山田詠美さんとのトークイベント(中川淳一郎)

 先日、作家の山田詠美さんと一緒にトークイベントをしました。この1年間、会いたい人に打診をし、2時間ほど喋る企画をやり続けています。今回は第3回、おずおずと担当編集者を通じてオファーを出したらなんと快諾してくれました。

 当日は最新作『つみびと』の話から、「なぜ私は『セックス』を『エッチ』と言うのが嫌いなのか」「原田龍二の不倫を許した妻を『寛大な奥さん』とホメる風潮への違和感」などの話を経て最後は死生観についても話し合いました。

 ツイッターには「刻みよく進む話に終始笑いは絶えず、大切な言葉がぐっと心に響く」などの感想があり、お客さんも楽しんでくれたようです。私が個人的におかしかったのが、山田さんが週刊文春の名物企画「顔面相似形」に「作家・山田詠美」として作品を投稿したものの採用されなかったという件です。ちなみに山田さんは宇多田ヒカルと浅川マキ、そして野茂英雄氏と「顔面相似形」だそうです。

 あと面白かったのは、テレビ番組で一般人によるツイッターの文面を紹介する時の声がバカっぽい、という話です。実際に、SMAPの解散報道が出て5人がスーツ姿で活動継続を発表した時の「これからもずっとSMAPは5人で頑張ってください。本当に本当によかったです」というツイートを読んでいただいたのですが、これが見事にバカっぽいテレビのナレーションを再現してくれるのでした。

 山田さんはSNSをやりませんし、ネットもあまり使わないそうなので、私はテレビに投稿される「縦読み」の面白さについて紹介しました。とある年の日テレの選挙特番では、視聴者が6文字×3行で投稿できたのですが、この2つの投稿が見事に採用されてしまったのです。

  ちときびしい
  んじゃ?まあ
  これが答えか

 これの最初の文字だけを読むとどうなるかは読者の皆様のご判断に委ねますが、もう一つ、こんなものもありました。

  まあ自民もみ
  んしゅも今後
  これからだね

 こんなものを見せてしまったら、「アンタ、下品ね! コラ!」とか激怒されるかと思ったのですが、山田さんも大笑いしてくれ、小心者の私も胸を撫でおろしたのでした。

『つみびと』は23歳の母親が2人の幼い子供を放置したあげく餓死させた「大阪2児置き去り死事件」をベースとした作品ですが、印象的だった言葉があります。

「ハイヒールを履いて歩いていた場合、ヒールが穴に落ちてしまうってのは誰でもあり得ること。この事件で逮捕された母親がしたことは、ごく普通の母親にも起こり得ることかもしれない」

 また、『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』を基に死生観を語ったのですが、「死というものは数で見落としてしまうことがある。たった一人を失うことで被(こうむ)る深みもあり、他人が幸不幸を決めるものではない」との言葉もありました。

 こうしたマジメな話をしたのですが、終了後の打ち上げでは皆でべろんべろんになり「詠美ちゃんって呼んでいいよ」と言われた上に私の学生プロレス時代のリングネームが「スカトロング山田」だと伝えると、「山田会」への入会も許可いただき、実に幸せな夜でした。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2019年8月29日号 掲載

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