高畑充希が「同期のサクラ」で住む“南栄荘” レトロアパートがドラマ撮影で大人気

 アニメや漫画、映画、そしてドラマのモデルや舞台となった場所などを訪れる、いわゆる聖地巡礼。都内に戦前から建つ年代物のアパートもまた、聖地の一つだ。なにせ、ここで暮らしていたのは、杉咲花、平野レミ、中村獅童、オダギリジョー、さらに“どーもくん”や“はに丸”。そして現在は、高畑充希が住んでいる……という設定である。

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 現在放送中の「同期のサクラ」(日本テレビ:水曜22時)で、ヒロインの北野サクラ(高畑)が住むアパートとして使用されているのが、都内の有名大学近くにある「南栄荘」である。

 昨年放送された「花のち晴れ〜花男 NEXTSEASON〜」(TBS)では、江戸川音(杉咲)が暮らすアパート「北名荘」として使用された。

 獅童や平野、どーもくん、はに丸が揃って暮らしていたのは、15年から17年にかけて、NHKが受信料をドラマ仕立てでアピールしたスポット番組「受信寮の人々」(総合テレビ、Eテレ、BS1、BSプレミアム)での「受信寮」として。ちなみに寮母役は、同局の首藤奈知子アナだった。

 オダジョーは、07年に公開された映画「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」で上京した“ボク”が住み始めたアパートで登場した。

 他にも、今年4月期に放送された「ストロベリーナイト・サーガ」(フジテレビ)、16年に放送された「家売るオンナ」(日テレ)で、北川景子演じる不動産業の三軒家万智が扱う物件になったこともある。

 短い期間でこれだけのドラマ、映画に起用されるとは、大した売れっ子アパートと言えよう。なぜ南栄荘は、これほど使用されるのだろうか。管理を請け負う、都内の不動産業者に聞いてみた。

「築80年は経っていると思います。都内で戦前の建物なんて、みんなマンションになっちゃって、あまり残っていませんからね。玄関の両脇にある八角形の窓が、なんともいえない昭和感を出していることも人気なのかもしれません」


■東京大空襲からも免れたアパート


「あの辺りは奇跡的に空襲から免れたんですよ。すぐ近所にも同じように古いアパートは数年前までありましたが、みんな建て替えられましたね」

 なぜ、南栄荘だけが残っているのだろう。

「土地の所有者と建物の所有者が異なるうえ、担当の方も代替わりしているから、なかなか計画が立たないようです」

 希少価値から、格好のロケ場所として利用されているわけだ。

「それと撮影しやすい立地の良さもあるみたいですね。大通りから少し入った所にあるから、交通の邪魔にならない上、玄関の前の道が少し広いので、撮りやすいんだそうです。そのせいか、年に5〜6件、問い合わせがあります。ただ、内部の撮影は断っています。ですから、『同期のサクラ』もサクラの部屋は、別のセットで撮影しているんでしょうね。でも、あまり頻繁に撮影されても住民に迷惑だから、“有料ですよ”って言うと諦める制作会社もあります」

 実際、南栄荘に住んでいる人は、どれくらいいるのか?

「大学が近いから、かつては大学生ばかりが住んでいました。しかし、風呂なしの共同便所ですからね、今の若い人は住みたがりません。あ、1部屋だけ、卒論の共同制作に使いたいとのことで、建築学科の学生さんに借している部屋があります。その他はほとんどお年を召した人ですね。2階建てで30室ほどありますが、今もすべて埋まっています」

 そんなに部屋数がある建物には見えないが……。

「複雑な形をしているんです。建物が出来た頃のことはさすがに知りませんが、登記を見ると、土地が3つに分かれています。おそらく3つの建物をくっつけたのではないかと思われます」

 その建物は、上から見るとV字型をしている。

「廊下の両側に部屋がある2棟がV字型になっていて、その多くが4畳半一部屋で、狭いから部屋数が多いんですよ。なかなかユニークな人も住んでいました。もし私に文才があったら、小説にでもしたいほど。大学時代から数十年、ずっと住んでいた設計士もいましたね。部屋を設計事務所として使っていました。数年前に引っ越されましたが、駅前に立派な事務所を構えています。また、大手ホテルチェーンの清掃会社を経営している方、一級建築士も住んでいます」

 家賃の平均は3万5000円という。

「もちろん、お金がないという理由で暮らしている方もいます。働いているけれど収入が少なく、生活保護を受けている人もいる。体が弱く、入院してしまうと給料は途端に入らなくなる。生活保護っていうのは、払われなかった給料分を補填するまでに時間がかかるから、私のところにお金を借りに来る方もいます。大金は貸せないけどね。ただ、生活保護を受けている人は借金はしてはいけないことになってるそうなんだけど、それじゃ生活できないじゃない。そういうことも行政には考えてもらいたいよね」

 確かにバラエティに富んだ住人である。


■新旧住人の声


 かつてこのアパートに暮らしていたという、人材育成を業務とする(有)ヒューマン・ギルドの岩井俊憲氏が懐かしそうに語る。

「私が住んでいたのは50年前ですけどね。大学3、4年の時だから、1968年から70年3月に卒業するまで住んでいました。4畳半一間で、当時すでに築30年くらいだったと思いますよ。アパートの玄関を入ると横長のタタキがあって、その両側に下駄箱。正面に広い階段があってね、そうそう、新選組の池田屋の階段落ちみたいな。一階の玄関横には住み込みの管理人がいました。当時の学生は電話なんか持ってないから、管理人さんにかかって、呼びに来てくれた。トイレは共同で、風呂は近所の銭湯に行ってました。私は2階北側の部屋だったと思います。部屋には水道と一口のコンロ、押し入れがあったかなあ、あとは畳だけ。大学が近かったので、たまり場になっていましたね。8人ぐらいで寝たこともありましたよ。住人は同じ大学の学生ばかりでしたが、下の階には別の大学の学生もいて、仲良くなりましね。『同期のサクラ』に使われているそうですね。高畑さんでしょ、彼女の雰囲気に合ってる気がしますね、なんか昭和の匂いを感じるから……」

 現在の南栄荘はどうなっているのか、行ってみた。扉を開けると、横長のタタキ、その両脇の下駄箱は岩井氏の言ったとおりで、かなりの年代物。真正面に広い階段があるが、2階までまっすぐではなく、途中から左右に分かれる、洒落た作りだった。住人に声をかけてみた。

「もう30年くらい住んでるよ。昔は学生寮みたいなアパートだったというけどね。今は年寄りばっかり。建物は全然変わらないね。今も畳の四畳半さ。何で住んでるって?そりゃ家賃が安いからだよ」

 そこへ、裸に腰にタオルを巻いただけの住人が通りかかる。

「裏にコインシャワーがあるんだよ。ちゃんとお湯も出るから便利なんだ。ここは街からは近いけど、静かだし、立地はいいんだよね。ただまあ、古くて汚い」

 結構、ドラマのロケに使われていることはご存知だろうか。

「もちろん知っているよ。ロケの時にはお知らせもあるし、撮影中は玄関使えないからね。今は『同期のサクラ』っていったっけ? 玄関前に柱を立てたり、二階に段ボール張ったりして、見かけを変えてるんだよ。ドラマはあんまり面白くねえなあ。それよりさ、去年放送したやつ、何ていったけ?」

 どうやら「花のち晴れ」のことを言いたいらしい。

「そうそう、あれでさあ、このアパートの名前、北名荘(きたなそう)って看板つけてたの知ってる? あれはカチンときたね。そりゃあさ、汚いアパートだけど、人に言われると頭にくるんだよなあ」

 80年にわたり愛されてきたアパートである。業界の皆さん、くれぐれも失礼なきよう。

週刊新潮WEB取材班

2019年11月27日 掲載

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