東野幸治が描く“ガンバレルーヤよしこ伝説”「頭の中に『大きめのキンタマ』ができた女」

 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「どこかふざけてる女、ガンバレルーヤよしこ(3)」。

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 昨年秋に「下垂体腺腫」になった、ガンバレルーヤよしこの話の続きです。

 この病気は脳の一部である「下垂体」という部分に腫瘍が生じるものだそうです。下垂体は小さいながらも様々なホルモンを分泌する機能を担っているので、下垂体腺腫が発症するとホルモン分泌に異常が生じ、様々な症状が引き起こされるとか。結果、よしこの鼻は以前より膨らみ、顔にブツブツができて顎が前に飛び出してきました。

 それらの症状が現れた当初、それが「下垂体腺腫」によるものだとよしこも周りも気が付きませんでした。当時ガンバレルーヤは、ちょうど東京に拠点を移し、大ブレイク目指して頑張っている段階でしたので、「笑いの神様がこのタイミングでよしこをより面白い顔にして、東京進出を後押ししてくれたんだなぁ」と私は勝手に思ってました。

 よしこはより面白くなった自らの顔を、自虐的にイジりまくりました。また、色々な芸人さんからイジられたり、小雪さんや多部未華子さんの似てない顔真似をしたりしては以前よりウケていました。まさに、破竹の勢いの活躍です。

 芸人仲間は「ドーピングブス」「ズルいぞ、顔を面白くして笑い取って!」と、半分マジでひがんでました。このご時世、自らの容姿を徹底的に笑いにするスタイルには批判の声もあると思いますが、本人は一向に気にしないオールドスタイルの芸人です。

 しばらくして仕事が少し落ち着くと、下垂体腺腫だと分かりました。当時よしこに病気のことを聞くと、「頭の中に良性腫瘍……いえ、大きめのキンタマができて〜」と必ず良性腫瘍のことを大きめのキンタマに例えていました。もちろん、手術で大きめのキンタ……いえ、良性腫瘍は除去でき、無事に仕事復帰しました。

 すると、肌のブツブツはなくなり鼻も小さく戻って、少しブスじゃなくなりました。ただ病気の影響で前に突き出した顎だけは、骨の変形なので元に戻らなかったそうです。

「元に戻すには整形手術で削らないと治りません」とここぞとばかりに、自らの不幸話を得意げに披露し笑いを取るよしこ。私が真剣に「後遺症はないの?」と聞くと、「腫瘍があったところに栓をしているので、鼻をかむとそれが抜けてしまうため鼻がかめなくなり、鼻の中に鼻くそが溜まるのが困ります」と真面目な顔で答えてくれました。どこまでもふざけていますねぇ。

 そんなよしこですが、唯一ふざけていない話があります。

 番組の収録でウケた時は、帰りにエレベーターの前まで大勢のスタッフさんが見送りに来て「お疲れ様でした、またお願いします!」と口々に労ってくれるのですが、うまくいかなかった時は誰も来ない。静かにエレベーターに乗りゆっくりと降りていくそうです。まるで地の底に沈んでいくように……。

 だから毎回エレベーター前まで歩いていくのが怖くてたまらないといいます。

「今日は良かったの、悪かったの? また呼んでもらえるの、もう二度と呼んでもらえないの……?」

 途中、振り返りたい衝動に駆られるのをグッと堪えるそうで、私はそれを聞いて安心しました。よしこも人の子でした。

 私も含めて芸人やタレントはみんな不安です。また呼ばれるか、もう二度と呼ばれないのか――この戦いは永遠に続くのです。

 まぁ呼ばれなくなったら、またスナックでアルバイトをするんだ、よしこ! 面白い話がきっといっぱいできるよ。

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。

「週刊新潮」2019年6月13日号 掲載

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