寡作&不定期で焦らされる「京都人の密かな愉しみ」 BS契約を継続する最大の理由がこのドラマ

寡作&不定期で焦らされる「京都人の密かな愉しみ」 BS契約を継続する最大の理由がこのドラマ

「京都人の密かな愉しみ」NHK BSプレミアム(C)吉田潮

 NHKのBS契約を継続する最大の理由がこの番組。2015年から放送されている「京都人の密かな愉しみ」だ。知る人ぞ知る名所や名物、四季折々の祭や行事を京都人の目線で紹介するドキュメンタリーパートと、京都人の心模様を描くドラマパートがある。現在は料理研究家の大原千鶴(性格がほんのり悪そうで好感)が京のおばんざいを作る料理パートも加わった。

 ドラマは、若手俳優5人が職人の見習いとして励む「Blue修業中」が進行中で、1月30日に第4弾「燃える秋」が放送。BSプレミアムの中で最も好きな番組だが、いかんせん不定期&年1回あるかないかの寡作っぷり。続編を心待ちにする私は「さすが京都、イケズやわぁ」と思うが、焦らされている感じも、また好き。

 今回のドラマのテーマは秋だけに「恋」。前シーズンから連続登板の林遣都は庭師見習いの役だ。集中力低め、不甲斐ない青さがちょうどいい。師匠役の石橋蓮司が威厳のある名職人の風格で、対比が浮き出る。また、バーを営む母(秋山菜津子)が不甲斐ない息子にため息をつく距離感もいい。心穏やかに見ていられる師弟関係と親子関係である。

 陶芸家の父(本田博太郎)に激しく反発していたのは相楽樹だったが、降板して吉岡里帆に。父娘の反目はかなり収まり、吉岡は恋に走る。同じ窯元に勤める先輩職人(田中幸太朗)に恋をしたが、妻子持ちで別居中という半端な境遇を知るや否や興ざめ。速いし、青い。娘の青さをさらりと受け流すも、本心を探る母(宮田圭子)。実は、吉岡と遣都は高校時代に付き合っていた設定に。現在は友達枠だが、遣都はこっちでも優柔不断と不甲斐なさ、炸裂。

 そうそう、パン職人を目指す趣里は、京野菜農家見習いの毎熊克哉といつのまにか恋仲に。師匠でパン屋の甲本雅裕に結婚の相談をする(甲本は優しくて弟子の可能性を広げてくれる理想的な師匠ね)。最大の難関は頑固一徹・職人気質の父(上杉祥三)。半端なことを許すはずもなく、毎熊を殴りに行くも、逆にKO喰らってのびちゃう上杉。

 もともとはシニカルな京都人の毒が売りで、大人の皮肉が面白かったのだが、「Blue」はコメディ色が強くなった。何か大切なものが失われた気もするが、その分青さが増した感もある。

 そもそもコメディ要員の矢本悠馬は、さらに磨きをかける。実は5人の中でも最も天才肌。絶対味覚をもつ板前見習いで、回を追うごとに昇進してきた成長株。夫が失踪中の女将(高岡早紀)に恋をするも、東京店の板前に推薦されてしまう。

 職人を目指す若者たちがそれぞれ修業の最中で、師匠に怒られ、壁にぶつかる過程が好きだったが、恋に結婚に昇進となると、そろそろ実りの秋ということか。

 何気ない日常に宿る映像美、大胆な割愛でも十分伝わる心模様、仕草や間合いで感じる親子愛、すべての職人にあふれんばかりのリスペクト。頭で考えるのではなく、目で見て肌で感じる尊さと滑稽さがある。この複雑なコラボも京都ならでは。東京では無理かなぁ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

「週刊新潮」2021年2月18日号 掲載

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