「医療モノ」ドラマが多過ぎてちょっとくじけそうなTVウォッチャーのボヤキ

「医療モノ」ドラマが多過ぎてちょっとくじけそうなTVウォッチャーのボヤキ

「トップナイフ」(日テレ系、土曜22時〜)「アライブ」(フジテレビ系、木曜22時〜)「病室で念仏を唱えないでください」(TBS系、金曜22時〜)「恋はつづくよどこまでも」(TBS系、火曜22時〜)(C)吉田潮

 昨年夏から我が母が入退院を繰り返し、大病院の医者と接する機会を得た。ひとりは解説がうまくて、実にわかりやすい。さらりと書きなぐったメモですら完璧な説明。でも病気の診断と治療法に確信をもてず、結局大学病院に投げた。

 大学病院のほうは若い二枚目だが、話の繰り返しと後戻り、つまり無駄が多い。でも治療法の選択肢や可能性を提示。ふたりとも柔和で温厚、上から目線の無愛想な輩ではなく、患者の話も訴えもちゃんと聞いてくれた。ただ、厄介な病気なので完治はしていない。むしろ母は薬漬けになった。

 一番の願いは治してくれることなので、いい医者といえるかどうか。いや、そもそもいい医者の基準って、何? そんなことをつらつら考える1月。つうか今期、医療モノが多すぎないか?

 テレ朝以外はとにかく医者、どこもかしこも医者。芸がない。新奇性もない。役者がどうこうの話ではなく、テレビ局側の問題。医療モノは安牌と思って置きにいった感がぷんぷん匂う。子供の病気でお涙頂戴できるし、医者にはトラウマやら苦悩を抱えさせておけばOK、人材不足に働き方改革を織り込んでおけば一丁上がり感。医療業界の本当の闇には触れず、正義をふりかざしてなんとなくエエ話に落としこめる題材。

 私が嫌いなのは「医療従事者がドジっ子でワゴンひっくり返してどんがらがっしゃん」とか「ドタバタ病院内を走り回る社会不適合医者が実は患者の心に最も寄り添う」みたいな茶番劇。

 あと、高所から落ちそうな人間を手一本で助けるっつうファンタジーな。「クリフハンガー」のシルヴェスター・スタローンでさえ落としたよ。ドウェイン・ジョンソン級でないと引き上げられないよ。あと、演者がエンディングで踊るヤツ。医療モノでそれやる?

 最もしらけるのは医者同士の会話で説明するヤツな。視聴者に教えてやらにゃいかんから、説明するんだけど、医者同士だったらそんな根本的な解説をしないよな。メディカル&テクニカルに特化しすぎたり、毎回奇病や超レアケースのオンパレードもドン引くわな。

 どれがそうとは書かぬが、民放地上波キー局・ゴールデン枠の4つの医療系ドラマを比べたときに、文句がマグマのように湧いてきた。心打たれ、数年後も語り継ぐ作品がどれだけあるか。今のところ「コウノドリ」や「透明なゆりかご」を超えるものはなさそうである。

 ただ、着目点はある。「トップナイフ」(日テレ)は天海祐希に医学界の性差別に斬りこんでほしい(東京医科大学などへの鉄槌(てっつい))し、「アライブ」(フジ)は優しさと罪悪感だけじゃない、がん治療の闇にも触れてほしい。「病室で念仏を唱えないでください」(TBS)では、坊主兼医者の収入と納税額が気になるし、「恋はつづくよどこまでも」(TBS)は医療そっちのけの恋模様、「よそでやれ」感が逆に潔い。

 どの作品も患者役によっては神回もちらほら。最後まで目を離さないつもりだが、ちょっと挫けそう。どうか挫けさせないでおくれ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

「週刊新潮」2020年2月6日号 掲載

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