“格付け”を夢見た「相席食堂」は惨敗 大阪の人気番組が全国進出する難しさ

“格付け”を夢見た「相席食堂」は惨敗 大阪の人気番組が全国進出する難しさ

「相席食堂」(ABCテレビ公式HPより)

 2月2日、お笑いコンビ・千鳥の大阪深夜の人気ローカル番組「相席食堂」(朝日放送)が初の全国ネット、しかもゴールデン枠の2時間スペシャルとして放送された。ところが、関東の視聴率は6・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)と撃沈。低視聴率に終わった報道を見て、千鳥ノブはTwitterに〈おいおい!恥ずかしい!!恥ずかしい!笑 お金出すから消せんか!?〉と綴った。大阪の人気番組はなぜ失敗したのか。

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「相席食堂」は、芸能人の行き当たりばったりのロケVTRに、千鳥が“ちょっと待てい!”ボタンを押してVTRを止め、内容に対してツッコむというバラエティ番組だ。

 18年1月にパイロット版が放送され、それが好評だったため、同年4月から25分の日曜深夜枠でレギュラー化された。お笑い番組と思ったらさにあらず。19年1月6日放送の、“有名人が生まれ故郷に凱旋SP”では、村上ショージが愛媛県今治市に帰省し墓参りしたVTRを見て、大悟が涙。その回は、19年1月度のギャラクシー賞月間賞を受賞するというオマケもついた。

 19年4月からは1時間枠に拡大され、「探偵!ナイトスクープ」などが放送される“ナイトinナイト”枠(23:17〜00:17)の火曜日に移動した。

 そして今回、2時間特番でゴールデンの全国ネットと、トントン拍子の大出世を果たしたわけである。


■誰が観るん?


 もっとも千鳥の2人は、最初から「相席食堂」の全国ネット・ゴールデン進出に消極的だった。

 1月19日の番組で全国ネット&ゴールデンが告知されると、ノブはTwitterにこう呟いた。

〈相席食堂ゴールデン。2月 さんま御殿の裏。誰が観るん!?〉

 大先輩のウラという気遣いもあったのだろう。だが、その気持ちは、全国ネットの本番が始まってからも変わらなかった。


■絶対!失敗しますから


ノブ:全国の皆さま、ようこそ「相席食堂」へ。

大悟:スタッフ!みんな堅いよ!このままだったら失敗するよ。

ノブ:そうなんですよ!今回はですねえ、いつもと違いましてゴールデンということで。

大悟:けど、普段通りやるのが一番やん!

ノブ:そうそう。

大悟:スタッフも「普段通りやりましょう」って言うんやけど、全然普段通りじゃない。

ノブ:あのね、拍手が分厚いのよ。

大悟:(声を大にして)大悟さん!入りまあすっ!

ノブ:みんな、戦じゃないから!バラエティなんですから。

大悟:なんかね、成し遂げようとしてない? ムリやで。

ノブ:あの、言っておきますけど……(力を込めて)絶対!失敗しますから。

――こんな後ろ向きなやりとりから番組はスタート。2時間スペシャルは、昨年のM-1グランプリのファイナリスト全10組が、コンビどちらかの故郷を訪ねるという企画だった。トップバッターが画面に現れると、即座に千鳥の2人が“ちょっと待てい!”ボタンを押した。

ノブ:ゴールデン、誰から始っとんねん!インディアンスの目立たないほう、“きむ”やなかいかい!トップはニューヨークとか、東京で馴染みのあるヤツやと思ってたわ!

大悟:せめて(インディアンスの相方)田渕(章裕)のほう、あーあの芸人さん、なんか見たことある、漫才師の!ってなるけど、きむだと学生の里帰りなのよ。

――きむを知らないという視聴者は少なくないはずだ。気を取り直して、彼らのVTRを見始めるのだが、わずか2分後。

ノブ:ホンマに失敗しとるやん!全国ネット・ゴールデンが失敗しょーる、危ない、危ない……。

大悟:ホンマにもう、プライドも何も捨てて、前のヤツ、面白かったの見ようよ!

――目も当てられないようなVTRを、千鳥のツッコミで楽しむのが番組のコンセプトではあるけれど……今回のVTRは酷すぎた。かくして初の全国・ゴールデンは6・9%に終わった。


■前例もあった


 一体、何がいけなかったのか。民放プロデューサーが言う。

「ABC朝日放送のスタッフとしては、いまや正月や改編期恒例の『芸能人格付けチェック』(テレビ朝日系/朝日放送)の夢よもう一度という気分だったのでしょう。『格付け』は、もともとABC制作の『人気者でいこう!』の1コーナーに過ぎませんでしたが、スペシャル番組として20%超の人気番組にまで育った。だからといって、『相席食堂』とは違います。『人気者でいこう!』は最初から東京でも放送されていましたし、大阪枠といえどもゴールデン枠でした。最初から全国視聴者向けの番組だったのです」

 同様にゴールデン枠で大阪制作の番組といえば、「秘密のケンミンSHOW極」(日本テレビ系/読売テレビ)、「ダウンタウンDX」(同)、「プレバト!!」(TBS系/毎日放送)、「ポツンと一軒家」(テレ朝系/朝日放送)などがある。

「いずれも東京のスタジオで撮っており、視聴者は大阪制作の番組とは思わないでしょうね。ただし、今回の『相席食堂』のような失敗例は、昔もありました。同じABCの深夜枠『探偵!ナイトスクープ』です。関西では88年に放送が始まり、視聴率は30%を超えることもあったお化け番組です。20年を経た09年3月に『探偵!ナイトスクープ ザ・ゴールデン』として、テレビ朝日系列の全国ネット・ゴールデンで放送されましたが、関東では5・3%しか取れませんでした。『相席食堂』と『ナイトスクープ』は大阪収録です。やはりローカルの番組をそのまま東京のゴールデンに持ってきても難しいのです」

 千鳥の言うように、“普段通り”にはいかないということなのか。

「それもあるでしょうし、ローカルだからこそ、放送コードも緩く、タレントも好き勝手に喋れると言われています。それもあって、レギュラーが軒並み20%超えだったやしきたかじんさんは、“東京へのネットは許さん”と言い続けていた。島田紳助さんも『クイズ紳助くん』(朝日放送)というお化け番組を持ちながら、東京へネットすることはありませんでした。明石家さんまさんも昨年、30周年を迎えた『痛快!明石家電視台』(毎日放送)がありながら、東京で流そうとしないのは、ローカルだからこその良さをわきまえているからだと思います」

 果たして、「相席食堂」がゴールデンに帰ってくることはあるだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年2月9日 掲載

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