朝ドラ「なつぞら」は最終回も近いのに、さっぱり盛り上がらないのはなぜ?

 NHKの朝ドラ「なつぞら」が9月9日、第139話の視聴率が23.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)と番組最高視聴率を更新した。この日は、なつ(広瀬すず[21])が、18年間務めた東洋動画を退職し、仲間たちでつくったアニメ制作会社で第二の人生のスタートを切った門出の回だった。

 今月末の最終回に向け、いよいよラストスパートかと思われたが、翌日以降は連日の20%割れで、むしろ失速……。記念すべき第100作の朝ドラは、このまま盛り上がりに欠けるままフィナーレを迎えてしまうのか。ならば、その原因はどこにあるのか、業界のプロに聞いてみた。

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 民放プロデューサーは言う。

「9月9日の23・8%に関しては、番組の内容とはほとんど関係ないでしょう。この日、関東地方は台風直撃で、交通機関がストップ。おまけに朝刊もなかったので、サラリーマンは電車がいつ動くのか知りたくてNHKを見ていたのです。それが証拠に、『NHKニュースおはよう日本』の朝7時からの視聴率は、21.1%。それに続く『NHKニュースおはよう日本・関東甲信越』(7時45分〜8時)も23.6%でした。通常なら10%台前半の番組ですが、20%以上となっています。電車が動かないとあって、そのまま朝ドラを見た人も多かったということでしょう」

 9日は、なつの第二の人生と台風が、たまたま重なっただけらしい。以後、10日19.4%、11日19.8%、12日19.5%と20%割れが続いた。

「朝ドラの前期(4月〜9月)を制作する東京の放送センターとしては、後期(10月〜3月)の大阪放送局に勝つことは至上命題。ましてや、朝ドラ第100作という期待を背負った『なつぞら』は、ヒロインはオーディションなしで広瀬に決定し、歴代ヒロインを次々動員するなど、かなり力が入っていた。絶対に成果を出さないとまずいと思ったんでしょうね」(同)

 歴代ヒロインとは、朝ドラ第1作『娘と私』の北林早苗さん(75)はじめ、『おしん』からは小林綾子(47)と田中裕子(64)、山口智子(54、『純ちゃんの応援歌』)、松嶋菜々子(45、『ひまわり』)、岩崎ひろみ(42、『ふたりっ子』)、比嘉愛未(33、『どんど晴れ』)、貫地谷しほり(33、『ちりとてちん』)、原日出子(59、『本日も晴天なり』)、三倉茉奈(33、『ふたりっ子』、『だんだん』)、藤田三保子(66、『鳩子の海』)、藤澤恵麻(36、『天花』)……なかなかの豪華キャスティングだった。

 ところが、ここまで頑張っても、大阪制作の前作「まんぷく」には勝てそうにないという。

■責任は脚本、ヒロイン、NHK


「『まんぷく』(ヒロイン:安藤サクラ[33])の平均視聴率は21.4%でした。その前の『半分、青い』(ヒロイン:永野芽郁[19])は21.1%でしたが、『なつぞら』の平均視聴率は今のところ、21.01%。現在142話まで放送されて、残りの十数話で『まんぷく』を追い抜くには26%程の数字を取らないと無理でしょう。台風のお陰で取れた最高視聴率が23.8%ですからね。もはや『まんぷく』超えは絶望的と言っていい」

 これだけ、話題を提供しながら、数字が伸びなかったのはなぜか。

「低迷の原因は、脚本に尽きると思います。なつはアニメーターになることを目標にしていましたが、そこへ一直線に向かいすぎです。山あり谷ありのハラハラドキドキ感がないんです。脚本の大森寿美男さんは朝ドラは2作目。2003年後期に放送された前作『てるてる家族』(ヒロイン:石原さとみ[32])の平均視聴率は18・9%で、朝ドラ史上初めて平均20%を割った曰く付きの作品でした。失礼ながら、大森さんは民放ドラマでもヒット作がこれといって見当たらない。正直言って経験不足ではないかと思います」

 なかなか手厳しい意見だ。

「たとえば、『半分、青い』の脚本は、『あすなろ白書』(93年・フジテレビ)や『ロングバケーション(96年・フジテレビ)、『ビューティフルライフ』(00年・TBS)などで知られる大御所・北川悦吏子さんでした。『半分、青い』は、高度成長期の終わりから現代までを描き、岐阜と東京を舞台に七転び八起きで駆け抜け、やがて一大発明を成し遂げるというストーリーだった。賛否両論を巻き起こすほど起伏の激しいドラマで、イラついた視聴者も少なくなかった。結局、それが数字に結びつくのです。北川さんはインタビューでも『視聴者の心を手玉に取れないと半年間の連続ドラマは無理だ』と語っています。これは確信犯でしょうね。ちなみに『まんぷく』は福田靖さんで、『HERO』シリーズ(01年〜・フジテレビ)や『海猿 UMIZARU EVOLUTION』(05年・フジテレビ)、『ガリレオ』シリーズ(07年〜・フジテレビ)、大河『龍馬伝』(10年・NHK)などで知られ、実績は十分です。それに比べ、『なつぞら』は雄大な北海道の十勝で物語がスタートして、評判は良かったのですが、それに安心したのか、舞台を東京に移すと途端につまらなくなった。時代背景も描かれなかったし、しょっちゅう往き来する北海道の家族は、なんだか埼玉にでも住んでいそうなほど距離感も感じられませんでした。長期的な展望がなかったのではないかと思います」

 たしかに、これは昭和何年の話だっけ、と思うことはしばしばあった。さらに、ヒロインが美人過ぎるのも“?”だという。

「広瀬すずは演者としては悪くなかったと思いますが、顔立ちが整いすぎていて、視聴者の共感を呼ばないんです。その上、何かと正論ばかり吐くわけです。『なつぞら』は悪役や敵役がほとんど出てきません。そんな中で、ヒロイン一人が真正面から強行突破ばかりしている。これから1日が始まる視聴者にとって、朝っぱらから説教されているように感じられました。また、美人は3日で飽きるというわけではありませんが、半年間もの長丁場には愛敬のある顔立ちの女優のほうがいい。だから、永井芽郁や安藤サクラのほうが数字が取れるんです」

 さらに、豪華キャスティングは逆効果だったという指摘も。

「NHKが気合いを入れて引っ張り出した歴代ヒロインですが、たくさん出し過ぎて渋滞していました。ただ出演させればいいというものではない。それぞれに“落とし前”をつけなければいけなくなるわけです。脚本が時代背景などがそっちのけになったのは、豪華キャスティングをどう扱うかに、気を取られすぎたのかもしれません。過ぎたるは及ばざるが如し、ですがね。ひょっとすると、脚本に物足りなさを感じたのは、NHK側が主導権を握りたかったからかもしれません。だから大森さんに白羽の矢が立ったのかも。大御所の北川さんや岡田惠和さん(『ちゅらさん』[01年]、『おひさま』[11年]、『ひよっこ』[17年])では、なかなか言うことを聞いてくれないでしょうから……」(同)

週刊新潮WEB取材班

2019年9月17日 掲載

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