「ケイジとケンジ」打ち切りになる前に書き記しておきたいこと(でも打ち切りには猛反対)

「ケイジとケンジ」打ち切りになる前に書き記しておきたいこと(でも打ち切りには猛反対)

「ケイジとケンジ」(テレ朝系、木曜21時〜)(C)吉田潮

 もし自分が役者だったら。テレ朝の警察系シリーズものに出たい。「科捜研の女」「相棒」「警視庁・捜査一課長」「特捜9(9係)」あたりの長寿シリーズでレギュラーとなれば、定期収入が得られるから。ブレイクせずとも、黙々とキャラクターの定着に精進できる。川原和久はもはや伊丹さんだし、石井一彰は蒲原君だ。この枠のレギュラー獲得にはどれだけ経験が必要か、熾烈な争いがあるか、想像するだけで、ひれ伏す思い。

 テレ朝で新作が出ると、いつも「これはシリーズ化するかな」と考える。してほしいと思うものは案外単発で、微妙と思うものがうっかり長寿化。主人公が40代以上のベテランが多い。

 ところが、今期は30代のふたりがW主演。「おっ、テレ朝も若返り戦略か」と新鮮な気持ちで観ていたのが「ケイジとケンジ」だった。

 元高校教師の熱血デカに桐谷健太、女好きの気障なエリート検事に東出昌大。滑舌と抑揚にやや問題のある若いふたりが、テレ朝シリーズ化を目指して、気炎を吐いていた。脇もしかり。

 東出の右腕的事務官で、桐谷の妹役を比嘉愛未(まなみ)。多彩な表情を見せてくれる若手実力派の磯村勇斗(はやと)や渋谷謙人、眼力ハンパない今田美桜(みお)までも投入し、所轄も地検も全体的に平均年齢を一気に下げた感があった。

 あ、もちろん締めるところは締めるベテラン勢の布陣。若かりし頃の渾名はメンマ、膝と腰の痛みとくたびれ感が盤石すぎて、観ているこちらも痛くなるほどのリアリティを醸し出す菅原大吉、小心者で上意下達が毛穴の奥まで染み込んだような係長を矢柴俊博(昔の渾名はなぜかガッツ)が演じる。華はなくとも、現実味が滲み出る面々だった。

 語尾を過去形にしているあたり、私も底意地が悪いなとは思うが、シリーズ化はたぶん、というか絶対にない。下手したら打ち切りの憂き目に遭うかもしれないと思って、書き記しておくことにした(あ、でも打ち切りには猛反対します)。

 刑事が汗と涙と足で突きつめた事件を、検事がひっくり返したり、逆に他の罪で起訴しようとしたりの攻防戦は面白いと思った。警察や検察は、己の保身や立身出世のために被害者の人生を狂わせることもあれば、お節介や同情で容疑者が罪に向き合う機会を奪うこともある。ステレオタイプな刑事と検事だが、扱うお題は興味深い。

 実際に、権力の横暴が横行し、嘘をついて罪を犯した人間がのうのうと息を吸ってふんぞり返る今のご時世だ。ドタバタでも、充分社会派ドラマになりうる。なりうるはずだったが……。

「刑事ドラマの、その先へ」という挑戦的なキャッチが別の意味になっちゃって。その先どころか「その前に」という事態になっちゃって。

 改めて、長寿シリーズで長年レギュラーを務める人の、役者魂に思いを馳せる。警察モノや家族モノは、演者とはいえ私生活の姿勢も問われる時代。主役も脇役も、うしろめたい言動を慎むようになるのかもしれず。

 それにしたって、桐谷の気合が気の毒で。劇中の涙も別の意味で味わうことに。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

「週刊新潮」2020年2月13日号 掲載

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