳のレベルが低下している? 松本人志の発言に注目が集まったが……

■「面白いか?」の発言も


 ダウンタウンの松本人志(55)が、「サラリーマン川柳」に批判的だということを、ご存知だろうか?

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「サラ川」と略されることもあるが、今年は5月23日にベスト1が決定した。サンケイスポーツが24日に掲載した「サラリーマン川柳、60代女性の作品が3446票で1位」(註:数字表記などをデイリー新潮の表記に変更、以下同)をご覧いただこう。

《「五時過ぎたカモンベイビーUSA(うさ)ばらし」――。第一生命保険が23日、「第32回サラリーマン川柳コンクール」の人気投票の結果を発表し、就業時間終了後の解放感を流行歌の歌詞にちなんで詠んだ60代女性の作品が3446票で1位に輝いた。

 ダンスユニット、DA PUMPのヒット曲「U.S.A.」をもじった句が幅広い年代に支持された。2位は「いい数字出るまで測る血圧計」、3位が「メルカリで妻が売るのは俺の物」で続いた。

 応募があった4万3691句から優秀作品100句を1月に選出した後、インターネットで人気投票を実施。集まった計10万7444票を集計し、1〜10位を決めた》

 5月23日は木曜。そのため26日の日曜に放送される「ワイドナショー」(フジテレビ系列・10:00〜11:15)に注目が集まったという。民放キー局で番組制作を担当するスタッフが明かす。

「応募は4万句以上、人気投票も10万票を越すのですから、国民的イベントといっても過言ではないでしょう。ところが松本さんは『そんなに面白いか?』と発言したこともあるほど、サラリーマン川柳における“笑いのレベル”に異を唱えています。実際、松本さんの批判は16年と18年の『ワイドナショー』で放送されています」

 それでは松本が批判した句を見てみたいが、どうせなら全ての回を振り返ってみよう。ただし、第1回から第3回までは社内報の企画だったり、著作権の関係などがあったりして、現在は公開されていない。

 第4回から32回までの1位と2位の句を票にまとめてみた。更に、その年の東京証券取引所における大納会の株価(終値)と当時の首相名を加えた。

 最初の表は1990年から96年。89年に平成となり、91年から景気が後退。バブルは崩壊し、92年に雑誌「就職ジャーナル」(リクルート)が“就職氷河期”という言葉を造語した時期にあたる。

 91年にはソ連が崩壊。93年には細川連立政権が誕生して自民党が下野した。国の内外も問わず、パラダイムシフトが始まった時期とも言えるかもしれない。それでは、14句をご覧いただこう。

■時代を反映している句も


 バブルが崩壊したと言っても、94年ぐらいまでは、それほど悲壮な感じはしない。90年の1位はディスコにおける「お立ち台」のブームが背景にあるが、例えばジュリアナ東京は91年にオープンし、94年に幕を閉じた。

 93年の2位は「OL」という言葉が現役だったことを示している。時代は平成になっていたが、まだまだ昭和の雰囲気も残っていたのだ。

 96年の2位で、ようやく「お金がない」という意味を含んだ句が登場する。ちなみにこの「ジミ婚」だが、95年に永瀬正敏(52)と小泉今日子(53)が結婚した際、式を挙げなかったことから生まれた流行語だという。

 2つ目の表は97年から2003年にかけてのものだ。日本経済は92年から02年まで「失われた20年」に苦しんだ。97年に山一証券が自主廃業となったが、その象徴の1つと言えるだろう。

 また95年、ウィンドウズ95の発売により、日本のオフィスは「パソコン元年」を迎えた。この時期にはウィンドウズ98が発売。職場で個人用のPCを操作することが日常と化していく。それでは表をご覧いただこう。

 日常生活のIT化が窺われるのは00年の1位「ドットコム」、01年の1位「デジカメ」というところだろうか。厳しい経済情勢は98年の1位「コストダウン」、01年の2位「窓際」、03年の2位「励まされ」に現れている。

 3つ目の表は04年から10年。この期間、オフィスの劇的な変化を挙げるなら、「非正規雇用」の同僚が増加したことだろう。雇用者に占める非正規雇用者の割合は90年に初めて20%を超え、13年に過去最高の38・2%に達した。では川柳をご覧いただこう。

 08年の2位に「ハローワーク」、09年の2位に「リストラ」、10年の2位に「パート」という単語が出てくるが、この辺りが時代の象徴だろう。また06年と10年の1位は老いをテーマにしているが、日本が少子高齢化社会に突入したことが分かる。

 次の表で、いよいよ最後だ。民主党政権が終焉を迎え、アベノミクスが流行語となった11年から18年の句が収録されている。ご覧いただこう。

■松本人志自ら“添削”したことも


 さて、松本人志が最初に批判したのは15年の1位「退職金もらった瞬間妻ドローン」だ。マイナビニュースが16年5月29日に報じた「松本人志、サラリーマン川柳の結果に不満爆発!『決めたやつのセンス疑う』」の該当部分を引用させていただく。

《松本は首をひねりながら、「いつも引っ掛かるところがあって。1位が……なんか……そんなに面白いか?」と言葉を選びながら疑問を投げかけた。今年1位になった作品については、「何にもかかってないじゃないですか」と指摘し、「ドローンは何にも関係ないから、全然1位じゃない。これを決めたやつのセンスを疑う!」「プロは全く納得していない!」と語気を強めた。

 ゲストのナイツ・塙宣之(38)も「全く同じことを思っていました」と流れに乗り、「『喧嘩して操縦できずに妻ドローン』とか」と“ドローン”の正しい使い方を解説。松本はその例に納得しながら、「せめてドローンの機能がちょっと加わっているとか」「(1位の“ドローン”は)関係ないから!」と叫んで共演者を笑わせた》

 ちなみに伊集院光(51)もラジオ番組「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)で、全く同じロジックで句の欠陥を指摘している。その一方で、松本は2位の「じいちゃんが建てても孫はばあちゃんち」、4位の「娘来て『誰もいないの?』オレいるよ」は「うまい」と評価した。

 2回目の批判は18年。1位の「スポーツジム車で行ってチャリをこぐ」を「そもそも字余り」とし、番組内で「ジム通い車で行ってチャリをこぐ」に“添削”した。また「俺の中で1位」としたのは、5位の「電子化について行けずに紙対応」だった。

「ということで、5月26日の『ワイドナショー』を少なからぬ関係者が注視していたわけですが、結果から申しますと、今年はサラ川についての言及はありませんでした。私の周囲では『松本さんが、論評に値しないほど面白くなかった』と判断したのではと盛り上がりました。TBSやテレ朝の情報番組でもサラ川が取り上げられていましたが、盛り上がっていないような印象を受けました。実際、私も年々、笑いのレベルが下がっていると思います」(前出・民放キー局関係者)

 この記事でも原点から振り返ったが、同じように「レベルの低下」を実感されただろうか、それとも「いや、毎年面白く読んでいる」と思われるだろうか?

 いずれにしても、審査員が評価を下せば「ヤラセ」や「忖度」が取り沙汰され、一般投票で“民主的”に採点すれば「判断基準が甘い」と批判される。作品の優劣をつけるのが難しい時代になったのは間違いないだろう。

週刊新潮WEB取材班

2019年6月2日 掲載

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