「有吉の壁」、ギャラクシー賞受賞に驚く制作スタッフ バラエティ番組に変革の機運

「有吉の壁」、ギャラクシー賞受賞に驚く制作スタッフ バラエティ番組に変革の機運

有吉弘行

 4月からレギュラー化した「有吉の壁」(日本テレビ)の評判が良い。もともと不定期で放送されていた特番の頃から、ネット上では絶賛されていたのだが、放送批評懇談会が選定するギャラクシー賞の5月度月間賞を受賞した。何しろ一番驚いたのは、番組スタッフだったとか。改めて「有吉の壁」と他のバラエティ番組との違いを考えてみる。

 ***

「有吉の壁」の番組コンセプトは、さまざまなジャンルの“お笑いの壁”にチャレンジし、芸人として成長する、というもの。分かりやすく言えば、MCの有吉を笑わせるべく、芸人たちが彼のムチャ振りにどれだけ即興ネタ、面白いボケで対応できるかが問われるバラエティだ。たとえ切り抜けられたとしても、さらに次のムチャ振りにどう対応するかを、視聴者は面白がって見ている。

 6月22日、そんな「有吉の壁」がギャラクシー賞に選ばれたことが発表された。ちなみに、ギャラクシー賞とは《日本の放送文化の質的な向上を願い、テレビ、ラジオの番組、関係者を顕彰する》もの。5月度に選ばれたのは4番組で、他の3つは以下の通り。

○新日本風土記スペシャル「松本清張・鉄道の旅」(NHK):5月8日放送

○ザ・フォーカス「ムクウェゲ医師の終わらない闘い」(TBS):5月17日放送

○NNNドキュメント’20「クリスマスソング 放射線を浴びたX年後」(日テレ系/南海放送):5月24日放送

 いずれもドキュメンタリー番組で、バラエティ番組で唯一の受賞だったことがわかる。「有吉の壁」の選考理由にはこうある。

《純粋なお笑い番組を成立させることが難しくなっている昨今のテレビの状況のなかで、ゴールデンタイムのレギュラー番組として「お笑い」だけにこだわった放送を続けている。司会の有吉弘行による芸人愛あふれるムチャ振りに対し、苦しみながらも楽しそうにお笑い脳をフル回転させている芸人たちの姿は多幸感に満ちている。》

 なんだか崇高な番組のように思えてくる。民放プロデューサーは言う。

「確かに、純粋なお笑い番組はなくなっています。ここ数年、芸人に求められるのは、トーク力ですからね。明石家さんまさんやダウンタウンの影響だと思いますが、『アメトーーク!』(テレビ朝日)に代表されるように、○○芸人といった“くくりトーク”は、他の番組がマネするほど、お笑いにおける1つの形になっています。結果、芸人同士のトーク番組となり、他の芸人がイジりやすい“ボケ・トーク力”は必須になりました」

「アメトーーク!」で人気に火がついた芸人を挙げればキリがない。

「博多華丸・大吉やサンドウィッチマン、サバンナの高橋茂雄、ケンドーコバヤシ、麒麟の川島明、千鳥、狩野英孝……などなど。ところが、漫才の『M-1グランプリ』(テレ朝系)やピン芸人の『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)、コントの『キングオブコント』(TBS系)、女芸人の『THE W』(日テレ系)の優勝者であっても、トーク力がなければ1年も持たないこともある。フリートークやネタトークが面白い芸人でないと、今のバラエティ番組で生き残れないんです」(同)

 そんな状況の中で現れたのが「有吉の壁」だった。


■受賞を嫌がるカベガミー賞


「『有吉の壁』では、トークでハマらなかった芸人たちが大活躍しています。チョコレートプラネットやパンサー、ジャングルポケット、ハナコ、パーパー、脳みそ夫、すゑひろがりず、そしてとにかく明るい安村……、生粋のお笑い芸人たちを活かす数少ない番組というわけです」(同)

 芸はあるのに、トークが不得手な芸人にとってはありがたい番組だろう。

「ネタで勝負できる場ですからね。ただし、普段舞台でやっているような純粋なネタ見せではないところも、番組にとってプラスに働いていると思います。3分とか5分のネタではなく、一発芸、一瞬の笑いを作っていくわけです。ギャラクシー賞を受賞したのは、5月6日放送の2時間SPでした。コロナ禍の最中で、過去の再編集版でしたが、そのうちのひとつは“日本カベデミー賞選手権”と題して、日本アカデミー賞にいそうな俳優になりきって、架空の映画に関するインタビューに即興で回答するというもの。ノミネートのインタビューに即興で答えることから始まり、有吉の独断で受賞することになれば、さらに受賞のスピーチまでやらされる。さらにそのスピーチがつまらなければトロフィーから電量が流れるとあって、誰もが受賞を嫌がるという趣向が面白かったですね」(同)

 映画「山猿」の主演俳優・微糖英明になりきった四千頭身の後藤拓実は、幸か不幸か最優秀新人賞に。受賞のスピーチで、苦しげにこう〆た。

《カベガミー賞、絶対に続いて欲しいと思います。いろんな人に……この感覚を味わっていただきたいっ!》

 授賞式会場では、他の芸人たちが大ウケしている。会場もそれらしく作ってあるし、芸人たちもタキシードを着用し、メイクまでして凝っている。番組全体がコントのようだ。

「コロナ禍でもバカバカしいことをやり続け、お茶の間に笑いを提供したことが評価されたんでしょう。でも、本来あるべきお笑い番組の姿は、こうしたネタ見せ番組だと思います。トーク番組はセットもいらず、芸人に任せておけば良いのですから、制作費も安く上がります。その結果、ネタ見せ番組は減っていきました。『有吉の壁』は遊園地ロケをやったり、セットも作ります。こういう番組が評価されたことで、今後のバラエティは、キャラクターやコントで笑いを作る番組が増えていくと思います」

週刊新潮WEB取材班

2020年7月10日 掲載

関連記事(外部サイト)