俳優「田中哲司」の知られざる素顔 愛車は1972年式「ハコスカ」GT-RとGT

 大成功作となった日本テレビの連続ドラマ「あなたの番です」(全20話)の後半を盛り上げた立役者は田中哲司(53)と横浜流星(23)に違いない。うち、田中は演劇界出身だが、今やドラマ界、映画界に欠かせない存在になっている。田中の魅力とは何か?

 田中哲司といえば、仲間由紀恵(39)の夫であるのは知られている通り。昔から女性にモテる。

 とはいえ、男性ファンも多い。元毎日放送プロデューサーで同志社女子大メディア創造学科の影山貴彦教授も田中に惹かれ、高く買う一人。

「なにしろ演技が超うまい。それを前面に出さないところが、またいい。本当に演技がうまい人はそれをひけらかさない。また、見る側に媚びた演技をしないから、女性にも男性にも人気なのでしょう」(影山貴彦教授)

 だが、田中にしてみれば、うまいのは当たり前なのかもしれない。ドラマと映画では助演ばかりであるものの、田中の本籍地である舞台では大抵が主演か準主演なのだから。

 ドラマの収録や映画の撮影と違い、舞台はやり直しが効かない。また、観客から全身を長時間にわたって見つめられる。このため、演劇界の主演級俳優は例外なくうまいのだ。

 田中は舞台を大切にし続けており、今年も12月から東京、愛知、福岡などで上演される赤堀雅秋作・演出の「神の子』に出演する。舞台をやらない年はない。

「田中はエンターテインメント調の舞台に出演することもあるが、「背信」(2014年)や「冒した者」(2015年)などの硬派作品によく出る。小説にたとえると、純文学的な舞台。こういった作品は俳優の出演料が高くない。でも稽古の時間は長く、金儲けにはならない。だから、田中くらいドラマと映画で売れっ子になると、こういった舞台を避けるようになりがちだが、そうしないから立派。舞台が好きなのだろうし、向上心も強いのだろう」(ベテラン演劇記者)

 日大芸術学部演劇学科の出身。1995年、故蜷川幸雄氏演出の「ハムレット」で商業演劇の初舞台を踏んだ。その後は蜷川氏、串田和美氏ら日本を代表する演出家が指導する舞台に立ち続け、演技を磨いていった。

 舞台をやりつつ、1996年からは「ぽっかぽか3」(TBS)などのドラマにも出演。お茶の間の知名度も徐々に上げていく。役の幅も広げていった。どんな役であろうが好演した。

 まず男っぽい役。「あなたの番です」で演じた南雅和もそうだろう。当初、連続殺人が起こるマンションに、下品で軽薄なユーチューバー芸人を装って入居するが、本当は5年前に愛娘を殺した犯人を追っていた。幼くして命を奪われた娘の無念を思う気持ちが南を突き動かしていた。

 このドラマは推理劇だったので、南の正体がすぐに分かってしまっては興ざめだ。機が熟すまで謎に満ちた人物でなくてはならない。それには相応の演技力がいる。その点でも田中は適任だった。

 クールな役もハマリ役。「緊急取調室」(テレビ朝日、第3シリーズは2019年)の梶山管理官もそうだ。梶山は「静」の人ながら、強い存在感を示した。

 悪役もまた絶品。映画「アウトレイジ ビヨンド」(2012年)では暴力と狡さで山王会幹部になったヤクザの舟木をリアルに演じた。映画「新聞記者」(2019年)で扮した多田内閣参事官は対照的にエリートだが、情報を操って人間を踏みつぶす冷血漢で、やはり悪党。これも迫真の演技だった。

 ほかにも好演した作品は数々あり、挙げ始めたらきりがない。

「田中さんが出ると、画面が締まりますね」(前出・影山教授)

 実際、キャストの中に田中の名前があると、思わず期待してしまう人は多いだろう。田中に出演依頼が殺到するのも分かる。落胆させる演技がないのだから。

 生まれ持った声もいい。俳優として成功する要素は「一声、二顔、三姿」と言われる。

 実は一番大切なのは顔ではなく、声だ。田中の声はよく通るし、口跡もいい。聞き取りやすい。

 だから「こくみん共済」のCMや今年1月に放送されたNHKのBS1スペシャル「誰も知らないサンタクロース〜ワークキャンパーたちの冬〜」などのナレーションも担当。声の仕事も多い。そもそも俳優の素質があった。

「二枚目なんですが、手が届かない飛びきりの二枚目でないところもかえっていいですね」(同・影山教授)

 非凡な俳優にほかならないが、その素顔はどうかというと、まず愛車も非凡。

 田中は出演する劇場に自分で車を運転して来ることで知られているが、その愛車は1972年式のハコスカ(日産スカイライン3代目)。しかもGT-RとGTの2台。どちらも名車だが、とくにGT-Rは「羊の皮を被った狼」と呼ばれ、高性能を誇り、往年の走り屋たちの憧れである。

 もちろん2台ともオートマチック車ではなく、マニュアル車。運転は簡単ではない。また、メンテナンスが面倒だ。維持費もかかる。価格も高かったはず。GT-RもGTも状態のいいものなら1000万円を軽く突破するのだから。

 自動運転機能付きの新型スカイラインが発売されたが、最上級車でも価格は約630万円なので、それより遥かに高い。それでも田中は旧車に乗る。

 それについて田中は母校・海星高(三重県四日市市)の同窓会誌のインタビューに対し、こう話している。

「好きな車じゃないとイヤ」(田中)「ハコスカは気持ちいい。疎ましい時もあるけど(笑)」(同)。機械好きなのである。男っぽさを感じさせる。

 親しい友人の名前を聞くと、やはり男っぽさをうかがわせる。劇団「状況劇場」出身で、シブイ演技を長年見せ続けている小林薫(68)、12月からの舞台『神の子』でも共演する大森南朋(47)、田中と同じく確かな演技力で善人も悪党も好演する光石研(57)…。集まるときはバーやカフェでなく、居酒屋だというから、やはり男っぽい。

 一方、繊細な面もある。過去には俳優の仕事について「精神的にキツイ仕事です」(『envy』)とプレッシャーを口にしている。自分の演技が求められないと、成立しない仕事だからだ。「一度仕事が2ヵ月ぐらい空いた時は、正直、気が狂いそうになりましたね(笑)」(同『envy』)とも語った。また、子供のころから絵を描くのが好きだ。

 2014年に仲間と結婚した際には全スポーツ新聞が「仲間由紀恵が結婚」と大見出しを打った。また、世間にも「田中哲司って誰?」という声が少なくなかった。そんな空気を察してか、田中はやや自虐気味に「男性ファンのみなさん、申し訳ございません」とコメントした。

 だが、もうそんな言い方をする人は皆無だろう。そもそも当時から演劇関係者やドラマ関係者らの間では「仲間はいい人を選んだ」と言われていたのだ。

 2017年には女性との密会報道があったが、仲間との信頼関係は揺るがず、翌2018年6月には一卵性双生児の男児2人が誕生した。

 同10月、映画「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」の公開記念舞台挨拶で、田中はこう語っている。

「おむつを替えて、ウンチをしているのを見たときに、それに背中を押されるというか、生きているんだなって。俺を頼っているんだなって(と思った)」

 父親になったことで、さらに仕事への意欲が高まっているようだ。こればかりは非凡ではなく、世の父親族と同じだろう。ますますエネルギッシュな仕事を見せてくれるに違いない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月28日 掲載

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