ノブコブ徳井が「千鳥」の面影を感じる若手「コウテイ」 第7世代なのに「昭和」な魅力とは

 平成ノブシコブシ・徳井健太がお笑いについて熱く分析する連載「逆転満塁バラエティ」。

 第7回目は「コウテイ」について。

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■「本格派」が優勝する大会


 今回ご紹介したいのは、コウテイ。

 ただ残念なことに、これまでの連載と違って、僕はコウテイに会ったことも話したこともない。だから、コウテイからすると、否定したくなるようなこともあるかもしれないけれど、彼らを見た時に僕が思ったこと、感じたこと、思い出したこと。そんなことを書いてみようかと思う。

 コウテイの名前は少し前から聞いていた。まず見た目のインパクトが強かった。

 髪の毛を逆立てた下田真生と、マッシュルームカットの九条ジョー。お揃いのワインレッドのスーツを着た二人は、2013年にコンビを結成した。僕が知らなかっただけで、関西の方ではさまざまな賞にノミネートされ、2019年にはかつてダウンタウンも受賞したことのある「今宮こどもえびすマンザイ新人コンクール 福笑い大賞」も受賞している。

 けれど僕が実際に映像で目にしたのは、2020年のABCお笑いグランプリ。かまいたちや霜降り明星なども過去に受賞している西のお笑いの登竜門で、売れる人や面白い人は、必ずこの門をくぐると言われている。

 この大会で特徴的なのは、本格派が優勝するということだ。本格派、つまり本当に面白い人。お客さんよりも、芸人や同業者が笑うような芸人。そのてっぺんが、ABCの覇者に輝くと個人的には思っている。

■「この人たちが優勝でしょ」という空気


 そんなABCお笑いグランプリは、これまでは関西でしか放送されなかったのだが、今年はABEMAで観ることができた。

 南海キャンディーズ・山ちゃんの絶品MCを堪能しながら配信を見ていると、最初からコウテイには優勝する風格が溢れ出ているように感じた。

 お笑いの大会で優勝する風格、オーラ、波動。

 M-1でいうと2005年のブラックマヨネーズさん、2006年のチュートリアルさん。

 キングオブコントでいうと2011年のロバートさん、2012年のバイきんぐさん。

 R-1グランプリだと2011年の佐久間一行さん。

 みなさん、圧巻、圧勝の見事な勝ちっぷりだった

 周りの芸人がもうお手上げというか、「いや今年はもうこの人たちが優勝でしょ」というような空気感が、会場や審査員を支配していく感覚。

 ゴリゴリと笑いを取り、お客さんから大きな笑いが起きれば起きるほど、その場やテレビで見ている芸人たちの心の中には、ポッカリと大きな穴が広がっていく。

「あー、見たことないくらい新しくて面白いなー、この人たちが勝つべきなんだろうなー」

 そんな集団心理がうっすらと伸びていくように働いて、結果爆発的に他を圧倒して優勝するケース。

 そんな空気を、今回のABCお笑いグランプリのコウテイには感じた。


■その時にしかない「輝く一瞬」


 だからコウテイのこの賞レースでの優勝は、今年でなくてはきっとダメだったんだろうなとも思う。

 思い詰めていたり、コンビ仲だったり、経済的な理由だったり、環境や体調のせいだったり。

 とにかく、人というのはその時その瞬間にしか吐き出せない「輝く一瞬」というものが確実に存在する。

 今年、絶対決めてやる――。その思いが空回りせずに自分の体を走り抜け、そして世間に解き放たれて、そのまま同じように大衆が振動する。

 それってなかなか有り得ないことで、本当に一瞬の煌めきで、偶然と奇跡が重ならないと生まれないひと時で……。とにかくコウテイさんおめでとう。

 と、言いたい。

 連絡先知らないから言えないけど。


■優勝後の特番で…


 ABEMAではその後の「優勝特番」も生放送で流れた。

 その番組は、2017年ABCお笑いグランプリ優勝、2018年M-1グランプリ優勝の霜降り明星がMCを務めていた。

 これがまた、最高に良かった。

「最高」なんて平凡すぎる表現だと自分でも思うが、本当に最高に良かった。

 偶然にもコウテイの下田くんと霜降りの粗品は、プライベートでも仲が良く、苦楽を共にしていたらしい。ここが「最高に良かった」理由のひとつだ。

「え? 芸人さんってみんな仲良いんじゃないんですか?」

 そんなふうに思う人がいるかもしれない。バラエティ番組で楽しそうに絡んだりロケをしたりする姿から、そんな妄想を膨らませる人も多いかもしれない。

 が、当然のことながら、芸人はみんながみんな、そんなに仲良くはない。

 仲良くないというか、プライベートではそれほど互いを干渉し合わない。

 自分の考えるお笑い観や感性が合う人間としか、深い付き合いはしない。

 けれどそれはどの社会でも同じだろう。

 もちろん同じ会社の人間と仕事はするだろうし、嫌いではないだろう。が、自分に幸せなことがあった時、不幸なことが訪れた時、その感情を共有したいと頭に思い浮かべる相手は会社内でもごく僅かなはずだ。


■粗品が流した「言葉にならない涙」


 だから自分の可愛がっている後輩、可愛がってもらった先輩が、自分の目の前で、しかも自分がMCの番組で優勝を果たし、そのまま番組で一緒に絡むなんて奇跡は、なかなか起こらない。

 それが、起こった。

 粗品は泣いていた。

 そりゃそうだろう。

 たかがお笑いの大会と言われたらそれまでだ。そもそもこの大会自体、一般的にはそれほど知られていないし、優勝したことだって、何年か経ったら忘れてしまう人が多いだろうと思う。

 それでもきっと本人たちは「最後のつもり」で1年間頑張って、大会の本番中は無我夢中でなりふり忘れて走り切り、その姿をずっと見ていた隣のスタジオの同志は、そりゃ涙も流す。

 この大会で優勝しなかったら、コウテイは解散していたかもしれない。

 冒頭で触れた通り、僕はコウテイのことをほとんど知らない。なんなら、霜降り明星のこともほとんど知らない。

 けれど、解散しそうだな――そんな空気感がコウテイから出ていた。

 調べてみると、実際に一度は解散をしているらしかった。

 ネット上には理由も書いてあったけれど、本当の理由は分からない。

 いろいろある。友達や夫婦、仕事仲間といった関係と同じで、コウテイにも当事者にしか分からないことや伝えられないこと、伝える必要のないこと……さまざまにあるのだろう。

 だが結果として二人は解散し、そして、もう一度コンビを再結成することにした。

 語り尽くせぬ理由や感情が渦巻いたのか、それらも粗品は知っていて、言葉にもならないような涙を流していた。


■第7世代にない「昭和の匂い」


 が、これはすべて僕がテレビを見て感じた気持ちで、きっとこんなふうに考えるのは「古い」のだろう。

 今、テレビで見ない日はないほど活躍している「第7世代」と呼ばれる芸人。彼らを一括りにすること自体がそもそも申し訳ないのだが、それでも、第7世代はとても合理的な世代だと僕は思っている。

 効率重視の世の中と同じだ。

 コンビ仲は良いとアピールした方がいいし、打ち合わせもZoomでするし、ネタもパソコンで書いた方が便利だ。

 僕らの頃はコンビ仲を「悪い」と生々しく伝えたし、打ち合わせも深夜に顔と顔を突き合わせて行っていたし、ネタも不便だがノートに書いていた。

 時代も環境も変化したのだ。どちらが良い悪いを言うつもりはない。

 ところがこのコウテイという若手コンビは、調べれば調べるほどに古い。

 下田はカッとしやすく、ギャンブルで身を焦がす。九条はスタイリッシュな見た目にもかかわらず、親父ギャグを大げさな身振りで繰り出す。

 実に古い。

 これは僕ら世代の感性だ。

 だからこそ、とても応援したくなる。

 千鳥で最後だと思われたこの昭和芸人の背中を、コウテイに僕は感じた。


■小手先の器用さではない「輝き」


 ABCお笑いグランプリに優勝し、満を侍して「ワイドナショー」にコウテイが出演した回を観た。

 目の前には正に「皇帝」のダウンタウン・松本人志さんがいる。その隣には世紀の伏魔殿、東野幸治さんがいる。

 きっと二人は今まで体感したことのないような緊張をしたことだろう。

 番組内で、コウテイはコウテイなりの武器と培ってきた経験で戦っていた。

 関西のライブやメディアで手応えがあったであろうコンビでの合わせ技や、これまた昭和の臭いプンプンの顔芸、特に勝算もなく踏み出す重たい一歩と張り裂けんばかりの大きな声。

 血だらけのように見えた。

 松本さんと東野さんは指先だけで、子供と遊ぶかのように軽々とコウテイから「勝ち」を摘んでいく。

 だが、そんなコウテイの姿を見て、それでいいんだと思った。

 会ったこともないのに偉そうだが、本心からそう思った。

 小手先の器用さ、場に応じた対応能力と瞬発力。それらがテレビバラエティにはかなり重要で必要なことだとは思う。

 けれど今しかできないこと、出せない輝きを、確実にコウテイは持っている。そんな一生に一度あるかないかの波動を、目の前のことに捉われて隠しちゃいけない。

 スベればいいし、絶望すればいい。

 落ち込んで忘れられない後悔と、してもしきれない反省に、押しつぶされた方がいい。

 経験と知識で、器用さなんていくらでも手に入れられる。


■「全力で間違って走った記憶」の大切さ


 それはかつてのダウンタウンさんや東野さんもそうだったと思う。今思い出せば赤面してしまうようなことを、何度も繰り返したと思う。

 けれどそれは今となっては過去のこと。

 大天才にも、きっとあの頃の輝かしい恥部はもう二度と出せない。

 あの時、あの状況で、全力で間違って走った記憶は、必ず年老いてからプラスになって返ってくる。

 その時のため、今は誰がなんと言おうが自分たちで考えたことや感じたことだけをやっていった方がいい。

 こんなふうにしてみたら? それはやめた方がいいんじゃない?

 そんな二流三流のアドバイスは絶対に、無視した方がいい。

 全力で、間違って、今のコウテイにしか出せない輝きを放ち続けて欲しい。

 応援しています。

 なんだかただのファンレターみたいになってしまったけれど、その眩い光が放てなくなって、器用にLEDライトを照らせるようになれたら会いましょう。

徳井健太(とくい・けんた)
1980年北海道出身。2000年、東京NSCの同期生だった吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。バラエティを観るのも大好きで、最近では、お笑い番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集めている。趣味は麻雀、競艇など。有料携帯サイト「ライブよしもと」でコラム「ブラックホールロックンロール」を10年以上連載している。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw

2020年12月21日 掲載

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