三浦春馬さんのネット上デマ、元凶は事務所? 「お別れの会」も開かれず

三浦春馬さん巡る憶測や陰謀論が拡散 情報を出し渋る事務所の対応に問題指摘も

記事まとめ

  • 三浦春馬さんの訃報を巡り、現在も陰謀論や所属事務所を追及する言葉が大量に飛び交う
  • “お別れの機会を設ける”という表現に留めた事務所のアミューズの対応に問題指摘も
  • 「いまの芸能事務所はタレントが自ら命を絶った場合の対応が定まっていない」という

三浦春馬さんのネット上デマ、元凶は事務所? 「お別れの会」も開かれず

 今月18日で、突然の悲劇から早3カ月が過ぎようとしている。あの日から間を置かず“彼”と共演歴のある芦名星さん、藤木孝さん、そして、竹内結子さんが相次いで自ら命を絶ってしまった。

 芸能界を見舞った自死の連鎖――。その最初のひとりとなった三浦春馬さんの訃報は、いまだに多くのファンの心に暗い影を落とす。

 所属事務所のアミューズは、三浦さんの自死から2日後の7月20日に最初のリリースを出し、四十九日に当たる9月4日には詳細な経緯説明の文書を公表した。

 しかし、現在に至るもSNS上には、三浦さんへの追悼の言葉だけでなく、〈遺書もないのになんで自殺ってわかったのですか〉、〈本当に自殺されたんですか? 会見を開いて真実を公表してください〉などと、所属事務所を追及する言葉が大量に書き込まれ続けている。

 確かに、“他殺説”はSNSでも数多く目にするが、“CIAの仕業”など、そのほとんどは陰謀論と呼ぶべきもの。

 とはいえ、一部のファンが、肝心要の動機について触れない事務所側の説明に納得できず、荒唐無稽な他殺説に心を惑わされるほど疑心暗鬼になっているのは事実だ。

 これも時代の流れなのか、オンライン署名サイトでは、三浦さんの自死に疑問を抱くファンたちが警察による再捜査を求めて声を上げ、すでに1万件を超える数の署名が集まっている。また、三浦さんの急逝を受けて、4話完結で放映された連ドラ「おカネの切れ目が恋のはじまり」(TBS系)にも騒動は飛び火。撮影現場で三浦さんへのイジメがあったのではないかとの憶測から演出家のインスタグラムが炎上し、投稿休止に追い込まれた。

 では、悲劇から3カ月近くが経っても、混乱が収まらないのは何故なのか。

 企業の危機管理に詳しい株式会社リスク・ヘッジの田中辰巳氏はこう語る。

「今回、事務所側は初期対応を誤ってしまった。そのせいでファンに疑いの目を向けられ、事態が深刻化していったように思います」


■「真相を教えて」


 田中氏が続ける。

「四十九日のタイミングで、三浦さんが亡くなった当日の経緯を説明した点は評価できます。ただ、それならば最初のリリースの段階から“事態の重大性を考慮し、また、このような悲劇を二度と繰り返さないよう原因の究明に努め、四十九日までに調査結果を報告させて頂きます”と伝えるべきでした」

 本誌(「週刊新潮」)が指摘してきた通り、三浦さんの自死の“原因”に複雑な家族の事情があるのは間違いなさそうだが、

「“ご家族をはじめ、今回の出来事で心に傷を負った方々に配慮しつつ、慎重に聞き取りを進めていく所存です”と言うこともできた。初期段階で調査に言及し、予め公表までの期限を明らかにしておく。そうした手順を踏んでいればファンの疑念が膨らむことを避けられたかもしれません」

 初期対応のマズさはこんな事態も引き起こしていた。

 友人としてニュース番組に登場したサーフィン仲間の男性にも、ファンからの電話が殺到したという。

「春馬が命を絶った直後ではなく、1カ月ほど経った8月頃からですね。ほとんどが女性のファンたちで、一様に深刻な声で“事務所が大事なことを何も発表しないのはおかしい。何か隠してるんじゃないですか”、“真相を教えてください”と質問してくる。そんなことを私に聞かれても答えようがありません。それでも、多いときには1日に4〜5件の電話がかかってくるので、仕事も手につかない。それこそ、朝の8時から受話器越しに1時間半も泣かれたことまでありました」

 先の田中氏はファンへの対応についても疑義を呈す。

「最初のリリースでは、ファンに向けたコメントは“お別れの機会を設ける”という表現に留めています。もっと、ファンの心に寄り添うべきでした」

■死が“悲劇”に


〈年内の実施を予定〉していたはずのそのお別れ会は、いまだ日程すら発表されず、そのことにもファンは不安を募らせている。

 子役時代の三浦さんを指導した、つくばアクターズスタジオの加藤麻由美元会長も首を傾げる。

「葬儀に足を運んだ際、“お別れ会を開くので改めてご連絡します”と言われたものの、それから何の連絡もなく……。アミューズは真面目な事務所ですが、さすがに沈黙しすぎではないかと考えてしまいます」

 また、“箝口令”によって、芸能メディアへの情報も遮断されていたようだ。スポーツ紙の芸能担当が言う。

「そもそも、アミューズは取材や記事にうるさく口を挟む事務所ではないんです。ただ、三浦の件に関しては暗に“家族や葬儀のことには触れないでほしい”と伝えられました。傷ついた遺族の気持ちは察するに余りありますが、取材のアプローチすらできない雰囲気です。三浦の遺作となったセカンドシングル『Night Diver』についてアミューズ関連のレコード会社に取材を申し込んでも、“一切応じられない”。彼の音楽的な才能を伝える好意的な記事を書くつもりだったのに、です。異様なほどアミューズは神経質になっています。“事件”の風化を待っているのでしょうか」

 彼の死と家族との関係をタブー扱いするが如き事務所。あまりにも情報を出し渋るその対応に、コラムニストの唐沢俊一氏は、

「結局、いまの芸能事務所はタレントが自ら命を絶った場合の対応が定まっていないのです。日常的にSNSへの書き込みを続けるネット民の多くは、何より情報を得られないことにイラ立ちを感じる。常に情報を求める“飢餓状態”にあるため、ちょっとしたきっかけでデマが拡散し、無関係の人たちまで巻き込んでしまう。憶測や批判をシャットアウトして、自殺の後追いを出さないためには、事務所が警察と連携しながら事実関係を示し続けるしかないと思います」

 他方、宗教学者の島田裕巳氏は日本人の死生観の変化について言及する。

「かつての日本では、結核や赤痢、天然痘などの感染症で年齢にかかわらず多くの人々が亡くなっていました。死は身近で、人間の生活から切り離せない存在だった。しかし、いまは若くして命を落とすことが珍しくなったことで“悲劇”と捉えられ、周囲も現実を受け止めづらくなっている。しかも、今回は追悼番組ではなく、亡くなった方のドラマが新たに放映されたことで余計に生死の境があやふやになった。お別れ会のような追悼式典が開かれず、ドラマまで放映されると、ファンも死を納得して受け入れられない。その結果、猜疑心が生じてしまったのではないか」

 三浦さんが抱えた苦悩や葛藤まで共有したいと考えることは、ファンの心理としては理解できる。

 たとえ棺を蓋(おお)っても、彼の人生の軌跡にフタをしてはなるまい。

「週刊新潮」2020年10月22日号 掲載

関連記事(外部サイト)