アニメ「シンカリオン」は放送終了後も人気堅調 TBSは打ち切り時期を見誤ったか

「アニメ放送の終了後も、プラレールの売り上げが放送前に戻ったということはありません。11月21日からは劇場版に登場する新しいシンカリオン『ALFA−X』も発売が始まり、売り上げは引き続き好調です」と力を込めるのはタカラトミー広報課の担当者だ。

 2018年1月からTBS系列で放送が始まったアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION」(以下、シンカリオン)は、JR東日本の子会社であるジェイアール東日本企画が全面協力したほか、アニメや関連玩具の制作に協力する小学館集英社プロダクション、玩具の制作・販売を手がけるタカラトミーなどが委員会を結成。委員会の各社が一丸になってプロジェクトを進めてきた。そうした成果もあり、テレビ放送開始後は瞬く間にチビっ子たちを虜にした。

 シンカリオンは、主人公が新幹線型のロボットに乗り地球の平和と安全を守るために巨大怪物体に立ち向かう物語。作中には、主人公が乗るE5系をはじめ、実在する鉄道車両が次々に登場。各社の協力体制が奏功して、シンカリオンは高いクオリティを実現。これが、チビっ子やアニメファンだけではなく、口うるさい鉄道ファンをも魅了した要因とされる。

 シンカリオンの特筆すべき点は、ターゲット層とされていた未就学児童や小学校低学年の男児だけではなく、大人からも幅広い人気を得たことにある。それだけに、鉄道業界からも台風の目として注目されていた。

 さらに、オリジナルテレビアニメ「エヴァンゲリオン」ともコラボして話題を呼び、それまでシンカリオンに興味を抱いていなかった層からも人気を獲得。シンカリオン人気は衰えを知らなかった。

 玩具の販売を手がけるタカラトミーは、アニメ放送前からシンカリオン関連の玩具を発売してきた。しかし、アニメ放送開始直後は驚異的に売り上げが増加する。タカラトミー広報課の担当者は、「年別の売り上げは公表していませんが、2018年1月に地上波アニメの放送が始まってから売り上げは伸びました」と興奮気味に語る。

 アニメ放送開始からシンカリオンの快進撃は続き、長寿番組化するとの雰囲気が支配的になっていた。しかし、アニメを放送していたTBSが2019年6月末にシンカリオンの打ち切りを決定してしまう。TBSの突然の発表には、チビっ子のみならず多くの鉄道ファンやアニメファンが衝撃を受け、そして落胆した。

 シンカリオンの制作委員会関係者が内情を説明する。

「シンカリオンはジェイアール東日本企画とコラボしていることもあり、実在するJR東日本の新幹線がたくさん登場します。これがヒットの要因であることは言うまでもありませんが、東日本が他社にも呼びかけてくれたことで北海道・東海・西日本・九州など企業間の垣根を超えた協力体制が築かれました。これもヒット要因です。各社の新幹線が登場するようになり、それがストーリーのバリエーションを広げることになりました。そのため、制作陣の一部からは『今後は私鉄の車両を登場させるのも面白いのではないか〜』という意見も出ていたほどです」

 今後の展開が話し合われていた理由は、なによりも劇場版「新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X」の存在が挙げられる。劇場版は12月27日に公開されるが、TBSが打ち切り決定の発表をした時には、すでに劇場版の制作が大詰めを迎えていた。いわば、TBSの放送打ち切り決定は劇場版に水を差す行為でもある。

「劇場版をヒットさせるためには、アニメ放送を継続して話題性を維持しなければなりません。シンカリオンは子供から大人まで幅広いファン層に支えられていますが、やはりチビっ子たちが基礎票です。テレビ放送を継続することで、この基礎票をつなぎ留めることが劇場版をヒットさせることにもつながります。TBSは劇場版にも協力しているのに、地上波のアニメ放送を打ち切るなんて考えられません」(前出・委員会関係者)

■アニメ終了後も人気


 シンカリオンは早朝に放送しているということもあって、実のところ視聴率はそんなに高くはない。しかし、最近はリアルタイムではなく、タイムシフト視聴で見ているファンも多い。テレビ番組の人気は単純にリアルタイム視聴率だけで測れなくなっている。リアルタイム視聴率だけで番組を評価することは時代遅れになりつつある。しかし、TBSはリアルタイムで視聴率を取れる番組を欲した。また、2020年に東京五輪が開催されることもあり、TBSは五輪の機運醸成に寄与する番組に変更したかったという思惑もあった。

 TBSの地上波放送打ち切りに対し、委員会が面白く感じるわけがない。特に、地上波アニメ放送をきっかけに、玩具の売り上げを急増させたタカラトミーにとって地上波アニメ放送の継続・打ち切りは死活問題でもある。

「プラレールとトミカは、タカラトミーにとって男児向けの主力商品です。これらのボリュームゾーンは未就学児童です。なぜなら、小学生ぐらいになると大半の男児は戦隊モノに興味を抱くようになって、プラレールやトミカから卒業してしまうのです。この小学校の壁がひとつの悩みだったわけですが、シンカリオンがプラレール離れを防ぐ役割を果たしました」(前出・委員会関係者)

 いまや小学校高学年男子の間でもシンカリオンは絶大的な人気になっている。シンカリオンの爆発的な人気は、期せずしてプラレールの対象年齢を小学校高学年まで広げた。

 少子化の影響で玩具メーカーに暗雲が立ち込める中、シンカリオンはターゲット層を拡大させ、そして売り上げ増という福音をもたらした。しかし、シンカリオンがもたらした効果はそれだけにとどまらない。

 小学校4、5年生まで鉄道に対する興味を持ち続ければ、その後はNゲージなどの鉄道模型へと移行する可能性も高い。タカラトミーには、鉄道模型を販売するトミーテックといった系列会社もある。シンカリオンによって、プラレール・シンカリオン・Nゲージと切れ目のない販売戦略を確立させたことはグループ全体に貢献している。それだけに、シンカリオンの地上波放送打ち切りの影響は無視できない。

 TBSが地上波アニメ放送を終了したことで、シンカリオン人気は急落すると思われた。ところが、その後もシンカリオン人気は堅調だ。

 京都府京都市にある京都鉄道博物館は、地上波のアニメ放送が終了した後の7月20日から9月10日まで「新幹線変形ロボ シンカリオン×京都鉄道博物館2019スタンプラリー」を開催。京都鉄道博物館は劇場版が公開される直前の12月16日からも「新幹線変形ロボ シンカリオン360°サ?・ムービー」といったイベントを実施。シンカリオン人気にあやかった企画を連発している。

 また、JR東日本も劇場版公開に合わせて11月27日から翌年2月24日までの期間中に「劇場版『新幹線変形 ロホ? シンカリオン』スタンプラリー2019-2020in東北」を実施。

 テレビアニメ放送終了後も各地でシンカリオン関連のイベントが続く。そうした状況について訊ねると、タカラトミー広報部の担当者は意味ありげに

「シンカリオンはまだまだ止まりません。引き続き、新商品やファンの皆様にお楽しみいただける企画を用意しています。今後の発表をぜひお待ちください」と回答。

 打ち切りは早計だったと、TBSは後悔しているかもしれない。

小川裕夫/フリーランスライター

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月27日 掲載

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