このメンバーで連ドラにすれば良かったのに…「教場」を褒める自分に自分でも動揺するTVコラムニスト

このメンバーで連ドラにすれば良かったのに…「教場」を褒める自分に自分でも動揺するTVコラムニスト

「教場」(フジ)、「最後のオンナ」(テレ東)、「破天荒フェニックス」(テレ朝)(C)吉田潮

 正月、ドラマの再放送が異様に多かった。ドラマ好きとしては、名作は何度でも再放送ウェルカムではあるが、民放テレビ局はお金があまりないのかと訝しむ。スペシャルドラマも連ドラの続編やスピンオフが多く、想定内の安定感。そこそこ楽しんだが、新奇性はない。そんな中、いろいろな意味で書いておくべきは3作品。

 マイベストは「教場」(4・5日放送、フジ)。白髪に義眼の鬼教官を木村拓哉が演じた。彼が演じる意義があったかどうかはわからんが、(出番の)引き算の塩梅が絶妙(脳内では安田顕を配置)。警察学校の生徒たちの適性を見抜き、心理戦でサイコパスや反社会的思想の持ち主を退校させていく展開が面白かった。

 なんつっても、生徒役が皆、素晴らしかったのだ。出来が悪い上に卑屈で、劣等感をこじらせた林遣都、拳銃マニアの井之脇海。彼らに脅されっぱなしで純粋にも程がある工藤阿須加。自信フル搭載の川口春奈に、勘違い復讐で痛い目に遭う大島優子。特に、警察を憎む優等生・味方(みかた)良介と、実家を継ぐために泣く泣く退校していった富田望生(みう)の熱演が記憶に残った。他の生徒も、全員適材適所の適役。

 計5時間の特番が短く感じるほど濃厚だったし、このメンバーで連ドラにすればよかったのに、と思うほど出色の出来栄え。正直、1ミリも期待していなかったので、こんなに褒める自分に自分でも動揺している。

 もうひとつは「最後のオンナ」(6日放送、テレ東)。寡作の人であり、闘病もしていた藤山直美が帰ってきた。しかもドラマでは本当に久しぶりに姿を見る深津絵里もいる。さらには最近、虫にかまけるか、権威ある顔芸役が多くて、肝っ玉が小さいおっさん役が久しぶりの香川照之(家着のスウェットが超絶ダサい!)。この3人にはまとめて「おかえりなさい!」と叫んだよ。劇中、ジュリーの曲を歌わされるサリーこと岸部一徳も、私の心を鷲掴みに。

 昔TBSで放送した「最強のオンナ」(2014年)や「最高のオヤコ」(16年)の続編ともシリーズともとれる布陣で、私の好物ではある。あるが、年々直美が演じる役の「業」が薄まってきていて、ちょっと不満。もっと濃くてキツいヤツをくれ。ぬるい人情噺なら、他の女優でもできる。直美には直美にしかできない、業の深い女をぜひ。映画「顔」クラスの怪演を!

 最後は「破天荒フェニックス」(3・4・5日放送、テレ朝)。多彩な表情が売りの勝地涼主演が破天荒ときたら、さぞかし破天荒だろうと期待したが、あれ? そうでもない。意外と普通のビジネスドラマにしか見えず。でも、楽しみは見つけた。勝地の相棒・伊藤淳史が銀行の奥田洋平に交渉する場面だ。3夜すべてに登場し、融資を巡って鍔迫(つばぜ)り合いするのだが、このやりとりが妙におかしかった。奥田はイヤミの語彙とジェスチャーが豊富で、言うことは正論。例え話も絶妙で、小芝居まで打って増資を拒む。説得力十分で大笑い。このシーンだけ繋げてスピンオフを。今年も重箱の隅をつつく癖は貫く所存です。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

「週刊新潮」2020年1月23日号 掲載

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