ノストラダムスは令和の危機も予言した――『大予言』著者・五島勉氏のいま

 昭和のあのころから眺めると、令和の到来は奇跡のようだ。1999年7月に人類は滅ぶはずだったのだから。ご存じ『ノストラダムスの大予言』だが、著者の五島勉氏(89)は、予言が「外れた」どころか、今日の危機まで予見していた、とのたまうのだ。

 アラフィフ以上で、〈1999の年、7の月、空から恐怖の大王が降ってくる〉というくだりに聞き覚えがない人は、ほとんどいないのではないか。

 そう書かれた『ノストラダムスの大予言』は、1973年(昭和48年)、祥伝社から刊行され、250万部、シリーズ合わせて600万部もの大ベストセラーになったのである。いや、売れただけに止まらず、

「小学校では、21世紀は到来しないというのが常識で、僕も30歳そこそこで死ぬと信じていました」

 と、50代の会社員氏が回想するほど、深刻な社会現象になったのである。そして、影響は99年7月が過ぎるまで尾を引き、シェルター会社社長の西本誠一郎さん(82)はこう回想する。

「ノストラダムスの予言が話題になったころは、シェルターの問い合わせの電話が多かったですよ。うち2、3件は実際に契約していただけました。輸入が間に合わなかったお客さんもいて、その方は、終末が訪れるとされていた日、わが家のシェルターに親子で泊まりに来ましたよ」

 ま、人類が滅亡しなくてよかったけれど、世を騒がせた五島勉氏は、いまどんな心持ちでいるのか。

「1503年に生まれたノストラダムスは、予言詩を何冊にもまとめ、イエスの予言を引き継いだだけでなく、独自の予言も盛り込んでいます。人類の月面着陸や、現在のカードローンの登場なども予言しているんです。私があの本を発表した73年に関して言えば、米ソが一触即発で、核兵器を用いた第3次世界大戦が始まりかねない状況で、ベルリンの壁の両側にも、何百もの核兵器が準備されていました。“1999年に世界が終る”という予言は、そうした世界情勢を言い当てていたんですね」


■「誰かが伝えなきゃ」


 んっ? 予言は外れていないと言うのか? さらに、こうも言う。

「私はあの本に予言だけを書いたわけではなく、第1巻に『残された望みとは?』という章があります。ノストラダムスの大予言はキリスト教の体系下で書かれたもので、たとえば東洋的な思想を持てば世の中は変えられる。私はそういうことも書いていたんです」

 意外にも、いまなお自信満々の五島氏だったが、懺悔の言葉も用意していた。

「親や先生から、“子供が読んで夜も寝付けなくなった”とか“自分の命は99年までだと悩み始めた”とかの意見が届き、ショックを与えてしまったことに関しては、申しわけないと思うようになりました。ただ、子供たちは最終章の『残された望みとは?』までは読んでいなかったし、後で聞くと、大人ですらあまり読んでいませんでした」

 でも、「滅亡」なんて言われた時点で、読者は冷静でいられませんって。それでも五島氏は、自身の善意を疑わないらしい。

「キリスト教には世界の終末という考え方がある。そこに核兵器によって危機的状況が生まれていた。誰かが伝えなきゃ、と思って本を書いたんです。いまも人間は富を使って人殺しの道具を作っています。核兵器も、テロリストの手に渡ったら、と考えると恐ろしいですよ。いまの世界情勢も、ノストラダムスが予見していたと言えるんです」

 あの本のおかげで世界は救われている、と言わんばかりの勢いである。

「週刊新潮」2019年6月20日号 掲載

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