「水ダウ」クロちゃんは行き過ぎた演出 視聴者を向いて番組作りをしないスタッフの罪

「水ダウ」クロちゃんは行き過ぎた演出 視聴者を向いて番組作りをしないスタッフの罪

クロちゃん

■アイドルとして幸せなデビュー?


 タワーレコード オンラインは12月18日、「『水曜日のダウンタウン』連載企画『MONSTER IDOL』より結成!〈豆柴の大群〉デビューシングル【タワレコ限定発売】」のプレスリリースを公式サイトに掲載した。

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 この「豆柴の大群」はアイカ(20)、ナオ(20)、ミユキ(19)、ハナエ(18)の4人組アイドルグループ。リリースにある通り、バラエティ番組「水曜日のダウンタウン」(TBS系列・水曜・22:00)から誕生した。

 ご存知の方もおられるだろうが、「水ダウ」がアイドルを目指す女性に密着した企画で、演出は“炎上戦略”を採用している。それが功を奏し、豆柴の大群はデビュー時から高い知名度を獲得した。しかし賛否両論も入り乱れる事態となっている。

 SNS上では番組への批判が大半で、豆柴の大群に嫌悪感を示す投稿は皆無だ。とはいえ、こうした売り出し方がアイドルグループにとって幸せなスタートなのかは疑問だろう。

 デビューまでの経緯を振り返りたいが、まずはタワーレコードのプレスリリースを元に、重要な点をご紹介しよう。

◆アイドル好きで知られる安田大サーカス・クロちゃん(43)がプロデュース。

◆メンバーの選定から作詞・作曲・衣装イメージ・グループ名の命名などすべてをクロちゃんが手掛ける。

◆「続行」「解任」「解任&罰」の3タイプでシングルが発売され、どのタイプが売れるかによって、クロちゃんの今後の進退が決定する。

◆12月19日〜24日の売上に応じて決定し、12月25日の生放送で発表される。

 たとえ番組を見ていない方でも、プロデューサーのクロちゃんに対する「解任」や「解任&罰」という文言を見れば、何かきな臭いものを嗅ぎ取るだろう。そもそも「水ダウ」という番組は、これまでに数々のトラブルを引き起こしてきた。

 昔なら「8時だヨ!全員集合」(TBS系列:1969〜1971年/1971〜1985年)を筆頭として、「低俗番組」や「子供に見せたくない番組」と批判されるテレビ番組は少なくなかった。

 だが近年はテレビ局のコンプライアンス意識が高まったためか、はたまた視聴者が高齢化したためか、世の良識派の眉をひそめさせるような過激な番組はすっかり姿を消してしまった。

 そんな中、「水曜日のダウンタウン」は、今のテレビ業界で唯一と言っていいほど、様々な騒動を引き起こしている。改めて振り返ってみよう。


■トラブルの多いクロちゃんの企画


 最初に注目を集めたトラブルは2015年1月、福袋に関するコーナーで発生した。都内にある100円ショップの福袋を「1つも売れなかった」と放送したが、実は10袋が完売していた。さらに兵庫県内にあるブックオフの福袋について「買うヤツはどうかしている」などと中傷した。

 放送後に番組内で複数回の謝罪を行ったほか、TBSの社長が定例会見でも不適切な演出だったと認め、やはり謝罪を行った。

 次は16年3月、ドラマの「水戸黄門」(TBS系列・1969〜2011年)で使われている印籠が、今でも水戸市で効果があるかを検証するという企画で問題が発生した。

 灰皿のない場所で喫煙していた若者グループに対し、「助さん格さん」役の2人が印籠を出しながら注意したのだが、若者たちは激昂して罵声を浴びせたのだ。

 ところが、彼らはエキストラだったことが判明。これに水戸市は「虚偽」と抗議し、BPO(放送倫理・番組向上機構)に意見書を提出した。BPOは「放送倫理上の問題はない」と結論づけたが、やはりTBS社長が水戸市に謝罪を行った。

 同じ年の5月には、クロちゃんをマンションの一室に監禁。ツイートだけを頼りに居場所を探し当てる企画の撮影が行われたが、ネット上で誤情報が流布。無関係だったマンションが番組に抗議したことから、6月に撮影の中止を発表、謝罪も行った。

 18年5月にはJR恵比寿駅の路上で、お笑い芸人のナダル(34)が連れ去られる様子を撮影。本当の犯罪だと誤解した通行人からの110番通報が相次ぎ、警視庁渋谷署が捜査を開始する事態に発展する。結局、ロケだと把握した渋谷署は番組に対して厳重注意を行った。こちらもTBS社長が定例会見で謝罪している。

 そして昨年12月には、またまたクロちゃんを都内の遊園地「としまえん」で檻に入れた状態で公開。番組で「みなさんぜひとも来てください」「オールナイト、入場無料」などと呼びかけると視聴者が殺到。練馬署などに周辺道路の渋滞や騒音をめぐる通報が相次いだため、企画は中止となった。

 5件のうち、2件にクロちゃんが関わっている。こんな“前科”を持ちながら、今年11月からクロちゃんによる「MONSTER IDOL」の企画が始まったわけだ。テレビ担当記者が説明する。

「16人の候補者を集め、4人に残るまでふるいにかける様子が放送されました。特筆すべき点は、クロちゃんが男性としての下心を全く隠さなかったところです。そもそもクロちゃんのゲスな恋愛観を浮き彫りにした『MONSTER HOUSE』が話題だったため、続編のような格好で『MONSTER IDOL』がスタートしたという経緯があります」

 ちなみに、「MONSTER HOUSE」での罰ゲームが、先にご紹介した「としまえんの檻に、クロちゃんを入れて公開」だった。それこそ「良識派の眉をひそめさせてやる」という逆ベクトルの意気込みがあったのだろうか。

「アイドル誕生を密着して追うはずの企画に、クロちゃんの腐りきった性根も明かされていくわけで、面白い企画であることも確かでした。『オーディション番組のパロディとして最高』と評価する視聴者が存在したことも事実です。とはいえ、『セクハラやパワハラが横行しているだけの企画』と不快に感じた視聴者も少なくなかったと思います」


■松本や浜田も困惑


 特に12月4日の放送は話題となった。クロちゃんはカエデ(20)とナオ(20)という2人の女性に恋愛感情を抱き、2人も「男性としても魅力的」と口を揃えていた。

 だがクロちゃんは「自分がプロデューサーだから、2人は調子のいいことを言っているのではないか」と疑い、アイカを“スパイ”に仕立て上げた。

 アイカが調査すると、ナオの二面性が発覚。クロちゃんが「自分に恋愛感情を持っていると言うのは嘘だろう。全部分かっているぞ」と詰問すると、ナオは泣き出してしまう。

 だが詰問の結果、ナオや他の候補者にもアイカのスパイ疑惑が浮上する。彼女たちが問いただしていると、そこにクロちゃんが登場。スパイの存在を認め、候補者たちに「嘘をつくヤツは入れたくない」と説教を始めるのだった

 だが、すぐテレビ画面に「このあとクロちゃんの行き過ぎた言動があったため一部シーンをカットしてお送りします」とのテロップが表示。候補者たちが泣き崩れる場面が映し出されたことから、ネット上では「どんな言動だったんだ」と注目を集めた。

 一事が万事、こんな具合だ。一応はアイドルが誕生するまでを密着するという体裁を取っている。しかしながら実際は「クロちゃんはどれだけクズか」を呆れながら眺めるという企画になっていた。

 こんな演出に反感を抱く視聴者は少なくないだろう。いや、出演者も手放しで喜んでいたわけではない。ゲストだけでなく松本や浜田もVTRを見ながら困惑の表情を浮かべたり、「それは違うやろ」と不満を漏らしたりすることが定番となっていた。

 12月18日に放送された回では、たむらけんじ(46)が「MONSTER IDOL」の冒頭で「浜田さんの大好物」と言い、浜田も同意するように拍手する様子が流された。しかしVTRが終わると「疲れるわ!」とツッコミを入れたのだ。

 この日は「1番のお気に入り」とクロちゃんが公言していたカエデを落選させるという意外な展開でも話題を集めた。おまけに理由を「本当に好きになったから」とし、「アイドルに手を出すわけにはいかないから落選させ、告白して彼女にする」と説明した。

 これにはスタジオも「はるか上を行く最低度」と批判の嵐だった。最後にクロちゃんが登場すると浜田が無言でビンタ。この企画が浜田にとっても不快感すれすれであることが浮き彫りになった。


■視聴者は“眼中にない”スタッフ!?


 ツイッターで「モンスターアイドル パワハラ」と検索してみると、批判のツイートがずらりと並ぶ。(註:引用時はデイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)。

《今更だけど水曜日ダウンタウンのモンスターアイドル見たけど胸糞悪すぎる。女性をおもちゃにしか思ってないし、セクハラ、パワハラ、差別を詰め込んだ番組》

《モンスターアイドルただのセクハラとパワハラのオンパレードで恐怖》

《モンスターアイドル見てると、うちの店長とクロちゃんが同じで気持ち悪い。パワハラ、女性への発言が気持ち悪い》

《BPO仕事してください ヤバ過ぎるでしょ セクハラ三昧パワハラ三昧ですよね 観てて気分悪いし、さすがに笑えないわ》

「かつての低俗番組と言えば、『金曜10時!うわさのチャンネル!!』(日本テレビ系列・1973〜1979年)や、『コント55号の裏番組をぶっとばせ!』(同・1969〜1970年)を思い浮かべますが、いずれも高視聴率でした。人気番組に良識派が噛みつくから議論の広がりがあったのです。しかし『水ダウ』はビデオリサーチが調べる関東地区の視聴率でも、録画予約の視聴率でもランクインすることは滅多にありません。何のためにわざわざ顰蹙を買う番組を制作しているのか、理解に苦しむという批判もあります」(同・記者)

 民放キー局でバラエティ番組の制作に携わるスタッフは、「個人的には面白いと思いました」と評価しながらも、「やはり、あの内容ではBPOに審査されてもおかしくないレベルだと思います」と指摘する。

 TBSでは今年9月、「クレージージャーニー」と「消えた天才」で、やらせなどの不適切な演出が発覚。定例会見で社長が謝罪し、10月に2番組の終了を発表した。

「やらせ問題で、TBSは全社をあげて反省したはずです。にもかかわらず、『水ダウ』で、これほどギリギリを攻めた企画を放送するのですから、本当に大丈夫なのだろうかと心配になるほどです。ただ、『水ダウ』の問題は簡単で、スタッフがダウンタウンのお二人を笑わせることだけに懸命で、視聴者を向いて番組を作っていないため、こんな企画が放送されてしまうんです」

 気がつけば、ビートたけしは72歳、明石家さんまは64歳、そして松本人志と浜田雅功は56歳。若いディレクターやプロデューサーにとっては“祖父”という存在に近い。子供の時からテレビで見ていた芸人が、いまだに現役で働いていることになる。彼らにとっては、まさに雲の上の人だ。

「大御所ですから『一緒に面白い番組を作りましょう』なんて雰囲気になるはずもない。『水ダウ』のスタッフなら『とにかく松本さんに笑ってもらいたい』ということしか考えてないでしょう。また不思議なことに、どんなに酷い企画でも、ギャラが安くても、必ず出演者も見つかります。こんな背景から、『水ダウ』は今も放送が続いているというわけです」

 このスタッフ氏によると、“ご意見番”を務めるべき松本はパネラーを務めているため、事前にVTRを見ていない可能性があるという。それが事実なら、浜田の“良識”が頼りというわけだ。

 こうして、いよいよ豆柴の大群がデビューするのを待つばかりとなったわけだが、ネットメディアでは新しい“トラブル”が報じられている。「クロちゃんプロデュース『豆柴の大群』CDがメルカリに大量出品の残念度!」(アサ芸プラス:12月19日)という記事だ。

「デビューCDは『続行』、『解任』、『解任&罰』の3種類が制作され、最も売れ行きがよかったものがクロちゃんの未来を決めます。当然、少なからぬ視聴者が『解任&罰』という展開を期待しているようなのです。おまけに、そういう目的で購入した層はデビュー曲自体には無関心です。CDを買うことで“投票”を済ませたら、いらなくなったCDはメルカリに売ってしまうという記事内容でした」(前出の記者)

週刊新潮WEB取材班

2019年12月22日 掲載

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