深田恭子、橋本環奈だけじゃない ドラマ「ルパンの娘」の楽しみ方

■フジテレビが真剣に「笑われる」ことを目指したドラマ


 荒唐無稽な設定に全員が真剣に取り組むことでガチのラブロマンスを作り上げた。それが「ルパンの娘」である。

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 古臭さと懐かしさの違いは何か。古臭く感じるのは数年前の既視感、懐かしく感じるのは数十年前の既視感だ。それを端的に教えてくれたのは、作家・藤井青銅氏の『「日本の伝統」という幻想』(柏書房)だった。

 藤井氏いわく、「一つ前はダサく、二つ前以上はロマン」。

「人は、自分の一つ前の世代に対してはダサく思い、反発する。しかし二つ以上前になると、リアルな接触がないので、古臭くてもむしろロマンを感じたりする」という。

 なるほど! と思った。平成の時代には昭和を小馬鹿にしていたが、令和の時代になると昭和も褒め言葉に。

 自分でも無意識だったが、その通りの文言を書き散らしていて恥ずかしくなった。なんてことを思い出したのは、「ルパンの娘」(フジ・木曜22時〜)のせいである。

 全力でふざけて一生懸命バカをやるドラマは、ここ数年は日テレと決まっていた。空回りする作品も増え、食傷気味でもある。

 ところが、昨年フジテレビが真剣に「笑われる」ことを目指した。それが「ルパンの娘」だった。

 泥棒一族の娘と警察一家の息子の恋という、荒唐無稽な設定に全員が真剣に取り組む。笑わせるのではなく、笑われることに重きを置いて、こっぱずかしくなるようなガチのラブロマンスを作りあげた。

 そして、まさかの続編。「監察医 朝顔」の続編は絶対作るだろうなと予測はしていたけれど、まさかこれも時を待たずに作るとは……。

■ダサさを通り越してちゃんとロマンになっている


 このドラマは、古臭さも一周回って新しいというか、懐かしさをふんだんに盛り込んだ異種コメディである。

 主題歌といい、ランバダダダランバダダダ〜の効果音といい、泥棒一族のメインビジュアルといい、秘密兵器といい、昭和の時代に子供だった40代・50代を虜にする懐かしさがある。

 さらにこの世代が若かりし頃にハマった名画や名作の名シーンをオマージュとしてぶちこみ、中年の心の隙間にすっと入り込んできやがる。

 細かいネタはいちいち書かないが、要するにダサさを通り越してちゃんとロマンになっているのだ。

 泥棒一家「Lの一族」の娘・三雲華を演じるのは深田恭子。ルックスと衣装が絶賛されて話題に。演技に関してはみんな遠くを見つめるのが定番だ。

 でも、マジ可愛い。今回は体を絞ってきた感もある。アクションはやらないのに。ポーズだけビシッと決めてくれれば、ファンは満足。スタッフの編集技術も巧みだし。

 恋のお相手、警察一家の息子・桜庭和馬を演じるのは、悲恋が得意な瀬戸康史(わりと一途で思いが叶わぬ役が多い)。

 警察官の矜持は人一倍強いが、愛した女は犯罪者というジレンマに悩む役だ。案外弱くて、すぐ悪者に拉致されるクセがあるし、白目剥いて気絶する回数も多いのが定番。

 今回新たに加わったのが、名探偵の一族だ。京都の名探偵・北条宗真(伊吹吾郎)は、長年Lの一族を追い続けていたが、自宅が延焼し、自害した(ことになっている)。

 北条家の孫・美雲(橋本環奈)は、祖父の遺志を胸に秘め、東京へ。Lの一族の正体を暴こうと奮闘することに。環奈の微妙な京都弁とイケズな京都人っぷりは、新キャラクターとしていいアクセントになっている。


■引きこもりで天才ハッカーを演じる栗原類


 泥棒に警察、探偵の一族。構図のレイヤーが増えたし、第2話では深キョンがあっという間に出産までしちゃったよ!

 冗長に描かず、細かいことを気にせずバンバン進んでいく潔さ。泥棒一族の背景はわりと丁寧に細かく作り込むが、警察の方は超適当でちゃちゃっとすませる感じも清々しい。

 シーズン1で中途半端にあたたまったキャラクターを見捨てることもなく。薄幸のスナックママ・薄井佐知(遠野なぎこ)も登場したし、伝説の大泥棒だが華につきまとう、ある意味ストーカーの円城寺輝(大貫勇輔)も健在。

 突如歌って踊り出す「困惑のミュージカルシーン(カラオケ風の字幕つき)」も継続。新しさを取り込みつつも、定番はそれなりに守る。バランスがいいよね。

 個人的に着目するのは2人。

 まずはLの一族の長男でありながら、引きこもりで天才ハッカーという三雲渉を演じる栗原類。持ち味である美しさをここまで封印する愚行! なんて思っていたが、感情表現が苦手な役は実にしっくり。

 渉は中3の時に痴漢に間違われて高圧的な取り調べを受け、警察に対するトラウマがある。対人恐怖に潔癖、出来のいい妹への遠慮と諦観、まあ、なかなかに生きづらさを抱える人だ。

 ところが、シーズン2ではマッチングアプリに登録し、外へ出始めた。殻を破り、枠を超え、社会に一歩踏み出したのだ。ま、これがいろいろと騒動の発端になりそうなので、彼の成長(と挫折?)は楽しみのひとつでもある。

 日本のドラマでは、栗原の「超美形」が活かしづらかったのか、どちらかといえばホラーやファンタジー方面でスパイス的に使われてきた。

■トリッキーな俳優・我修院達也の動き


「みんな!エスパーだよ!」(2013年・テレ東)では立っているだけでオカルト、超常現象に深みをもたせた。でも、この渉役はスパイスだけでは終わらない。間違いなく彼の代表作だ。

 衣装も、栗原だけ腹部が出ているのは、スタッフが彼の美しさを熟知しているからこそ、と信じている。

 で、もうひとり。シーズン2から登場した新キャラクター、北条家の執事・山本猿彦だ。

 つながった眉毛と、ひしゃげたカエル声……トリッキーな俳優・我修院達也である。麿赤兒・どんぐり・我修院ときたら、そりゃもう極彩色の玉手箱のようなもので、絵ヅラが痺れるキャスティングである。

 我修院といえば、旧芸名・若人あきらの時代が忘れられない。郷ひろみのモノマネで一世を風靡した後、熱海を舞台に謎の失踪事件を起こし、「自作自演」「狂言」と非難された。

 あれがもう30年近く前の話かぁとしみじみ。テレビでもいじられて終わることが多かったが、騒動の後、役者・我修院達也として生まれ変わったわけで。

 最も強く印象に残っているのは、映画「鮫肌男と桃尻女」。殺し屋山田役を演じた我修院は、不気味さと可愛らしさを兼備。

 主人公・鮫肌(浅野忠信)を狙うはずが、うっかり恋に落ち、最終的には救う役どころ。トランプ柄のチョッキを着て、ちょこまかと動く姿が妙におかしくて、そして切なかった。

 今回、環奈を守ろうとするも案外使えない執事の役だが、今後いい動きをするに違いない。たとえ画面の隅にいたとしても、我修院の動きは要チェックだ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月29日 掲載

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