海老蔵が進める「歌舞伎界の働き方改革」に松竹社長が困惑

海老蔵が進める「歌舞伎界の働き方改革」に松竹社長が困惑

市川海老蔵

 来年の初春歌舞伎の初日が1月3日と発表された。年明けの舞台は2日からが慣例だったが近年は1日遅くなっている。聞けば、これは市川海老蔵(42)が推し進める働き方改革の影響という。実際のところはどうなのか。知らざあ言って聞かせやしょう――。

 かねて海老蔵は、興行日数を短くしたり休演日を設けるよう提言してきた。今年7月のブログでは、自らが中心の舞台で半日休みを導入したことを明かし、

〈風邪ひいていようと 声が出なくても 具合悪くても 場合によっては 歯医者さんや病院も行けない月が数カ月続くこともある、これは良くない(中略)私は 変えないといけない、そう思います〉

 と訴えていた。それゆえに、来年、東京・新橋演舞場での初日が3日となったのか。演劇評論家の上村以和於(いわお)さんが語る。

「海老蔵さんの要望を興行側の松竹が受け入れたからかもしれませんね。時代の流れもありますし。基本的に歌舞伎は一つの興行が25日ほどで、昼夜公演があるので主演は体力的にキツい。でもお客さんのために多少具合が悪くても舞台に立つんです。しかし最近は、国立劇場が役者の負担を減らすために休館日を設けるようになりました」

 スポーツ紙の芸能担当記者によると、こんな事情も。

「来年5月、海老蔵は歌舞伎界トップの名跡・十三代目團十郎を襲名します。その披露公演やグッズ販売などで10億円以上の売り上げが見込まれている。松竹は、いま海老蔵の機嫌を損ねるわけにはいかず、彼の意向を汲んだのだと思います」


■稽古や舞台の準備


 いずれにしても、昨今の働き方改革の波は、梨園にも及んでいるのだろうか。ズバリ、松竹の迫本淳一社長に尋ねてみた。

「たしかに海老蔵さんはそうおっしゃっていますが、3日が初日となったのはその声を全面的に受け止めた結果ではありません。お客さまが第一ですから、演目が新作や久しぶりの作品の場合には稽古や舞台の準備に時間をかけなければいけない。日程は、そういう判断で決まっているのです」

 日程変更が改革との発想は少しピントがズレているようだ。迫本社長が続ける。

「松竹社員と役者さんは、雇用関係と契約関係とで根本的に違います。社員は勤務時間が超過しないようにはしています。一方、契約して舞台に立っていただく役者さんの出番の数は、公演ごとに話し合って決めているわけです」

 役者にとっての“勤務時間”は、体力的に厳しければ昼夜公演どちらかの出演にしたりダブルキャストにして負担を分散するという。

「私自身はむしろ、もっと働かせてほしいという役者さんが多いように感じていますけどね。ここからは一般論ですが、役者さんが松竹関係の仕事をするのは1年のうち約8カ月。残り4カ月で好きなことをする形です。人気の高い方になると、松竹の仕事は年に4カ月から5カ月ほどで、それ以外が個人の仕事。そちらをセーブすればいくらか休めると思うんです」

 働き方改革を推進する海老蔵が、反対に、働き方改革をうながされた格好か。

「週刊新潮」2019年12月5日号 掲載

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