M-1で3位「ぺこぱ」の下剋上が始まる “優しいツッコミ”に松本人志も「いいねぇ!」

M-1で3位「ぺこぱ」の下剋上が始まる “優しいツッコミ”に松本人志も「いいねぇ!」

M-1で3位「ぺこぱ」の下剋上が始まる(ぺこぱオフィシャルブログより)

■トーク力が高い評価!?


 歴史的な接戦と言われた2019年のM-1グランプリ。最終決戦はミルクボーイ、かまいたち、ぺこぱの3組が出場し、審査員の投票は6票、1票、0票という結果でミルクボーイが優勝を飾ったのは記憶に新しい。

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 頂点に輝いたミルクボーイが売れっ子になるのは当然だが、意外や意外、0票という結果に終わったぺこぱが、バラエティ番組の制作現場で注目を集めているという。

 最終決戦に残っての3位なのだから、充分な高評価を受けていることは言うまでもない。だが、ひょっとすると「ミルクボーイを超える可能性がある」というのだから興味深い。民放キー局で制作に携わっている関係者が明かす。

「決勝に進んだ3組ですが、大前提として、かまいたちのお二人は既に売れっ子です。私たちスタッフにとって、ミルクボーイとぺこぱの2組が、トーク番組やロケ番組をどれだけこなせるかというのが高い関心事でした」

 少数の例外を除き、民放キー局が地上波で流すバラエティ番組は、お笑い芸人のネタを真っ正面から取り上げることは少ない。今の時代、“ひな壇番組”と“芸人のロケ番組”が視聴率を稼いでいるのはご承知の通りだ。

「結論を先に言えば、2組とも合格点です。ただし、テレビ業界の受け止めを細かく分析すると差異があります。ミルクボーイのトークも充分に面白いのですが、彼らの漫才が絶品すぎるのです。『漫才に比べるとインパクトが足りない』と過小評価される傾向があります。一方のぺこぱは当初、『どうせキャラ漫才で一発当てただけで、トークは期待薄だろう』と先入観を持たれていました。ところが蓋を開けてみると、『喋りも面白いじゃないか!』と評判になっています。こちらは嬉しい誤算というわけです」(同・制作スタッフ)

 この関係者は「特に松陰寺太勇さん(36)のアドリブ力はかなりのものです。今年はぺこぱが大ブレイクするかもしれません」と予想する。

 ぺこぱは、ツッコミの松陰寺太勇と、ボケのシュウペイ(32)の2人組。松陰寺は山口県の高校を卒業後、大阪の音楽系専門学校でサウンドエンジニアリングを学んで上京した。かつてはバンドマンだったのだ。

 一方のシュウペイは神奈川県の麻布大学附属渕野辺高校(現・麻布大学附属高校)に進学し、名門とされるサッカー部に入部した。シュウペイの在籍中、渕野辺高校は全国高校サッカー選手権大会に2度の出場を果たしている。川崎フロンターレの小林悠(32)や名古屋グランパスの太田宏介(32)は同級生、ツイッターでは今も親交が続いていることが紹介されている。


■絶対に怒らないツッコミ


 この2人が出遭ったのは、アルバイト先の居酒屋だった。2007年頃のことだったという。既に松陰寺はミュージシャンの夢を諦め、ピン芸人として活動していた。

 松陰寺がシュウペイに出遭って気に入り、半年間も口説き続けてコンビ結成に漕ぎ着けた。最初はナイスデイという事務所に入ったが、2010年にオスカープロモーションへの移籍を果たす。ところが19年に同社はバラエティ部門の閉鎖を決め、契約を解除されてしまう。

 するとAbemaTVでカンニング竹山(48)の番組に出演したことが縁となり、サンミュージックの所属が決まった。そして現在に至るというわけだ。

 下積み時代はボケやツッコミを入れ替えたり、“ボーイズラブ漫才”や“ヒップホップ漫才”に挑戦したりするなど、試行錯誤と苦労の連続だったようだ。とてもではないが“順風満帆”という言葉とは無縁の芸人生活だった。

「2015年にNHKのBSが放送した『爆笑ファクトリーハウス 笑けずり』で一部の注目を集め、翌年に初の単独ライブを下北沢で開催しました。18年のM-1グランプリ予選では準々決勝まで勝ち残り、19年1月1日の『ぐるナイ おもしろ荘 日本で一番早いネタ祭!誰か売れて頂戴!』で優勝します。オスカーとの契約を解除されるというトラブルを乗り越え、19年にとうとうM-1グランプリ決勝に初出場。3位に食い込んで注目を集めましたが、彼らの特徴は松陰寺が放つ“優しいツッコミ”です」(同・制作スタッフ)

 実際にM-1グランプリの決勝戦で披露した「タクシー運転手」のネタを振り返ってみよう。

 ステージに登場すると、自己紹介などを1分間で終わらせ、シュウペイが「突然なんだけどさ、タクシー運転手なんてやってみたいと思って」と口火を切り、すぐにネタへ入る。鮮やかな進行が印象的だ。

 運転手役のシュウペイは「ぶーん」と松陰寺に向かって車を走らせるマネをする。松陰寺は「ヘイ、タクシー!」と左手を挙げる。

 だがシュウペイは止まらず、「どーん」と松陰寺に衝突する。普通のツッコミなら、この衝突を非難するだろう。「痛いわ!」とか「何をぶつかってんねん」とか、「俺、死ぬじゃねーかよ」という具合だ。

 ところが松陰寺は「痛ってえな、どこ見て運転してんだよ……って言えている時点で無事でよかった。無事であることが何より大切なんだ」となぜか納得してしまう。

 松陰寺が決まり文句である「時を戻そう」を口にすると、再びシュウペイはタクシーの運転を始める。だが、やはり「どーん」とぶつかってしまう。

 すると松陰寺は「2回もぶつかるということは、俺が車道側に立っていたのかもしれない。もう誰かのせいにするのはやめにしよう」と、今度は反省してしまうのだ。

 その後もボケに“優しいツッコミ”を返しながら、松陰寺はシュウペイのタクシーに乗る。そしてシュウペイに「うるせえ、キャラ芸人!」と理不尽な罵声を浴びせられると、「キャラ芸人になるしかなかったんだ。何かが欲しかった」と弁解する。決して怒らないのだ。

 今でもオチに「いい加減にしろ」と定番のフレーズを使う漫才師は少なくないが、松陰寺は「いい加減なことなんかない」と、あくまでも肯定的に締めるという徹底ぶりだ。


■ミルクボーイを上回るトーク力!?


 この“優しいツッコミ”の面白さを増大させるのが、松陰寺のナルシスティックなキャラクターだ。

 自分の役割を“ツッコミ”と言わずに“キザ”と規定したこともある。松陰寺はステージの上でくねくねと動き、まるで三流のミュージシャンのようだ。そして奇妙な理屈を駆使して相方をかばい続ける。インパクトは抜群で、多くの観客はあっけにとられながらも笑ってしまうことになる。

 そんな彼らは1月30日、「ダウンタウンDX」(読売テレビ制作/日本テレビ系列・木曜・22:00)に出演したのだが、これが「下剋上」と話題になったようなのだ。

「番組で松陰寺さんが“優しいツッコミ”を披露するため、ダウンタウンの松本人志さん(56)と浜田雅功さん(56)の間に立たされました。さっそく松本さんが『一旦、コマーシャルに行きましょう』とボケたのです。普通のツッコミなら『いかねーよ』とでも言うでしょうが、松陰寺さんは『行くしかない』と肯定してしまうのです。浜田さんが苦笑しながら松陰寺さんの側頭部を叩くと、スタジオが爆笑しました。浜田さんが古典的にツッコんだため、松陰寺さんの新しいツッコミがボケの役割を果たしたんですね。とても面白く、印象的な場面でした」(同・制作スタッフ)

 これに他の芸人も参戦する。ひな壇に座っていたお笑いトリオ「ネルソンズ」の和田まんじゅう(34)が「ちょっとトイレ行ってきます」とボケをぶつけてきたのだ。

 松陰寺は「我慢して……」と言いかけたが、すぐに「漏らす前に行け」と許可を与えてしまう。予想外のツッコミに松本も崩れるほどウケ、やはり浜田が側頭部を叩いてスタジオは盛り上がった。

「最後は浜田さんが後頭部を拳で軽く殴ったのですが、松陰寺さんは『愛のある拳は痛くない』と踊るように言うと、松本さんは『いいねぇ〜! 爪跡残せたんじゃない?』と感心しました。このやり取りを『ザテレビジョン』が『ぺこぱ、浜田雅功に“優しいツッコミ”返し 松本人志「爪跡残せたんじゃない?」』と電子版の記事にして報じたほどです」(同・制作スタッフ)

 ぺこぱの評価が急上昇している背景には、「ダウンタウンDX」を見たテレビ関係者、特にバラエティ番組の制作スタッフが注目しているという事情がある。今後は、現状を遙かに超える出演オファーが殺到してもおかしくないという。

 改めてM-1グランプリを振り返れば、ぺこぱが最終決戦に進んだのは文字通りの“天国”だったに違いない。

ところが審査員の票は0票だった。これはやはり“地獄”だっただろう。ボケのシュウペイはM-1終了後、「3位、、、、悔しいです」とツイートしている。

 ところが「ダウンタウンDX」の成功で、優勝したミルクボーイより、ぺこぱのほうがトークでは優れているかもしれないと注目されつつある。1位と3位の熱いバトル。今年のテレビが面白くなる要素が1つ見つかったようだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月9日 掲載

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