「秋ドラマ」13本総点検 辛口コラムニストが珍しく泣いた希少な作品は?

「秋ドラマ」13本総点検 辛口コラムニストが珍しく泣いた希少な作品は?

「同期のサクラ」主演の高畑充希

 レーワ元年〆の第4コーナー、10−12月期の連ドラも続々と終わりつつあります。というわけで、さぁ参りましょうか、四半期プライム帯民放ドラマ駆け足総まくり!

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 ……とカラ元気だしてみたものの、おしなべて低調だったなぁ、今クールも。師ならぬ身でも皆さんドタバタ走り回る忙しい年末ゆえ、語るに足らない作品(未満の何かも含む)及び、すでに充分語ってきた作品(以上の何かも含む)、計5本については、ココでタイトルと一言コメントだけ並べて「処理済み」印を押させてもらっちゃいます。

●「ハル〜総合商社の女〜」[テレ東系/月曜10時〜]
 ワーキング&シングルマザーものにして商社モノという虻蜂&蠅取らず物件。実は企画も脚本もアリっちゃアリだったのに、主人公の中谷美紀が働く独母にも商社ウーマンにも見えなかったのが痛い。「ドラマBiz」枠は1−3月期の「よつば銀行」でも、真木よう子に「女・半沢直樹」、あるいはエージングの進んだ「花咲舞が黙ってない」を演らせようとしてコケた前科持ちで、主演女優選びが下手すぎ。というより、選んですらいないんじゃないの?

●「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」[テレ朝系/木曜9時〜]
 今シーズンは「平均視聴率が20%に届かないんじゃないか」と騒いでる人たちがいるけど、今まで20%を超えてたことこそ騒いだほうがいいでしょ、このシリーズ。「土曜でもなければワイドでもない土ワイ」としてよく出来てるのは確かだけれど、それ以上の何物でもないことに、ようやく世間も勘づいてきたってことか。今期は、ギャラの高そうな助演陣の出番が減って、それは主演の米倉涼子の取り分が高騰しすぎたからって見方も出てますが、役者でもセットでもケチったら即、リアル土ワイに転落っていうドラマだったからね、元々。

●「特命刑事 カクホの女2」[テレ東系/金曜8時〜]
「ドクX」と「ハル」の駄目さを足して2で割らず、むしろ3を掛けた出来。「土曜でもなければワイドでもない土ワイ」、さらにはテレ朝系ですらない。同じ1990円のシャツでも、まだそれなりに手間とコストを掛けたユニクロのシャツと、紳士服チェーンの投げ売りコーナーのシャツは違う。ドラマへの本気や危機感を一切感じさせない点には、ある意味、感心させられました。

●「相棒 season18」[テレ朝系/水曜9時〜]
「土曜でもなければワイドでもない土ワイ」だった時代は過ぎ去り、今期は右京さんの相棒も変わらず、左派の憂国路線も変わらず。安心安全&安定を声高に唱える詐話師が増える一方の今日このごろ、高いレベルで安心安全&安定、かつハラハラもできればスカッともできる長寿ドラマが見続けられることは、一服の精神安定剤です。

●「科捜研の女 Season19」[テレ朝系/木曜8時〜]
「相棒」以上の古株(スタートは1年早い1999年!)でありながら、中身はいまだに「土曜でもなければワイドでもない土ワイ」でありつつ、今のシーズンは平成末年度から令和初年度を駆け抜ける通年放送でもあって、形の上では「NHKでもなければ歴史モノでもない大河」という面さえあり。古きが故に尊からず、長きが故に尊からず、安きが故に尊からず。駄菓子を超えた爺婆菓子(爺ちゃん婆ちゃんのウチの茶の間の炬燵の上の菓子入れにいつも入ってる定番菓子だが孫子は喰わない)の趣き。


■日テレの変態ラインナップ


 続いて今度は、コメントが2段落に増えるくらいに語ることのあった4本。

●「シャーロック」[フジ系/月曜9時〜]
 留学先の英国で食べたビーフシチューを日本に戻った後に東郷平八郎が帝国海軍向けに再現させたのが肉じゃが……って話はどうやら眉唾らしいとして、このドラマがつくられると知ったときに頭に浮かんだのが、このエセ蘊蓄。で、放送が始まってみたら食卓に供されたのは、もちろんシチューではなく、でも、肉じゃがでさえなかった。

 和製ホームズのディーン・フジオカは、ま、ビーフじゃなくてチキン程度だろうなと予想してた自分は褒めてあげたいけれど、和製ワトソンのEXILE岩田に芋レベルを期待していた自分は叱り倒したい。彼が大根、それも青臭い青大根であることは既知衆知だからね。結果、ビーフシチューでも肉じゃがでもない鶏大根、それが和製「シャーロック」でした。「和製ナニナニ」に傑物なし。

●「まだ結婚できない男」[関西テレビ制作・フジ系/火曜9時〜]
 初回から最終話までそれなりに楽しく見ていたので、世に失敗作という評が多いことは残念だけれど、理解はできる。オリジナルの「結婚できない男」(2006年)は全話平均の数字が16・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)で最終回が22・0%っていう成功作ゆえ比べりゃ劣りするのは仕方ないとして、ただ、ドラマとしてのつくりが今回そこまで“ど劣化”してるとは思えない(実際、タイムシフト視聴率≒録画率はけっこういいんです)。

 じゃ、なんで続篇はフツーの世帯視聴率で10%割れに終わったかを考えてみるに、変わり者で毒舌屋の中年建築家が主人公の恋愛コメディーという枠組みが、今の空気にそぐわなかったのかなぁ。13年前よりずっとニッポンは疲れて、老いて、貧しい国になっていて、高等遊民を演じる阿部寛のトンチンカンを笑い、愛する余裕がなくなったか。結果、「喜劇=悲劇+時間」っていう作劇の公式が引っくり返り、このシリーズの場合、「喜劇+時間=悲劇」になっちゃった。阿部ファンとしても残念至極。

●「ニッポンノワール─刑事Yの反乱─」[日テレ系/日曜10時30分〜]
 日テレの「日曜ドラマ」枠は年明けから所管が読売テレビに移るそうで、この作品が日テレ制作最後の「日曜ドラマ」。だからなのか、この枠で日テレのドラマ関係者がやりたかったこと、やり残したことを集めてブチ込んだような、ドロドロに濃くて具材が山盛りの二郎系あるいは家系のラーメンを思わせるドラマでした。「喰える奴だけ喰え!」ならぬ「見れる奴だけ見ろ!」。

 そういう挑戦を喜んで受け入れる胃袋の強靭なドラマ狂が現在ただ今のニッポンにさてどれだけいるか。その答えを探るというマーケティング上の目的があったんじゃないかとさえ勘ぐれるくらい、ブッ跳び暴れ回り駆け抜けた作品でしたが、最終回の視聴率は全話最高の8・1%を記録。これは制作の日テレや主演の賀来賢人だけじゃなく、連ドラ愛好家の皆さんにとっても悪くはない結果だったかと。

●「俺の話は長い」[日テレ系/土曜10時〜]
 1時間枠で2話、呑気な短いエピソードが流れるつくりは、まるで深夜ドラマの2本立て上映。考えてみりゃ、1時間ドラマは、YouTube慣れした世代には大長篇だし、CM枠で話が何度もブチ切られるのは、YouTube見ない世代にもツラい。日テレが「俺の話は長い」で試みた実験は、視聴しての主観でも、視聴率や批評を眺めての客観でも、決して失敗じゃなかったと思います。もひとつ考えてみりゃ、平成の深夜ドラマだけじゃなく昭和の名作ドラマにも、30分モノがいくらでもあった。

「ニッポンノワール」が映画をTVに持ってきた系の異物なら、「俺の話は長い」は深夜ドラマをプライム帯ドラマ枠に持ってきた異物。今の日テレのドラマ責任者には異物挿入癖でもあるのかねと嬉しくなっちゃう変態ラインナップで、ノーマルプレイじゃ連ドラはもう駄目なんだという危機感が犇犇(←「ひしひし」って、こう書くんだそうな)。爪の垢を煎じて飲ませたら、冒険心極薄のお台場の同業者は引きつけ起こすかも。


■「同期のサクラ」は泣けた


 そしてラストは、3段落も書くことが見つかった作品群。これまたコメントが長いから褒めてるというわけでもないので、悪しからず。

●「G線上のあなたと私」[TBS系/火曜10時〜]
●「モトカレマニア」[フジ系/木曜10時〜]
●「4分間のマリーゴールド」[TBS系/金曜10時〜]

 出揃ってきた視聴率で見ると「G線」と「マリーゴールド」が7%台、「モトカレ」が4%台で、全艦そろって轟沈の沈没の艦隊。ワタシに言わせりゃ出撃前から水面下の潜水艦隊でしたが、放送が始まってからも浮上せずでしたね(原潜か!)。「G線」と「マリーゴールド」は録画率が悪くないという言い訳も聞こえてくるけれど、だからスポンサーも我慢してますって話は耳にしません。

 で、この3本の共通点は、どれも原作がコミック、それも少女漫画じゃない大人向け漫画であることで、特に出来がひどかった「G線」と「モトカレ」の原作は「Cocohana」と「Kiss」連載のF1層(20〜34歳の女性。含む自称自任)向けコミック。知り合いの漫画編集者に言わせると、「あの分野の原作はもう掘り尽くされちゃってるでしょ」とのことで、その理由は「昔っから才能が集まるのは、少年誌、青年誌、少女誌で、それ以外は元々タマが少なめ」だから。

 一方、「モトカレ」と「マリーゴールド」が沈んだ大きな理由は看板女優のキャスティング。新木優子が主演です、主人公は菜々緒ですと啖呵切られたところで、「押しの強い事務所ですね」「押しに弱い局ですね」以外の感想が浮かびません。そのあたりのお姉ちゃん連と「G線」主演の波瑠を一緒にしちゃ悪いような気もするけど、彼女もここのところ出演作のチョイスが滑り続け。事務所は連ドラ主演の椅子取りゲームに、局は連ドラ主演のショバ売り商売に精を出すなか、出演者と視聴者とのマッチングは忘れられたままです。

●「同期のサクラ」[日テレ系/水曜10時〜]
 10−12月期、見てて涙が流れたのは、この「同期のサクラ」だけ。2017年の「過保護のカホコ」と同じ脚本・遊川和彦、主演・高畑充希、プロデュース・大平太というチームの再結集作(しかもワタシの苦手な黒木瞳は出ない)だけに、放送スタート前から期待していて、それが裏切られなかったという点でも稀少な1本でした。

 恋愛の気配もありつつのお仕事ドラマ、洒落っ気ゼロで不器用で眼鏡の奥の座った眼が一途な女の子という、いつもの高畑キャラ……などと括ってしまうと、すでにあった作品の焼き直しに思えるでしょう。が、主人公の高畑は基本、意識不明で病院のベッドに伏せたまま、脇のキャラクターたちの回想で物語は進み、高畑がなぜ寝たきりなのかもなかなか明かされないという凝った構成が効いて、話にも高畑にも飽きることがない。離島出の高畑が東京の土建屋に就職して故郷の島に橋をかけようと奮闘するという、なんだか昭和臭い設定がまた、今どきの現実世界の若い人たちの可哀相なくらいの真面目さに釣り合っているのもいい。

 視聴率は初回が8%台だったものの、その後だんだん上がって全話平均はなんとか2桁に届いた。続篇なり同じチームによる新作なりに続いていけそうな数字でひと安心ながら、難解でもなければ、とっつきにくくもないドラマだっただけに、もうちょっと伸びてもよかったんじゃない? ……と心では思ってはみたものの、頭で考えてみれば、この作品を自分たちの話だと受け止める独身・就職10年目未満くらいの世代は、もはや連ドラを見ない層。実際にTVに齧りついてたのは、「ああ、自分たちも昔はこんなに熱く仕事してたよねぇ」という60代以上のリタイア世代だったか?

 そのあたりを意識したのか、ドラマ内でも高畑に両親はなく、祖父の津嘉山正種に育てられたという設定。このふたりの交流がまたよかったゆえ、高畑は今度のドラマで、朝ドラの「とと姉ちゃん」以来ちょと久々に、「お孫さんにしたい女優ナンバーワン」に躍り出たのかもしれません。

 ……あ、「同期のサクラ」には4段落もコメントしちゃったけれど、いいと感じた作品について長く語れるのは嬉しいもんです。一方、今クールのプライム帯民放連ドラでは唯一、あの「グランメゾン東京」(TBS系)に触れてなくて、でも、それはすでに別の記事で延々と嘆き、残念がり、もったいながってみせてるから。よろしければ、そちらもどうぞ。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999〜2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月25日 掲載

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