「DIVER」は良作なのに低迷 関テレ「火曜9時」ドラマはなぜ不調続きなのか

 関西テレビ(大阪)が制作し、フジテレビ系で全国放送されている火曜日午後9時台の連続ドラマが、不振から抜け出せない。今年に入ってから放送された作品の平均世帯視聴率は、現在の「DIVER-組対潜入班-」を含め、すべて8%以下。非常事態と言える(視聴率は全てビデオリサーチ調べ、関東地区)。

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 関西テレビが制作しているフジ系の火曜日午後9時台のドラマが、立て続けに低迷している。現在放送中で、10月20日に最終回を迎える「DIVER-組対潜入班-」もそう。

 9月22日放送の初回は世帯視聴率が9・6%あり、大台まであと一歩だったが、その後は数字が伸びず、10月13日放送の第4話は6・6%にまで落ちている。この視聴率が世間の声を代弁している気がする。おそらく放送前の期待度は高かったのだ。

 まず主演は若い女性を中心に人気のある福士蒼汰(27)。兵庫県警が極秘裏に結成した潜入捜査官チーム(通称D斑)の活躍を描くという設定も悪くないはず。原作はファンの多い漫画だ。福士は潜入捜査官の黒沢兵悟に扮している。

 共演陣もいい。黒沢のライバル・佐根村将役には若手の演技巧者である野村周平(26)が扮し、班長・伊達直哉役も力のある安藤政信(45)が配されている。チームをつくった兵庫県警本部長・阿久津洋子役はりょう(47)で、強烈な存在感を示している。

 では、なぜ支持が広がらないかというと、理由はいくつか考えられるが、一番大きな理由は作風が暗いからだろう。

 説明するまでもなく、現在の時代相は新型コロナ禍の影響で暗い。多くの視聴者は無意識のうちに明るい作品や癒やされる作品を求めているはずである。

 9月まで放送されて、大ヒットした「半沢直樹」(TBS)と「私の家政夫ナギサさん」(同)の場合、質も高かったが、その上、暗い時代相を吹き飛ばすような痛快さや明るさがあったので、それが新型コロナ禍下の視聴者ニーズと合致した気がする。

「DIVER」はどうかというと、福士が演じる黒沢は、昔は窃盗や暴力事件の常習犯で、今も優等生とは程遠い。上司の伊逹の指示に平気で背き、仲間の佐根村を見下している。やさぐれた感じが強く、かなり暗い。

 ストーリーもまた暗い。1話では特殊詐欺グループのボスでもある闇金会社の社長・海藤(杉本哲太、55)が、黒沢の潜入捜査によって逮捕されたものの、黒沢はあえて海藤を起訴できないように工作する。

 このため、拘留切れで釈放された海藤は、警察と取引をしたと邪推した金主たちによって、殺されてしまう。全て黒沢の狙い通りだった。

 班長の伊逹は激怒するが、黒沢はほくそ笑む。

「裁判、拘留、服役にかかる莫大な費用が節約できた」

 本来なら胸がすくのかもしれないが、時代相が暗い現在の視聴者マインドとはそぐわない気がしてならない。

 とはいえ、この企画を選んだスタッフが悪いとは言えない。このドラマの制作は遅くとも10カ月前には決まっていたはず。その後に起きた新型コロナ禍は誰も予想ができなかったのだから。

 この時間枠のドラマでやっぱり暗かったのが、「DIVER」の前に放送されていた「竜の道 二つの顔の復讐者」(7月28日〜9月15日)。主人公で双子の兄弟の兄・矢端竜一(玉木宏、40)と弟・竜二(高橋一生、39)が、大恩ある養父母を自殺に追い込んだ悪徳運送会社社長・霧島源平(遠藤憲一、59)に復讐するという物語なので、明るいはずがない。

 コンサルタント業を隠れ蓑にした竜一は復讐のために人生の全てを投げ打ち、名も顔も変え、最終的には3人の人間を殺す。狂気を帯びた主人公だった。

 ただし、作品の質は折り紙付き。復讐のために悪事を重ねた竜一役の玉木は、最終回では幽鬼のようになってしまう。根はやさしい人間が、無理を重ねたからである。目のまわりはくぼみ、頬はこけていた。玉木による迫真の演技だった。

 高橋が演じた竜二は国土交通省のエリート官僚ながら、竜一と連携し、やはり復讐を目論む。高橋もハマっていた。恨みを内に秘めた官僚に成りきっていた。

 全8話。最初から最後まで復讐譚だった。登場人物の大半が悪い奴だったのも特徴だ。竜一は人殺しだし、竜二も官僚の権限をフルに悪用。桐島源平は中小運送会社の乗っ取りを繰り返す一方、ドライバーを劣悪な環境で酷使しており、悪党そのものだった。

 もっとも、悪党ながら全員が魅力的だった。役者の演技が抜群だったし、演出もまた秀でていたからだろう。遠藤は終始、憎々しげに映り、やはり悪役の達人だった。

 全話の平均世帯視聴率は7・2%。どうして視聴率面では成功できなかったかというと、やはり暗さが祟ったのと、放送がプライムタイム(午後7時〜同11時)だったせいだろう。

 この時間帯の場合、チャンネル選択の主導権を握るのはF1層(女性20〜34歳)とF2層(女35〜49歳)。この層を取り込まないと苦しいが、復讐譚が好まれるとは、ちょっと考えにくい。

 スタッフ側もそれは分かっていたはずで、だからソフトな玉木と高橋を前面に押し出し、近年は女性人気も高い遠藤を悪玉に据えたのだろうが、それでも復讐譚へのアレルギーは強く、壁を壊せなかったようだ。

 ただし、質は高いのだから、今後は動画配信で高人気を得る可能性があると思う。また、再編集してVシネマ化したら、人気を得るに違いない。「復讐」「殺人」「巨大ヤクザ組織」と、このドラマにはVシネマの成功要素が詰まっている。Vシネマは日本固有の文化。誤解している向きもあるが、テレビのドラマより格下というわけではない。

「竜の道」の前作「探偵・由利麟太郎」(6月16日〜7月14日)の場合、原作が横溝正史なので、明るいはずがなかった。やはり不運だったが、脚本の完成度にも難があったと言わざるを得ない。

 視聴者は謎解きを由利麟太郎(吉川晃司、55)と一緒に楽しみたいのに、その材料が十分に提示されなかった。映像美にとらわれすぎた嫌いがある。

「由利麟太郎」の前はこの放送枠の今年の第1作「10の秘密」(1月14日〜3月17日)。向井理(38)主演のサスペンスで、こちらも明るい作風ではなかったが、新型コロナ禍が本格化する前だから、低迷はそのせいではない。この作品の場合、脚本の構成に問題があったと思う。

 ストーリーが緩慢に感じられた。WOWOWのドラマのように「早く次が見たい」「次も見逃せない」と思わせるような中毒性がなかった。

 関西テレビのドラマにフジは口出しできないが、それでも視聴率はフジのスポットCM(番組と番組の間などに放送されるCM)のセールスなどに影響する。なので、現状はフジにとっても痛い。

 フジ内には以前、関西テレビのドラマの放送枠を引き受けるべきだという意見もあった。もっとも、それは関西テレビのプライドが許さないだろうし、ドラマ制作の東京への一極集中化も良いことではないはず。それでも、このまま低迷が続くと、フジも手を拱いてはいないだろう。

 この放送枠の次回作は「姉ちゃんの恋人」(10月27日スタート)。有村架純(27)が主演し、名手・岡田惠和氏(61)が脚本を書くラブ&ホームコメディーだ。作風が一転、明るくなる。

 作風一新でV字回復を実現するのか。その成否はフジ系列の今後のドラマ戦略を左右しかねない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

2020年10月20日 掲載

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