「東京ラブストーリー」が新キャストでリメイク SNSでは賛否両論、プロの意見は?

『東京ラブストーリー』リメイクに懸念も カンチ役は伊藤健太郎、リカ役は石橋静河に

記事まとめ

  • 『東京ラブストーリー』が29年ぶりに復活しAmazon Prime Videoなどで配信される
  • 新キャストのカンチ役は伊藤健太郎、リカ役は石橋静河と報じられている
  • ツイッターでは「リメイクとかやめてくれ。鈴木保奈美にしかリカはできない」と批判も

「東京ラブストーリー」が新キャストでリメイク SNSでは賛否両論、プロの意見は?

■バブル景気を象徴する作品


 フジテレビは1月24日、「『東京ラブストーリー』 配信決定!FOD/Amazon Prime Videoにて2020年春配信予定!」とのプレスリリースを発表した。たちまち大きな反響を呼んだのは、ご存知の方も多いだろう。

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 スポニチアネックスが同日朝に報じた「『東京ラブストーリー』29年ぶりに復活 新キャストは『カンチ』伊藤健太郎、『リカ』石橋静河」の記事は、YAHOO!ニュースのトピックスに掲載された。

 1月30日現在、ニュースに対するコメント数は3800件を超えている。またツイッターでは「新キャスト×東京ラブストーリー」や「カンチ×東京ラブストーリー」がホットワードとなり、関心の高さが浮き彫りになった。

 何しろ原作の発行部数と、テレビドラマの視聴率が図抜けている。柴門ふみ氏(63)が「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で原作の連載を開始したのが1989年。「バブル景気」真っ只中の頃だ。

 小学館が2016年に発表したプレスリリースによると、原作コミックは1巻から4巻まで刊行され、累計の発行部数は250万部を超えているという。

 テレビドラマは91年1月から3月まで「月9」の枠で放送された。全11話の平均視聴率は22・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)、最終回の平均視聴率は32・3%に達した。

 当時の報道を1つだけご紹介しよう。日刊スポーツが3月20日に報じた「フジテレビ 東京ラブストーリー 最終回、視聴率32・3% 大反響!!」だ(註:引用に際してはデイリー新潮の表記法に合わせた。以下同)。

《柴門ふみの原作に人気絶頂の鈴木保奈美(24)主演、小田和正の主題歌「ラブストーリーは突然に」の200万枚の大ヒットも加わり、最近の1時間ドラマでは空前の大成功を収めた》

《東京・河田町のフジテレビ局内は歓声に包まれた。2月末に22%に達した視聴率は3月に入って26%、29%と回を追うごとにうなぎ上り。そして、最終回で念願の30%の大台に乗った。1時間ドラマの視聴率としては同局最高、テレビ界でも歴代10位に入る快挙。低迷が続く1時間ドラマではTBSテレビ「男女7人秋物語」(36・6%)以来3年ぶりの30%番組になった》

 この“お化けドラマ”を約30年ぶりにリメイクするというわけだ。まずは、“新旧比較”をキャストから行ってみよう。表にしたので、ご覧いただきたい。

■ど真ん中直球の恋愛ドラマ


 次の相違点は放送方法だ。91年版が「月9」でオンエアされたのは先に見た通りだが、リメイク版はFOD(フジテレビ・オン・デマンド)とAmazon Prime Videoでネット配信される。

 さらにストーリーも違う可能性があるようなのだが、これについては、少し説明が必要だ。原作と91年度版のドラマに詳しい記者が言う。

「ウィキペディアは原作とドラマの相違点として4点を挙げていますが、とてもそんなものではありません。原作のコミック版とテレビドラマ版は、登場人物の名前とキャラクターは原作通りでも、実際のストーリーは別物と言っていいほど変えられています。そして今回のリメイク版も、大幅に原作と異なる可能性があるのではないかとSNSなどで話題になっています」

 フジテレビのプレスリリースには原作の柴門ふみ氏のコメントも掲載されているのだが、これがなかなか意味深なのだ。

《今回のドラマ化ではキャラクターは活かしつつ舞台は現代ということで、原作にはないスマホやSNSも当然登場することでしょう。東京も随分様変わりしました。スタバもユニクロも無かった時代で、カンチも三上も煙草を吸っていました》

 例えばドラマの第2話は、ちょっとした連絡ミスが原因で、ヒロインの赤名リカが喫茶店で延々と永尾完治を待ち続けるシーンがある。

 原作には存在しない場面で、ドラマにおける名シーンの1つだ。しかし、この設定が現代では成立しないのは誰の目にも明らかだろう。91年の赤名リカ=鈴木保奈美は何度も店内に置かれた公衆電話から連絡を取ろうとするが、今ならスマホで簡単に所在を確認できる。

――と、駆け足で91年版と20年版の比較を行ったが、テレビドラマの“プロ”は今回のリメイクをどう評価するのだろうか。

 81年からテレビマンユニオンでテレビドキュメンタリーやドラマの制作に携わり、2010年には上智大学文学部教授(メディア文化論)に就任した碓井広義氏に取材を依頼し、まずは91年版を総括してもらった。

「バブル景気は91年2月に終わり、『東京ラブストーリー』は1月から3月まで放送されました。オンエア当時、世の中はむしろバブルの絶頂期という状態であり、それはドラマの成功と密接な関係があったと思います。ちなみに当時、私はディズニーランドの近くに住んでいましたが、周辺のリゾートホテルはクリスマスイブになると若いカップルで埋め尽くされました。『どうして若者たちが、あんなにお金を持っているんだろう』と不思議に思ったほどです」

 71年から74年までの間に出生した「団塊ジュニア」は当時、20歳から17歳。日本社会が“若者中心文化”の側面を持ち、いわゆる“恋愛至上主義”の風潮が顕著だった。

「そうした時代を背景に、ど真ん中直球の恋愛ドラマ、青春ドラマとして制作されたのが『東京ラブストーリー』だったと思います。何にも忖度せず、ひたすら恋愛する若者の姿を追った。フジテレビの『月9』だからこそ成立した企画でしょう。原作のコミック版は素晴らしい群像劇ですが、ドラマ版はいわゆる“時代と寝た”魅力に満ちています。主人公とヒロインは会社員ですが、仕事をする場面の印象は乏しく、24時間、恋愛のことだけを考えているようです。ところが、そんな描写が当時の雰囲気とマッチし、視聴者の心を鷲づかみにしたのです」(同・碓井教授)


■月9で放送しない理由


 フジテレビにとっては、その後の“視聴率三冠王”につながったというエポックメイキング的なドラマである。しかし、その一方で、「過去の強烈すぎる成功体験」として局を呪縛し続けた作品でもあった。

「フジテレビの栄光と転落を同時に象徴するという点でも、ある意味で特異なドラマだと思います。そのリメイク作品が制作されると聞けば、少なからぬ視聴者が『そっとしておいてほしい』と思うのではないでしょうか。あまりに時代を象徴しているので、当時の社会情勢と切り離されてしまうことに不安や不満を感じるのかもしれません。故・松本清張の原作ドラマが時代の節々に制作され、いつも一定の視聴率や評価を得ているのとは非常に対照的です」(同)

 ツイッターを見ても、もちろん歓迎する意見もあるのだが、懸念や批判的なツイートも相当な数にのぼる。一部をご紹介しよう。

《東京ラブストーリーのリメイクとかやめてくれー。鈴木保奈美にしかリカはできないよ。思い出を汚さないで》

《東京ラブストーリーのリメイク? あれはあの時代だから共感、感動を呼んだドラマであって、現代の20代の価値観とはかなり異なる》

《東京ラブストーリーを今更リメイクしても無理がある。。今の時代に鍋ごとおでん持ってくる女とかストーカーだから》

《バブル時代の年収いくらだよてツッコミたくなるオシャレなマンションに住みハイブランドな服と濃い目のメイク、家までタクシーで帰る、連絡は公衆電話時代のドラマだからよかったんだよ。所詮リメイクの配信じゃ盛り上がらないよ》(註:句読点を補い、改行を削除した)

 碓井教授の指摘と重なる書き込みが目立つわけだが、それでも碓井教授は「お手並み拝見と楽しみな気持ちもあります」と言う。

「リメイクより新作の恋愛ドラマを見たいという気持ちもあります。『使えるものは何でも使ってしまおう』という話題最優先の姿勢に疑問がないわけでもありません。ですが、あの『東京ラブストーリー』を現在にどう移植するかは、やはり見どころでしょう。特に91年版は登場人物が仕事をしている気配が希薄でしたから、リメイク版で改善されるかもしれません。しっかり働きながら恋愛するという人物像が描ければ、2020年という時代にフィットする可能性もあります」

 フジテレビが動画配信を選択したことは、91年版を“社の宝”として大切に扱っている証左だと指摘する。

「もし『月9』でリメイク版を放送し、視聴率が1ケタになってしまったりすれば、会社の財産を毀損してしまうという意識はあると思います。そして、満足のいく視聴回数になれば、深夜ドラマとしてスピンオフさせるなど、フジテレビも次の計画を練っているでしょう。今、なかなかテレビドラマが視聴者に届かない時代です。動画配信で生まれ変わる“新・東京ラブストーリー”がどういう評価を受けるかは、テレビの将来という観点からも注視する必要があると思います」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年2月3日 掲載

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