今どきな2つの理由で「金曜ロードSHOW!」は絶好調 他局も映画番組を復活か

■スポンサーも歓迎


 11月13日、「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系列・金・19:56)は「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」(註1)を放送、視聴率は10・3%(註2)を記録した。

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 放送担当の記者が「視聴率を取りに行った結果でしょう。『金ロー』は、しっかりと戦略を立てていました」と指摘する。

「『黒い魔法使いの秘密』は『ファンタスティック・ビースト』シリーズの第2作にあたります。

『ハリー・ポッター』シリーズから派生した作品で、日本では2018年に公開され、興収が65億円を超える大ヒット作となりました。

 地上波初放送ですから、元からある程度の視聴率が期待できたはずです。しかし『金ロー』は10月23日から、『4週連続ハリポタ&ファンタビ祭り』と銘打ち、『ハリー・ポッター』シリーズの旧作を放映しました」

 地上波初放送の「黒い魔法使いの秘密」で、しっかりと視聴率を取りたい。そのため“前座”として、「ハリポタ」の旧作をオンエアしたようだ。

 この狙いは見事に的中したようだ。3作品の視聴率を表にしてみたので、ご覧いただきたい。

 放送を重ねるごとに視聴率が上昇している。「黒い魔法使いの秘密」の初放送を盛り上げるという役割を、しっかり果たしたと言えるだろう。


■映画番組の黄金期


 前出の放送記者は「それにしても『金ロー』の“生命力”には驚かされます」と感嘆する。

「かつて民放各局は夜9時台に映画番組を放送していましたが、視聴率の低迷で軒並み休止に追い込まれました。

 今や日本テレビの『金曜ロードSHOW!』だけが唯一の生き残りです。このご時世に好調な視聴率を維持しています。奇跡的ですね」

 昭和の時代、テレビで映画を観るニーズは極めて高かった。各局の映画番組と、“看板解説者”を振り返れば、一目瞭然と言っていい。

「月曜ロードショー」(1969〜1987年)はTBS系列で、初代解説者は荻昌弘(1925〜1988)だった。

「ゴールデン洋画劇場」はフジテレビ系列で、1971年から81年まで金曜、81年から2001年までは土曜に放送された。2代目解説者の高島忠夫(1930〜2019)が番組の人気を決定した。

「日曜洋画劇場」はテレビ朝日系列で、66年から67年は「土曜洋画劇場」として土曜に、67年から2013年までは日曜に放送された。

 解説者は視聴者から高い評価を受けた淀川長治(1909〜1998)。番組最後の「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」はあまりに有名だった。

「あのテレビ東京さんも、と言っては失礼ですが(笑)、『木曜洋画劇場』(1968〜2009年)を放送していました。

 最高視聴率は1979年1月に放送した『エマニエル夫人』(註3)で22・5%でした。どれほど昭和の映画番組が視聴率を稼いだか、これだけでも充分に分かります」(同)


■レンタルビデオの快進撃


 しかし、映画番組は衰退を余儀なくされた。なぜなのか、民放キー局の関係者に解説してもらおう。

「原因の1つが、映画の買い付け費用の高騰です。例えば日本テレビは83年に『スター・ウォーズ』(註4)を、一説によると10億円で買い付けたと言われています」

 80年代なら視聴率30%台を確保できた。映画が終わってもチャンネルを変えずにいてくれるなど、メリットはあった。

 とはいっても、ヒット作と駄作のセット販売も珍しくなかった時代だ。いつしか民放側は“不良債権”の映画を抱え、オンエアに苦労するようになった。

「80年代になるとレンタルビデオが誕生します。その頃、映画会社とテレビ局は、邦画では公開から1年、洋画では2年の間を置くよう協定を結んでいました。

 一方でビデオは、公開から3か月で店頭に並びました。話題作ともなれば視聴者はテレビ放映を待つはずもなく、レンタル店に飛び込みました」


■減らなかった視聴率


 そしてトドメを刺したのが、番組表で簡単に予約が可能なうえに、ハードディスクに記録できるテレビと録画機の誕生だった。

「ドラマやバラエティ番組なら、リアルタイムで見て、翌日に友達と会話する必要性もあるでしょう。

 ところが映画の場合は、劇場で公開され、衛星放送やネットで配信され、レンタルビデオ店に並んでから、地上波で放映されます。

 放送翌日に友達と会話する必要がないので、録画組が増えます。そのためリアルタイムの視聴率は悪化するので、映画番組がどんどん終了するようになったのです」(同)

 ご承知のように、日本テレビはテレビ朝日と熾烈な視聴率競争を繰り広げている。「金ロー」がお荷物と見なされ、いつ終了してもおかしくないという時期もあったという。

 映画専門番組だった「金曜ロードショー」だが、2012年に「金曜ロードSHOW!」となり、単発ドラマやバラエティの放送も可能となった。

 だが「金曜ロードSHOW!」が映画を放映しても、それほど視聴率は下がらなかった。

「日本テレビが独占的に放映できるジブリ作品や、系列の読売テレビが制作している『名探偵コナン』シリーズ、ディズニーの人気作品をオンエアすることで底堅い視聴率を達成していました。

 更に追い風になったのがSNSです。2011年に『天空の城ラピュタ』(註5)を放送した際、1秒間にツイートが発生した数(TPS)が2万5088という世界新記録を更新したことが大きな注目を集めました」


■驚きのAI活用


 つまり視聴者は「金曜ロードSHOW!」を見ながら、SNSをチェックしたり書き込んだりする楽しみを見出したわけだ。リアルタイムの視聴を大勢の仲間で共有したと言える。

「昨年の場合、何と1993年日本公開版の『アラジン』(註6)を放送し、視聴率は15・1%でした。少なくとも1回は劇場やビデオなどで見ている視聴者が大多数だったと思います。

 にもかかわらず、『再び地上波でも見よう』と考えたのは、SNSが大きな追い風となったからと考えて間違いないでしょう」

 マイナビニュースは10月2日、「『金曜ロードSHOW!』GP帯唯一の映画枠で35周年 AI視聴率予測など新システム積極導入」の記事を掲載した。

 驚かされるのは、日テレがAIを活用し、番組の視聴率を底上げしているという部分だ。引用させていただく。

《人工知能(AI)による視聴率予測システムを開発し、4月から本格的に映画の買い付けに活用している》

《これは、興行収入、客層、映画サイトのレビュー点数、配信の有無、放送時期、視聴率実績など、過去5年程度のさまざまなデータから数値を予測する》


■映画番組復活の可能性


 今のところは「金曜ロードSHOW!」の一人勝ちという状況だが、他局も黙って指をくわえて見ているつもりはないという。

「近年、映画番組の価値が見直されています。テレビ朝日も18年1月に放送した『君の名は。』(註7)が17・4%、フジテレビも今年10月10日と17日に2週連続で放送した『鬼滅の刃』(註8)が、それぞれ16・7%と15・4%という視聴率を記録しました。

 何と言ってもテレビ局にとって嬉しいのは、10代から40代のファミリー層がリアルタイムで見てくれる点です。CMを流す広告代理店やスポンサーにとっては、待ち望んでいる視聴者層になります」

 有料の動画配信サイトに人気が集まり、レンタルビデオ店が減少傾向にあるのも、テレビ業界にとっては追い風だという。

「誰もが映画にお金を払いたいわけではありません。無料で、自宅で、家族揃って映画を見るテレビ番組は、コロナ禍の時代にもフィットしました。

 腕利きのスタッフを集め、キャスティングに力を入れても、ドラマやバラエティの視聴率が8%台というのは決して珍しいことではありません。

 それが映画作品のオンエアで10%の視聴率が取れるなら、関心を示す民放キー局も出るでしょう。夜9時台の映画番組が復活する可能性もあると思います」

註1:デヴィッド・イェーツ監督(56)、ワーナー・ブラザース配給。
註2:記事中の視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区、リアルタイム、世帯。
註3:ジュスト・ジャカン監督(80)、日本ヘラルド映画配給。
註4:「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」、ジョージ・ルーカス監督(76)、20世紀フォックス映画(現・20世紀スタジオ)配給。
註5:宮崎駿監督(78)、東映洋画配給。
註6:ジョン・マスカー監督(67)、ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ配給。
註7:新海誠監督(47)、東宝配給。
註8:2019年10月10日に「兄妹の絆」[外崎春雄監督:アニメプレックス配給(同年3月に期間限定で劇場公開)]、10月17日に「那田蜘蛛山編」(15話から21話を再編集した特別編)を放送。

週刊新潮WEB取材班

2020年11月20日 掲載

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