民放で日テレだけが地上波プライムタイムの番組をネット同時配信する狙い

民放で日テレだけが地上波プライムタイムの番組をネット同時配信する狙い

日テレの同時配信は、SNSでは歓迎ムード(「TVerオフィシャルサイトより」)

 10月3日19時、日本テレビが、系列局の讀賣テレビと中京テレビと共同で、テレビ番組のインターネット向け同時配信「日テレ系ライブ配信」をスタートした。配信されるのは、19時〜23時までのいわゆるプライム帯の番組(一部番組を除く)で、12月までの3カ月の期間限定。あくまで“実験的配信”と発表されているのだが、もちろん日テレには将来を見据えた“狙い”があるという。

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 すでにNHKは、3月からネット同時配信「NHKプラス」を実験的にスタートさせ、4月から1日18時間の本格運用を始めている。

 一方、「日テレ系ライブ配信」は在京民放キー局5局が中心となって運営する無料配信サービス「TVer」で配信されている。日テレは、無料見逃し配信サービス「日テレ無料TADA!」と有料サービスには「Hulu」を持っているにもかかわらずだ。放送記者が言う。

「当初、民放キー局はTVerを使って、揃って同時配信を行うつもりだったのです。今年1月には5局で同時配信の実験も行いました。夏に行われるはずだった東京五輪中継も同時配信することで認知してもらい、その勢いでレギュラー番組の同時配信に踏み切るという計画でした」

 それがなぜ日テレだけに?


■民放5局でスタートするはずだった


「そもそもNHKが五輪中継に向け同時配信を計画していることに、“NHKの肥大化”、“NHKによる民業圧迫”とクギを刺しつつも、民放も指をくわえて見ているだけではダメだと訴えていたのが、18年に民放連会長に就任した日テレの大久保好男会長でした。しかし他の民放からは、“同時配信にしたら、地上波が余計に見られなくなる”、“広告料が見込めない”といった消極的意見が出るようになり、結局、日テレだけで同時配信に踏み切ったわけです」(同)

 さすが民放の雄・日テレだからこその決断とも言えるが、勇み足という声もあった。 だが同社の本気度は、待機画面を見ても伺えるという。


■テレビ離れからテレビ回帰に


「かつて日テレで毎日、放送開始時と放送終了時に流されていた“鳩の休日”ってご存知でしょうか。『ご覧のチャンネルは、JOAX-TV、日本テレビです。本日の放送を終了致します』というアナウンスの時に、鳩のイラストの動画があったのですが、これは日本テレビの開局(1953年)と同時にスタートした由緒正しい映像です。この鳩のデザインが『日テレ系ライブ配信』の待機画面に出てきます。日テレとしては、新たな開局という意識があるのでしょう」(同)

 日テレの公式ホームページからもワンクリックでTVerに飛ぶのも本気ゆえか。とはいえ、他局が心配するテレビ離れに拍車がかかるとの心配も分かる。日テレ関係者は言う。

「むしろ上層部は、テレビ離れからテレビ回帰へのきっかけにしたいと考えているようです。若年層のテレビ離れはもちろんですが、コロナ禍で巣ごもり生活となったテレビユーザーまで、NetflixやAmazon Prime Video、Huluといったオンデマンド配信で、好きな時に好きな映画やドラマを視聴するライフスタイルになりました。今やリアルタイムでテレビを視聴するのは意味がないといった考えが根付きつつあります。しかも、テレビがないところでも楽しめる、この同時配信が上手くいけば、テレビ離れしていたユーザーが『今度は大画面のテレビで見よう』という行動に出る可能性があるというわけです」

 TVerはインターネットにつながっているテレビでも見ることが可能だ。結局、テレビに戻らず、配信ばかり見るようになるのでは?

「TVerの入っているテレビでも、『日テレ系ライブ配信』は視聴することは出来ません。配信でテレビ番組も面白いと思ったら、テレビに帰ってきてくれればいいのです」(同)

 同時配信の広告料は見込めるのか?

「そこに目をつけた上で、無料同時配信に踏み切ったそうです。TVerもYouTubeと同じように、番組の途中にCMが入ります。ただし、YouTubeはCMをスキップすることができるのに対して、TVerはテレビ同様それはできません。必然的にユーザーは強制的にCMを見させられることになるわけですが、オンデマンドと違ってリアルタイムの配信であれば、民放の視聴と同様ですから仕方ないと思うはずです。そしてスポンサーは、ちゃんとCMを見てくれるなら、録画されてトバされるよりもマシと考えるでしょう」(同)

 テレビに比べると、ネットの広告単価は非常に安いが、

「単価は確かに安いです。しかし、18年のネット広告費は1兆7589億円と、地上波のテレビ広告費1兆7848億円に迫っています。すでにテレビ広告を止め、ネット広告のみに転じた企業も出てきています。さらにTVerは、CMをスキップされないということで、大手スポンサーによるCM出稿も増えてきているそうです」(同)

 日テレの同時配信は、SNSでは歓迎ムードのようだ。

〈今まで宮崎は民放が2局しかなかったんですがこれで民放が2・5局になったといっても良いのではないでしょうか。〉

〈日テレ系ライブ配信で「日テレ系人気番組No.1決定戦2020秋」を視聴。ひょっとしたらネット配信とはいえ、沖縄で見れるのは初めてかも?〉

〈TVerの日テレ系ライブ配信に23:30〜の有吉反省会ある! 東海地方は遅れて再来週放送だから、リアタイできるのありがたい〉

「地方に住んでいる人が、東京キー局の編成番組が見られるというので、概ね歓迎されているようです。しかし、それにより系列ローカル局のテレビ離れが進んでしまうかもしれないという心配はあります」(同)

 12月までの実験配信が成功すれば、来年には本格運用が始まるという。はたして、他の民放はどうするのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年10月13日 掲載

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