春ドラマ採点 最も残念だったのは「二階堂ふみ」 デーブの提言は予言になるか

 さしたる話題にもならず、大ヒットもなく終わった4月期の連ドラ。中でもヒドかったのはどれか、ワースト3をコラムニストの林操氏に挙げてもらった。はてさて、その理由は――。

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 この4〜6月期はニッポンの連ドラにとって大きな節目でした。

 いや、4月で平成が終わって5月に令和が始まったとか、6月にジャニー喜多川さんがクモ膜下出血で入院したとか、そういう話じゃありません。10連休前の4月23日、この日は、デーブ・スペクターがこんなツイートしてから、ちょうど2年だったのよ──。

〈つかぬ事を言いますが、全てのテレビ局が全てのドラマを止めた方がいいと思います。進化してないし海外ドラマから何も学習してないし、相変わらず視聴者を無視する芸能プロダクション先行で不適切なキャスティング。2年間の休憩してリセットする事を勝手ながら勧める。オチがなくてすみません〉(原文ママ)

 当時はそれなりに騒がれたものの、それからの2年間、ニッポンのすべてのテレビ局は、すべてのドラマを止めるようなことはせず、休憩もリセットも当然せず、それでニッポンの連ドラは、さてどうなったか。2年という時間を区切っての問題提起、その結果が現れてくるのが今年の4月クールだったわけです。

 で、蓋を開けてみれば、開いた蓋は地獄の釜の蓋で、しかも底が抜けてましたとさ、というオチ。今さら世帯視聴率の話で恐縮ですが、民放プライム帯(夜7〜11時)の連ドラ全14本のうち、全話平均が2桁に乗ったのは「緊急取調室 3rd SEASON」「ラジエーションハウス」「集団左遷!!」の3本だけで、そのうちトップの「キントリ」でも15%に届かなかった(13・1%)という体たらくです(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 一方、全話平均の数字で下から数えた3本もキツい。「スパイラル〜町工場の奇跡〜」「パーフェクトワールド」「ストロベリーナイト・サーガ」のうち、テレ東の経済モノというハンディ付きの「スパイラル」はともかく、フジ系の「パーフェクト〜」と「ストロベリー〜」は、テレ朝・金曜深夜の「家政婦のミタゾノ3」と同じレベルの6%台でした。


■ワースト4作、一気に発表


 そういう悲惨なクールが終わり、デイリー新潮より「4〜6月期の連ドラ、ベスト3とワースト3を挙げよ」との依頼を受けて今期の連ドラを振り返ってみたところ、あらためて思い出されたのが2年前のデーブの指摘。つまるところニッポンのドラマの駄目さは、制作する側の能力やら労力やらの多くが既存の枠組みの保守に割かれていて、彼らの視線が視聴する側に向いていないことに尽きます。

 ギョーカイ内部の誰かさんの顔を立てることが優先されて、画面の向こう側にいる誰かさんの顔をほころばすことは後回し。そういう自称「ドラマ」が量産されちゃったのが、この4月期だったように思われ、その代表格が、今回ワースト3に選んだ4本でしょう(同率2位が2本あり)。

●3位:「ラジエーションハウス」(フジ系・月曜9時)
●同率2位:「集団左遷!!」(TBS系・日曜9時)
●同率2位:「パーフェクトワールド」(フジ系・火曜9時)
●1位:「ストロベリーナイト・サーガ」(フジ系・木曜10時)

 3位→2位→1位と順々にカウントダウンしていって、その合間に理由だ何だを語るのではなく、いきなりワースト3の全部を出したのは、4本いずれも駄目な理由がほぼ同じで、いちいち分けて語る必要がないから。

 まず、どの作品(未満の何か)にも共通してるのは、「芸能プロダクション先行で不適切」だというデーブの見立てどおりのキャスティング。「ラジハ」の窪田正孝は、来年の朝ドラでも主役を張る注目株ながら、共演が同じ事務所所属で演技の不自由さに定評のある本田翼となったとたん、番組全体にスターダストありきの芸能プロ臭が立ち込める。

 ワースト2位の「パーフェクト〜」も、ナベプロ系トップコート所属の松坂桃李はそれなりに達者なのに、相手役の山本美月の芝居は「モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―」のころから特段の進歩の感じられない不器用さをキープ。所属事務所のイノセントが大手の研音と業務提携してるらしいとわかると、初回を見ただけでもう、おなかいっぱいでした。

 もう1本同率ワースト2位の「左遷!!」は一見、ブ厚い役者陣を揃えたTBS「日曜劇場」らしい作品に思えるけれど、主演は福山雅治。同じ枠の次の作品(「ノーサイド・ゲーム」)の看板が同じアミューズと業務提携してる大泉洋となれば、「芸能プロダクション先行」のキャスティングに見えてくる。

 そして最低度において見事トップの「サーガ」も、二階堂ふみの所属先は中堅どころながら、妙に出番の少ないKAT-TUN亀梨和也がW主演扱いなのはジャニーズくんだからか?……などと勘ぐり始めると、いわゆる続編以外の何物でもない安っぽいドラマが、ますます楽しめなかったなぁ。


■「ストロベリーナイト」を台無しにしたフジ


 大手プロ主導のドラマにも傑作良作があることは、何度も言ってきているので繰り返しません。本田なり松坂なり山本なり福山なり亀梨なり、ココんとこドラマや映画やプライベートで失敗続きのタレントを、「どげんかせんといかん」という事務所の事情もわからぬでもなし。ただ今期は、そういう芸能プロの言い分を聞いてやる制作側の知恵のなさすぎっぷりが際立ったなぁ。

 各作品のジャンルを眺めてみても、「サーガ」が刑事モノ、「左遷!!」が銀行モノ、「ラジハ」が医療モノと目新しさは激薄だし、「パーフェクト〜」も事故で車椅子生活を余儀なくされてるイケメンを軸にしたラヴ・ストーリィで既視感まみれ。芝居が下手で数字も持ってないタレントをメインの食材に持ってくるなら、せめて調理法や器くらいは凝ろうよ。

 それでも、ワースト4作に敢えて順位=評価の差を付けたのは、たとえば「ラジハ」の場合、医療フィクションでは珍しい放射線科を舞台に選んだこと、主演の窪田が悪くなかったこと、演出や画づくりが「腐っても月9」という水準にあったことは買えたたから。窪田と本田の事務所臭い抱き合わせ商法さえなければ、むしろベストの方の候補になったかもしれない。

 一方、「左遷!!」は脚本が酷くて、同じ経済系ドラマという枠内だけで比較しても、4月期の全話平均で視聴率が最低だった「スパイラル」の方が、設定でも筋立てでも、はるかに納得感が高かったというレベル。数字が伸びなくて途中から立て直しのために話の流れが露骨に変わったときなんて、同情するつもりのない福山が可哀想に思えて見てられなかったです。

 さて、残る2本、つまり同率2位の「パーフェクト〜」とワースト1位の「サーガ」については、もう詳しくは語りません。「パーフェクト〜」の関西テレビ制作枠特有のユルさには今回も呆れたけれど、車椅子の上で鬱屈してる桃李くんの芝居は悪くなかったので、ワースト同率トップには落としませんでした。と、日記には書いておこう。

 で、単独でのビリに輝いた「サーガ」について言いたいことがあるとすれば、一応ヒットしたコンテンツである「ストロベリーナイト」という自社の資産の価値を、安易安直安手な焼き直しで見事に毀損したのに、先月末に開催の株主総会で特に吊し上げられることもなかったフジテレビの経営陣は幸運すぎるということくらい。

「全てのテレビ局が全てのドラマを止めた方がいい」。「2年間の休憩してリセットする事を勝手ながら勧める」。デーブの提言は、これまでの2年、ギョーカイに顧みられることはなかったけれど、これからの2年では、提言じゃなく予言になるかもしれません。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999〜2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月9日 掲載

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