吉本の闇営業、そんなに悪いのか? さんま、岡村隆史らが次々語り出した胸のうち

■そんなに悪いか「吉本の闇営業」(1/2)


「雨上がり決死隊」の宮迫博之に「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮、「スリムクラブ」といった芸人が、反社会的勢力の会合に出て処分された。この「闇営業」問題に、そしてその背景に、明石家さんまをはじめとする有名芸人が次々と胸の裡を語り出したのである。

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〈「野球賭博はなんであきまへんのや」

 若い方の刑事が呆れ顔で答えた。

「暴力団の資金源になっとるからに決まってるやろ」

 そこで可朝は膝を叩いた。

「それやったら大丈夫ですわ。わし、トータルで勝ってますさかい、暴力団の資金を吸い上げてるいうことですわ。お上から表彰状もろうてもええんとちゃいまっか」〉

 カンカン帽にメガネとちょびヒゲでお馴染み、月亭可朝(つきていかちょう)が、野球賭博で捕まったときのやりとりだという。作家の吉川潮氏の著書『月亭可朝の「ナニワ博打八景」』から引いた。

 話芸は一流でありながら、無類の博打好きで艶福家。落語家タレントのはしりでもある。そんな噺家は、昨年春、80年の生涯を閉じた。ベテランの芸能担当記者が述懐する。

「人間国宝の桂米朝に師事した可朝さんは、実は、1979年に野球賭博で逮捕されるまで吉本興業に所属していたんです。可朝さんはよく、自身の逮捕歴もネタにしていました。たとえば旧知の後輩、明石家さんまさんと新幹線で会ったときの噺などは秀逸です」

 その一部を再現すれば、

「最近、挨拶がないやないかとさんまに言うたら、“兄さん、テレビがむちゃくちゃ忙しいねん”やと。悔しいから、“テレビに出てる言うてもお前はバラエティーやろ。わしは報道番組に出とる”、言うたった」

 と、こんな具合。芸能担当記者によると、なんでもかんでも笑いに変えてしまう可朝には後輩思いの一面もあったそうだ。

「吉本時代、ギャラを満足にもらえない後輩のために、ギャラの引き上げを会社にかけ合ったことがあるそうです。すげなく断られたうえに可朝さんのギャラも下げると言われて撤退したそうですが。でも、さんまさんがいま、似たような行動に出ている。なんとなく、因縁を感じてしまいます」

 この可朝と似たような行動については、さんま自身が語っている。6月29日放送のMBSラジオ「ヤングタウン土曜日」で、

「入江にはすごく世話になっているので、入江が“さんまさん、お願いします”って言うてたら、俺は絶対に行ってたよ」

 言うまでもないが、入江とは「闇営業」の仲介役、「カラテカ」の入江慎也である。さんまは彼にレア物のパーカーやトレーナーなどを手に入れてもらったことがあるといい、

「それがもし、その人ら(反社会的勢力)のルートなら、僕、謹慎します。その人らから手に入れたのならあかんよな」

 吉本興業をクビになった入江に同情し、救ってやるかのような発言。そして可朝に倣ったか、後輩芸人への助け舟を出したのである。

「前から、中堅の人たちに言われているんですよ。“ギャラ上げてほしい。さんまさんから言ってもらえませんか”と。社長には言ったことあるんです。“もうちょっとギャラ上げたってくれ”と。ギャラさえ上げれば、ああいう仕事も行かなくて済むんですよ。こんなラジオで言っている場合じゃないんですけれど。僕が、(吉本の)岡本(昭彦社長)に言ったらええだけのことなんですけれど」


■食べていけない現実


 さんまのように吉本の社長を呼び捨てにはできないだろうが、「ナインティナイン」の岡村隆史は、次のような打ち明け話をした。27日深夜のニッポン放送「オールナイトニッポン」だ。

「ほんまのこと言うと、その直(ちょく)の営業ないと食べていかれへん芸人さんが、実はたくさんいるんです。だから正直なところ、詐欺集団のパーティーやイベントに行ったらあきませんけど、社長さんとか知り合いのところで司会やって、それは会社に黙っとく。吉本もなんとなく気がついてるけども、目、つむってる部分も昔はあった。特に若手の人やとか、ほんま食べられへん人はもうしゃあないなって言うて目をつむってくれてることもあったんです」

 約6千人いる吉本所属タレントの、大多数の実情であり不満の代弁である。

 ちなみに、岡村はラジオで「直」という言い方をした。岡村曰く、芸人のあいだで「闇営業」はあまり使われておらず、「直の営業」や「直の仕事」といった言葉を使うそうだ。

「千原兄弟」の千原せいじは6月29日のイベントで、その「直」を繰り返し使い、会社批判をしてみせた。

「直? それはありますよ、ありますあります。結婚式来てくれとか、別に行くやん、ぜんぜん直やん。それ闇営業? 友だちの結婚式を闇営業って言う?」

 そのうえで、

「最初に記者会見をすべきだった。完全にうちの会社のミスジャッジ」

 こう断罪した。さらには、吉本が27日に出した反社会的勢力の排除に関する「決意表明」も、「遅ない? 声ちっちゃめで言うけど」とチクリ……。

 さんまをはじめ、名前と顔の知られた吉本芸人が、「闇営業」なり「直の営業」なりが必要な現実を訴え、結果として、反社会的勢力につながったことへの嘆きの声を上げはじめた形である。が、芸人たちを処分した吉本の決意表明は、お詫びと反省、今後の取り組みが中心。「コンプライアンス」と「反社会的勢力」という単語が何回も使われ、

〈現在の吉本興業においては、あらゆる反社会的勢力との関係は一切有しておらず、今後も一切の関わりを持たないことを固く誓約・宣言いたします〉

 と謳う。そしていま、宮迫や田村などはレギュラーが飛び、すでに撮影が済んでいた番組は再編集されて、その場にいないことになった。


■35年ローン


 なかでも特に代償が大きかったのは、「スリムクラブ」の内間(うちま)政成ではないか。2013年末の番組の企画で中古の一軒家を約6千万円で買わされたのだ。35年ローンで月々の返済額は二十数万円という。彼らはこれをネタにしていて、14年の半ば、テレビカメラの入らない小さな舞台で実際に披露していた。

 真栄田(まえだ)賢が“こいつ、家を買わされましてね”と内間を憐れみ、“俺たち、笑っていいとも! 1回で5千円ですよ”と続ける。

 そして“タモリは1回200万円ほど。いいともは週6日だから、5週間で返せちゃう。こいつは35年ローンなのに”という漫才。憎しみまじりに、タモリにさん付けをしないのがウケていた。

 内間にしてみれば、直の営業ではなく会社を通した仕事でローンを背負い、その返済を楽にしようとパーティーに出たら、ヤクザ関連でこの始末。自業自得とはいえ、「闇営業」で闇に沈んでいきそうなのだ。演芸評論家の保志学氏は言う。

「吉本が今回の一件で芸人に処分を下し、黒い交際の根絶を掲げるのは社会的責任上、必要です。しかし芸人の側から見ると、よほど売れていない限り、会社を通した仕事だけでは食べていけないのが現実です。昔は持ちつ持たれつの関係があったのでどうにかなる部分もあったと思いますが、いまは、芸人の主戦場が舞台からテレビに変わり、子どもからお年寄りまで見るようになった。テレビが浸透することで、芸人にも、一般市民と同じ感覚が求められ、法令遵守の意識が生まれるようになった。破天荒な芸人がいなくなったのです」

 もっともこの問題、「闇営業」と反社会的勢力の仕事がごっちゃになって語られるので分かりにくい。本来、単なる「直の営業」と反社会的勢力絡みの営業は分けて考えるべきで、さらに、後者についても事前に知っていたか知らずかでは雲泥の差があろう。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年7月11日号 掲載

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