「伊勢谷友介逮捕報道」「大手芸能事務所」「大麻合法論争」について考える

■同時期に発覚した「ドコモ口座不正出金事件」の扱いは?


 俳優の伊勢谷友介容疑者(44)が大麻取締法違反容疑で逮捕されて約1週間。様々な報道・議論がなされてきたが、そのありようについて徳光正行が“取材”したところ……。

 まずは俳優・伊勢谷友介さん、好きですね〜。何かというと彼が出演している作品を見ていた気がします。

 彼が目的というわけではなく、興味を抱いた作品には常に伊勢谷さんが出演していたといった具合でしょうか。

「嫌われ松子の一生」に於けるヤクザ役。まず登場のシルエットにやられました、「飛んで埼玉」での大袈裟な芝居。

「監獄のお姫さま」でのナルシシズム全開で色気たっぷりの存在感。

 挙げ出すとキリがないのですが、彼の芝居をしばらくの間観ることがそして味わうことができなくなることは、誠に残念であります。

 あの狂気をはらんだ目つきは唯一無二だったのではないでしょうか?

 と同時にあの表現力の裏側にはすべて大麻が絡んでいたと思ってしまうとこれまた残念でなりません。

 そしてここからは今回の逮捕劇についてでございます。

 彼の影響力を考えたら、ワイドショー等が取り上げるということ自体は至極真っ当なことと言えましょう。

 しかしこう言ってはなんですが、たかだか芸能人の大麻取締法違反容疑での逮捕なんかよりも同時期に発覚した「ドコモ口座不正出金事件」の方が、世間の皆さまに直結した大事件ではないのでしょうか。

 私もそのうちの1人でございます。

 この「ドコモ口座不正出金事件」をトップで扱わずに「伊勢谷友介逮捕」をトップで扱い、ダラダラと時間を割く必要はあるのか? と多くの疑問符が脳内を巡りました。

■大手芸能事務所所属のタレントが逮捕されていたら?


 では、大手芸能事務所所属のタレントが逮捕されていたらどう扱っていたか?

 伊勢谷さんの事務所はいわゆる大手ではございません。

 日頃から「忖度忖度」と政治家を叩いて騒いでいらっしゃるテレビ・マスコミの皆様は大手事務所に対して「忖度」なしに扱っていたか? これもまた疑問が残るところでございます。

 さらに今回の逮捕で「いつもの」議論になったことについても書かずにはいられません。

 誰かが大麻取締法違反で逮捕されるたびに、「大麻くらいで逮捕するな、アメリカの複数州やカナダでは合法になっている。日本は時代遅れだ」なんて声が上がります。

 そんなことを毎度毎度後出しジャンケンのように唱える皆様は、衆議院議員選挙に立候補して、「大麻を合法」にすべく法案を提出する努力をなさったらどうか? なんて思ってしまいます。

 あとものすごく単純な話、ないものねだりをした幼き頃、「他人(ひと)の家は他人(ひと)の家、ウチはウチ」という教育を受けてこなかったのかと思ってしまいます。極論こういうことだと思います。

 さらに私なりに難癖をつけるとすれば大麻推進派の皆さまは欧米がお好きでいらっしゃるので、「凶悪犯罪が増えました、自分の身は自分で守るべきです。銃を持たないなんて時代遅れですよ」となるのでしょうか? となってしまうわけです。

 先ほど、たかだか芸能人の大麻取締法違反逮捕という表現を用いましたが、「たかだか」だから許されるというわけではありません。

 我が国では大麻所持が違法であることを知っていながら手を出したことは由々しきことであり、その入手経路の向こう側に反社会的組織が絡んでいたら尚のこと悪質極まりないわけです。

■「作品」と「個人」は別物の判断には賛同するが…


 そんな中、これまたいつもの話になるのですが、俳優の窪塚洋介さんがインスタグラムにおいて、こんなコメントをなさいました。

「誰も被害者のいない犯罪を犯した者に対して、皆でよってたかって石を投げている日本国民特有のその姿が気持ち悪い。(法律上、犯罪は犯罪なのでそこに異論はありませんが、更生しやり直す可能性やその意志の芽まで摘むような所業はどうかと思います。)」

「更生しやり直す可能性や〜」の部分は共感いたしますが、「誰も被害者のいない犯罪を犯した者」という部分には同意しかねますね。

 一方で、杉村大蔵さんが以下のような実に的を射た反論をされたのです。

「よく被害者がいないっていう話もありますけど、迷惑をかけていないっていうのはどうなんだろうなって思いますね」

「例えば伊勢谷さんは教育活動や政治活動をしていて、子供たちがどんな思いをするか、親がどんな思いをしているか。CM、映画、ドラマ、スポンサーさん、やっぱり大きな社会的な影響、はっきり言って大迷惑だと思いますけどね」

 直接被害はなかったとしても2次被害的な間接的被害を被る方はいるわけです。そんなことを40過ぎた大人が気にしないで生きていることが残念ですね。

 さらに吉永小百合さん主演の新作映画「いのちの停車場」製作発表の際に東映・手塚治社長が会見で「逮捕には大きなショックを受けたが、映画は料金を払ってみるためテレビとは違ってクローズドなもの。『作品』と『個人』は別物。作品を守るという考えのもと、判断を下した」と説明をなさいました。

 これとて、映画会社本体そしてスポンサー筋との綿密な話し合いの上に下された決断でしょうし、この判断には大いに賛同します。

 しかし、伊勢谷さんのせいで関係者に余計な苦悩を与えてしまったこともまた否めませんよね。

徳光正行(とくみつ・まさゆき)
1971年12月生まれ。茅ヶ崎市出身。日本大学芸術学部在学中よりミュージシャンを目指すが、父の病により断念。その後、司会業やタレント業に従事する。また執筆活動にも着手し『伝説になった男〜三沢光晴という人〜』『怪談手帖シリーズ』などを上梓。4月27日には岩井志麻子氏との共著『凶鳴怪談』を出版。現在YouTube「徳光ちゃんねる」でも活躍中。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月16日 掲載

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