「マツコ・デラックス」が失速し始めた根本的な原因

 独特のコメントで、出演する番組は高視聴率。テレビ界では引っ張りだこのマツコ・デラックスは、視聴率の女王とまで言われる。10月からは「マツコ&有吉 かりそめ天国」(テレビ朝日)も深夜帯からゴールデンに昇格と向かうところ敵なしのようだが、その勢いに陰りが見えてきたという。一体、何が起きているのか。

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 民放プロデューサーが解説する。

「近頃、全体的にマツコさんの番組の視聴率が落ちているんです。一口に視聴率といっても、従来からの世帯視聴率と視聴世代が分かる個人視聴率というものがある。スポンサーが重視するのは個人視聴率ですが、全国で個人視聴率を計測できるようになるのは来年から。年間三冠王などの基準とされるのは、昔も今も、お茶の間で見られる世帯視聴率なんです。世帯視聴率を稼ぐには、いわゆるF3・M3と呼ばれる50歳以上の年齢層に見てもらうのが手っ取り早い。若者のテレビ離れが進んで、普段から在宅していてテレビをつけているのは、年齢層の高いアクティブシニア層だからです。ですから高視聴率を狙うなら、彼らが好む番組作りをすればいいわけです。NHKの朝ドラが高視聴率を獲得しているのは、そのためです。逆に今年の大河ドラマが低視聴率なのは、アクティブシニア層にそっぽを向かれたことが最大の原因でしょう」

 テレビ朝日が王者・日テレに肉薄できたのも、こうした戦略を徹底しているためだ。ドラマ「相棒」や「科捜研の女」、「家政婦は見た」など、2時間サスペンスから派生し、連続ドラマ化して成功すれば、今度は再放送を繰り返す。

「テレ朝はバラエティでも『ポツンと一軒家』など、シニア向けの番組で高視聴率を獲得していますからね。テレ朝に限りませんが、シニア層を獲得するために最強のタレントとなっていたのがマツコさんです。辛口な意見を言うたびに強い支持を受け、テレビ界から引く手数多となってきました。ただ彼女の辛口コメントは、あくまで叩いても、自分の身に火の粉がかからない人が対象でした。それを的確に判断し、秀逸なコメントを残し、存在感を示してきたわけです。ところが、その抜群のバランス感覚に陰りが見え出しています。その最大の例が、元SMAPへの発言でした」(同)

 マツコが月曜日のコメンテーターを務める「5時に夢中!」(TOKYO MX)に、レギュラー出演の可能性があった元SMAPの稲垣吾朗に対して、彼女が共演拒否をしたというものだ。ただし、彼女は番組内で何か発言したわけではない。まずは週刊文春(8月8日号)の取材に答えたことで火がつき、さらに週刊女性(8月20・27日号)で、文春の記事が事実ではないと反論したのだ。


■失われた希少価値


「SMAPでなくなった3人について、文春から直撃を受けたマツコは《だってテレビは使いたくないんだもん。SMAPだから使われていたわけで、SMAPじゃなくなった3人に魅力を感じますか》《あの3人はSMAPにいたからこそチヤホヤされていたんだから》などと答えたとされています。この発言は大きかった。実は元SMAPのファンこそ、高視聴率を獲得するためのメインターゲットであるアクティブシニア層が多いのです。つまり元SMAPへの批判は、多くの視聴者を失うことにつながります。おそらくネット上でのマツコへの反発の声に彼女自身も驚いたのでしょう。その後、週刊女性を使って、文春は答えたことをちゃんと記事にしてくれなかったと大反論した。しかし、この記事でも彼女は見通しを誤った。『5時に夢中!』でのレギュラー化が消えた稲垣に、MXは別に冠番組を提案したというのですが、彼女はこう言い放った。《それを断ったのは吾朗ちゃんのマネージャーさんだからね。“マツコと一緒じゃなきゃイヤだ”って》。しかし、この経緯について、稲垣の所属事務所は、マツコとの共演を希望した事実はないと答えたために、齟齬が生じてしまいました。シニア層は、かえってマツコへの不信感を高めてしまったかもしれません」(同)

 さらに、別の理由もあるという。それが彼女のCMの契約本数という。

「これまで『自分はオカマだから、表に出るべき人間じゃない……』と控えめなコメントを発してきました。一歩引いたスタンスだからこそ、どこにも忖度することなく、大物も立てて来た。ところが最近では、自ら前面に出るようになってきました」(同)

 今年に入ってからだけでも彼女のCMはこれだけある。

●レノア本格消臭:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン
●合組(白米):ホクレン農業協同組合連合会
●クロネコメンバーズ:ヤマト運輸
●dプログラム 薬用 スキンケアファンデーション(パウダリー):資生堂
●HAKU メラノフォーカスF:資生堂
●FIRE ワンデイ ブラック:キリンビバレッジ
●鮮度生活 絹しょうゆ減塩:ヤマサ醤油
●薬用ピュオーラ GRAN:花王
●ピュオーラ 泡で出てくるハミガキ:花王
●グーグル

「彼女は、かつては露出過多を嫌い、どんなに番組オファーが来ても、スペシャル番組などの出演を控えてきました。レギュラーも増やそうとはしなかった。もちろん、飽きられるのを防ぐためです。それはCMに関しても同様でした。ところが、この春からは資生堂のCMまで決まり喜んでいました。それが自分の商品価値を上げ、ステージを上げることに繋がると考えたのかもしれません。その結果、数多くのCMがテレビで流れることとなりました。まだレギュラーも少なかった頃、マツコがテレビに出演していると必ず見ていた視聴者は多かったはずですが、CMでの出演が増えたために『また出ている』と思われ、希少価値がなくなってしまったんです」(同)

 こうした中、彼女のレギュラー番組「マツコ&有吉 かりそめ天国」が23時台からゴールデンへと昇格することが発表された。

「未だにマツコに高視聴率が望めると信じて疑わないテレ朝にとっては、大きな誤算になるかもしれません。日テレとの三冠王争いに鎬を削っていますが、最後はマツコで敗れたなんてことになるかも……」(同)

 先に週刊文春の直撃に際し、マツコはこうも答えている。

「テレビってそんな甘くないわよ。いち視聴者として冷静に考えてみてよ」

週刊新潮WEB取材班

2019年8月28日 掲載

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