「伊藤沙莉」が本音で語った女優人生 子役時代の迷い、樹木希林さんへの想い…

「伊藤沙莉」が本音で語った女優人生 子役時代の迷い、樹木希林さんへの想い…

教師役の岡山天音と女子高生役の伊藤沙莉

 女優の伊藤沙莉(26)がデイリー新潮のインタビューに応じた。子役デビューから18年目の今年は大ブレイク。ドラマはヒロインを演じた「いいね!光源氏くん」(NHK)など3本に出演し、映画は11月13日公開の「ホテルローヤル」など4本に登場。ハスキーボイスが魅力の1つなので、声優、ナレーターとしても引く手あまただ。

 伊藤沙莉は飛ぶ鳥を落とす勢い。売れっ子ぶりはCMの数にも表れており、現在は「メルカリ」など5社と契約。伊藤の顔を画面で見ない日はないほどだ。

 デビューは9歳だった2003年。11歳だった05年には天海祐希(53)が異色教師・阿久津真矢に扮した「女王の教室」(日本テレビ)で大人びた児童・田中桃を好演し、注目を集めた。

 名子役の評価を固め、その後も数々のドラマや映画に登場。子役を卒業した10代半ば過ぎからはバイプレーヤーとして活躍し、2017年には連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)で演じた米屋の娘・さおり役が話題になった。19年には「これは経費で落ちません!」(同)で主人公・森若沙名子(多部未華子・31)の後輩・佐々木真夕に扮し、こちらも好評を得た。

 そして今年、一気に大ブレイク。ドラマは「いいね!光源氏くん」(同)など3本に出演。耳心地の良いハスキーな声で、口跡(音声演技)も評判が高いため、アニメ「映像研には手を出すな!」(同)の主人公・みどりの声に起用された。

 10月2日公開の海外アニメ映画の大作「小さなバイキング ビッケ」でも主人公・ビッケの声に抜擢されている。一方で6月には硬派ドキュメンタリー番組「NNNドキュメント’20 さよなら、私のデパート。」(日本テレビ)のナレーションも任された。

 活躍はそれにとどまらない。桜木紫乃さんの直木賞受賞作を原作とする「ホテルローヤル」(武正晴監督)など今年の映画出演は4本となる。

「ホテルローヤル」は北海道・釧路湿原を背に立つラブホテル内の哀歓を繊細なタッチで写し出す作品で、伊藤はノリの軽い女子高生・まりあ役に扮する。

 まりあは雨宿りのため、真面目な担当教師の野島(岡山天音・26)を引きずり込む形でホテルに入り、大はしゃぎ。だが、両親が借金を残した上、それぞれの不倫相手と失踪してしまい、ホームレス状態に陥るという危機的状況にあった。

 以下、伊藤のインタビューだ。

――デビュー18年目で大ブレイク。今は休む間もないのでは?

 凄くうれしいし、ありがたいです。自分の求めていた状況だと思っています。以前はオーディションを受けて仕事をすることが多くて、1つの仕事が終わると、しばらくニートって状態でしたから。そんな時期が長く続きました。仕事が忙しい生活には感謝しかありません。

――ニートではなく、仕事のない期間ということですね?

 ええ、そうなんですが、子役仲間は仕事がない時期を、よく「ニート」って呼ぶんですよ。自分を卑下する意味を込めて。仕事をしてないことに納得していない子が、特にそう言います。空いた時間の過ごし方はそれぞれ違うんですが、私はたくさんバイトしていました。

――劇団員の方も若いころにはバイトをたくさんして、それが演技のプラスになると言われていますが?

 そうですね。人間ファイルのストックはたくさん貯まりました(笑)。そんなこともあって、バイトはあえて接客業ばかりしていました。モノマネというわけではないのですが、演じる役がファイルの中にある人に近い時は、それを自分にグッと引っ張ってきます。

――人気も得ました。心境は?

 人気者だと思ったことはないんですが、自分に対してプラスの意見を持ってくれている人が以前より増えているとしたら、減るのが怖いですね。SNS時代ですから、引っ繰り返るのなんて、あっと言う間です。人気もイメージも高いところにまで上がるほど、落ちてしまったときの傷が深いと思います。ずっと同じ位置に居られたらいいと思うのですけどね。

――年齢は20代半ばですが、この仕事を始めてからは長い。いろいろと迷った時期もある?

 子役だったころのある時期、「この仕事を辞めたら、家族から見放されるし、友人もゼロになるんじゃないか」という、よく分からない恐怖にかられました。特に勉強が出来たわけではありませんし、ほかにも得意なこともなかったからです。興味があり、長く続き、親から誉められたことのあるのはお芝居くらいでした。

――その恐怖をどう乗り越えたのでしょう?

 たまたま仕事がない時期があり、そのあとに楽しい現場に行ったら、「あっ、自分が好きだからお芝居をしていたんだ」と気づいたんです。好きなことを仕事にできているなんて、こんなに恵まれていることはないって分かったんです。それからはブレなくなりました。


■「女王の教室」共演者との交流は


――今の仕事に対する心構えは?

 いつやめてもいい、そんな気持ちで仕事をしています。子役で迷っていた時期とは逆ですね。そのほうが仕事を自由に楽しめると思うんです。「この仕事しかない」と思うと、視界が狭くなりますし、可能性も自分で狭めてしまうと思います。カチコチになるのが一番苦しい。

――声も高い評価を受けています。自分の声をどう思いますか?

 一時期は「邪魔だな」と思っていました。「得する声じゃないな」と。特に学生時代です。でも、声のお仕事をいただくようになって、「だったら、もっと磨きたい」と思うようになりました。磨くといっても、この声しか出ないんですけど(笑)。声での表現は普段のお芝居とは少し違ってきますので。ナレーションのお仕事はすごく好きです。

――どうして好きなんですか?

 限られた中での表現だからです。表情にも体の動きにも頼れませんから。でも、やれる事はたくさんある。今は声のお仕事に夢中なんです。

――演技もまた評判高いのですが、レッスンを受けたことはないとか?

 演技のレッスンが本当に嫌いだったんです(笑)。だから、お芝居のワークショップに一度参加したくらいですね。

――ということは、演技力はすべて自分で身に付けた?

 出会った人、出会った作品が良かったとしか言いようがありません。特に監督に恵まれました。

――「女王の教室」の共演者との交流は今もある?

 志田未来さん(27)との交流は最近ないんですよ。(2年前に)結婚した時には驚きました。子供のころから知ってますからね。これまでの人生で接した結婚報道の中で一番驚きました(笑)

 福田麻由子さん(26)とは不思議と縁があって、最近も映画(「蒲田前奏曲」9月25日公開)で共演しました。彼女のお芝居や現場に対する考え方は勉強になり、刺激を受けるので、定期的にお会いしたい人です。


■同い年で教師と生徒役


――「ホテルローヤル」で教師役だった岡山天音さんとは、実は2人とも26歳で同い年。どうやって年齢差を表現されたのですか?

 私は純粋に子供っぽく楽しんでいるように振る舞っただけです。岡山さんが大人の葛藤を表現してくださいました。だから年齢差の空気感をつくり上げてくれたのは岡山さんですね。私は女子高生特有の「なーに考えているんだろうな」「何も考えていないんだろうな」という雰囲気を出せたらいいな、と思いました。フラーっと生きているような感じです。でも本当は女子高生もいろいろ考えているんですけどね。多感な時期ですから。

――撮影現場に行く前から、その役づくりを決めていた?

 私は事前に構想を練るタイプじゃなくて、現場での感覚や感情で役をつくります。ガチガチに事前に決めていくと、監督の求めてくれたものに合わせにくくなることがありますからね。柔軟性を忘れてしまうと、がんじがらめになり、何もできなくなる恐れがあると思うんです。それに自分が作り上げてきたものが全てになってしまうと、共演する相手の方から出てくるものに素直に反応できなくなることもあります。自由にお芝居している時が一番楽しいので、その場で生まれたものに素直に反応するのが、自分のやり方だと思っています。

――「ホテルローヤル」はどんな物語だと捉えていますか?

 冷たいようで、あったかい話だと思います。愛情がなみなみ注がれている人が出てこない。でも、それが不幸というわけではない。飢えているということが魅力的に表現された作品だと思いました。いろいろな人生が描かれています。

――これから先、女優としての目標は?

 樹木希林さんと共演させていただくのが夢だったんですが、それが実現する前に樹木さんはお亡くなりになってしまいました。訃報に接した時、地方ロケに出ていて、ホテルの部屋にいたのですが、実はメチャクチャ泣きました。落ち込みました。人前に居なくて良かったと思います。将来、樹木さんになりたいとか、なれるとかは思っていません。ただ、私が死んだとき、誰か1人でもいいので、「共演したかった」って思ってもらえるような女優になりたいですね。

○伊藤沙莉(いとう・さいり)1994年5月、千葉県生まれ。2003年、「14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜」でデビュー。2015年には「トランジットガールズ」(フジテレビ)に主演。今年8月には第57回ギャラクシー賞テレビ部門の個人賞に輝いた。キーパーソン役を務める「ホテルローヤル」の主演は波瑠(29)。共演は松山ケンイチ(35)、波瑠の両親役の安田顕(46)、夏川結衣(52)ら。

「ホテルローヤル」
11月13日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー   
配給:ファントム・フィルム
(C)桜木紫乃/集英社 (C)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
ヘアメイク・AIKO スタイリスト・吉田あかね

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月28日 掲載

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