「北村一輝」が準主役の反日映画が大ヒット ソウルで鑑賞した本誌記者の感想は

 ボイコット・ジャパンに忙しい韓国では反日映画も大ヒット中だ。中でも「鳳梧洞(ポンオドン)戦闘」(ウォン・シンヨン監督)という作品は、韓国併合後に初めて日本軍に勝利した独立軍の話。“極悪”日本軍の将校を北村一輝(50)が演じ、日本でも話題になった。ただ、このポンオドンなる戦い、寡聞にして聞いたことがない……。

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 かの国にとって、今年は併合に抵抗した独立運動「三・一運動」(1919年)から100年目に当たるそうで、元々、反日気運が盛り上がる要件は揃っていた。

 だからこそ、1月には日本の統治時代にハングル語の辞書を作ろうとした人々を描いた「マルモイ」(オム・ユナ監督)が公開され、2月には、やはり統治時代に自転車レースで日本人に勝った男の話「自転車王オム・ボクドン」(キム・ユソン監督)、同じく2月に三・一運動に参加した女性運動家を取り上げた「抗拒:柳寛順物語」(チョ・ミンホ監督)も公開された。

 その一方、この1年、日韓関係は悪化の一途を辿った。

●18年10月30日:韓国大法院(最高裁)はいわゆる徴用工問題で、新日本製鉄(現日本製鉄)に対し、1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じた。
●18年11月21日:韓国政府は慰安婦財団の解散を一方的に発表。
●18年12月20日:韓国海軍艦艇が日本の自衛隊機に対し火器管制レーダーを照射。
●19年2月7日:文喜相(ムン・ヒサン)韓国国会議長による天皇陛下への謝罪要求発言。

 いずれも原因は韓国側にある。こうした中、日本の経済産業省が韓国に対し、半導体材料3品目に対し輸出管理の強化を発表したのが今年7月1日。これにより、韓国ではボイコット・ジャパンが始まった。

 さらに8月2日、韓国をホワイト国から除外する旨を定めた輸出管理令の一部改正を閣議決定し、それが公布された8月7日、韓国で公開されたのが、「鳳梧洞戦闘」である。三・一運動が始まった翌1920年6月、中国・満州の山間部で起きた朝鮮独立軍と日本軍との闘いを描いた作品で、満足な武器も持たない独立軍が知略で日本軍に初めて勝利を収めたというストーリーである。


■打倒「バトル・オーシャン」


 公開4日で観客動員100万人を記録し、9日目の8月15日、韓国でいう光復節には300万人を突破した。

 その翌日、ソウルでこの映画を観た本紙記者が言う。

「ソウルの繁華街・明洞(ミョンドン)の映画館で見ました。午後2時頃でしたが、およそ200席のうち埋まっているのは半分くらいでしたね」

 意外にも満席ではなかったという。

「15日は国民の祝日でしたが、16日は平日だったということもあるかもしれません。ただ、一時の勢いは落ちている気がしますね。24日現在で、累積動員数は441万人だそうです。韓国では、豊臣秀吉が朝鮮に攻め入った慶長の役を描いた『バトル・オーシャン 海上決戦』(2014年公開:キム・ハンミン監督)があります。これが1700万人を動員して、反日映画の金字塔として有名です。ただ、この映画で日本人を演じているのは韓国人でした。今回、『鳳梧洞戦闘』は、三・一運動100周年の今年、『バトル・オーシャン』を超えようと作られました。よりリアリティを出すために、日本兵の配役には北村一輝や池内博之(42)といったメジャーな日本人俳優に声をかけたのでしょう」(同)

 気になるのは、日本人俳優の役どころだが、

「話はとにかく単純で、“日本は悪で韓国は正しい”という構図です。北村が演じている安川二郎少佐は、冷酷無比な殺人マシーンです。登場シーンもおどろおどろしい。駐屯地で池内演じる部下の草薙中尉から、独立軍の動きを報告されるのですが、なぜか生きている虎をナイフで突きながら聞いているんです。その報告が気に入らず、虎の首をナイフで突き刺し、返り血を浴びながらこう命じるのです。『帝国軍がたかがキツネ狩り如きで! 狩りの準備をしろ! 今度こそ皆殺しにしてやる!』と」

 映画『テルマエ・ロマエ』で、北村が演じた古代ローマの次期皇帝候補ケイオニウスが口にしそうなセリフだ。北村少佐は、韓国軍ばかりでなく、同じ日本人に対しても容赦がなかったという。

「作戦に失敗した日本人将校に対し、『銃はどっちの手で撃つ?』と問い、『右手です』と答えると、すかさず軍刀を引き抜き、将校の左手人差し指を切り落とします。そして『血が乾く前に、(独立軍の連中を)連れてこい!』と命じるのです」

 軍律の厳しかった日本軍で、こんなことを行えば軍法会議ものだろう。

「日本軍ももちろんひどく描かれています。独立軍を追って村を急襲するシーンでは、笑みを浮かべた日本兵が、無防備な老人、子供、女性を銃で撃ち、刀で斬り、なぶり殺しにしていきます。レイプされる女性もいますし、殺された子供を抱いて泣く母親を見て、笑い転げる日本兵も描かれます」

 そこに出てくるのが“正義”の独立軍である。

「いかにも韓国映画的ですが、それまでドンパチやっていた独立軍が最後に北村や池内を追い詰めた時には、刀での斬り合いとなるんです。主人公は北村にこう叫びます。『戦争遊びはもうやめて帰れ!』と捨て台詞を吐いて去って行く」

 韓国人はスカッとするだろう。日本人だって、こんな日本軍はイヤだもの。

「アクション活劇なら構わないのですが、困ったことにエンドロールで、独立軍が発行していたという『独立新聞』がクローズアップされるのです。この物語は史実がベースである、と……まあ、韓国人が日本兵を描けば、こうなるのは仕方がないかもしれませんが、それにしてもこの映画は酷い。私も正直言って不愉快でしたね」

 劇場からは、「歴史を忘れた民族に明日はない」と呟いて出て行く韓国人もいたという。


■日本軍はいなかった


「鳳梧洞戦闘」は韓国の高校では、必ず教科書に載っており、日本軍の死者157人、負傷者300人に対し、独立軍の死者はたった1人とされる。朝日新聞は「韓国 独立の苦難語り継ぐ アジアの教室から」(1995年7月17日付)と題して、こう報じている。

〈六月末、ソウルしにある漢城科学高校の、三年生の国史の授業を見せてもらった。(中略)この日の授業では、一九一九年の三・一独立運動後に、各地で編成された独立軍の戦いぶりを取り上げた。一九二〇年に中国東北地方で日本軍に対して勝利を収めた「鳳梧洞(ポンオドン)の戦闘」「青山里(チョンサンリ)の戦闘」が中心だった〉

 さすが韓国通の朝日である。日本に勝利したことは事実であるようだ。

〈日本軍の韓国人虐殺を記した歴史書の一節も、スクリーンに映し、読み上げた。「かまでゆで、皮をむき、妻の前で夫を殺して見せ、妊婦の腹を刺し……。それでも、わが独立軍は屈しなかった」。残虐な行為の連続に、生徒からどよめきが上がった。金先生は終始、淡々と授業を進めた〉

 映画と同じ論調である。朝日の記者氏には当たり前の史実かもしれないが、日本人でこの話を知っている人がどれほどいるだろうか。日本の歴史家(現代史学)・秦郁彦氏に、どんな戦いだったのかを聞いてみた。

「ポンオドン? 知りませんねえ。ちょっと待って、韓国の国定教科書を見てみるから。ああ、あった、あった。1920年に満州でねえ……、当時、満州には100万人もの朝鮮人がいました。後に北朝鮮の国家主席となる金日成(キム・イルソン)もそうです。ただ、そのころ、満州の朝鮮国境付近に日本軍は駐留していません。一体、どういう戦闘だったのでしょうか。それほどの被害があったのなら日本にも記録があるはずですが、それに該当するような記録は見当たりません」

 記録がない?

「そうです。例えば、金日成も満州において抗日活動に部隊指揮官として参加したということですが、これも記録がない。日本人の研究者も、そう言っているからには、何らかの根拠、事実があるのではないかと探したのですが、見つかりませんでした。おそらく日本の駐在か何かを襲った程度だったのでしょう。それを手柄話にした訳です。このポンオドンの戦闘というのも、その程度かもしれませんね。三・一運動後は、確かにあちこちで独立運動が起こっていますが、すぐに鎮圧されていますから。そもそも三・一運動というのも、かつてはそれほど良しとされていませんでしたからね。独立運動と言っても、その後四半世紀も併合されたわけですから。三・一運動が見直されたのは、現在の文在寅大統領になってからです。彼が韓国誕生の話として賛美し始めたのです」

 その集大成が映画「鳳梧洞戦闘」だったわけである。現在、この映画は、アメリカ、カナダ、ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、オーストラリア、ニュージーランド、中国、シンガポール、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイの15カ国での公開が決定したという。

 そんな大作で、準主役といってもいい日本兵を演じた北村だが、公式ホームページには世界公開のお知らせどころか、「鳳梧洞戦闘」出演の報告もない。芸能記者は言う。

「韓国映画から世界へと出て行こうと考えていたそうですから、オファーが来た時は願ったり叶ったりだったはず。しかし、今では頭を抱えているみたいですね。『週刊新潮』(5月30日号)が報じたように、事務所の反対も押し切り、“どんな役でもこなすのが俳優”との信念で韓国入りしたそうです。実を言うと、クランクインは昨年8月。まさか1年後の公開時に、ここまで日韓の関係が悪化しているとは思わなかったのでしょう。9月30日スタートのNHK朝ドラ『スカーレット』では、ヒロイン・戸田恵梨香(31)の父という重要な役どころですからね。今は余計なことを言うより、黙っていたほうがいいと考えているのでは」

 アクション映画の悪役ならまだしも、プロパガンダ映画となると、日本人の反感を買うかもしれない。こうなったら、この反日映画はどのように作られていったのか、全て証言してみてはどうだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月30日 掲載

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