「君は本当に変わらないね」って誰かに言われたとして…

■片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡32


 片寄に芽生えた新しい気持ちについて、小竹もまた呼応し、自身の社会貢献への想いについて綴る。昭和から平成、そして令和へ、変化を重ねる中でたどり着いた心境――。

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拝啓 片寄涼太様

 君がコーヒーを手渡したくなった衝動の「種」から芽が出て育ったような気持ちを、私は小さな子供たちや動物に感じる。

 この世界には、貧しいがために教育や医療を受けられない子供が何億何千万人といる。

 言葉にするのもためらうような虐待を受けている幼児もおそらく想像を遥かに上回る数で存在する。

 そして、責任感を持たない人間たちが手放したり繁殖させたりした数多の犬や猫が日々殺処分されている。

 そういう子供たちや動物たちのために、何か少しでも助けになることをするのが余生での私の役目だと思っている。

 それが他人から偽善行為だと思われても構わない。

 現に私も若かりし頃は、そういう慈善活動をやる人々(比較的裕福な)に対して、「まずは自分が贅沢するのをやめるべき」とか「他人からよく見られたいのでは」と歪んだ一抹の想いがあったのを否めない。

 私は未熟でかつかつの生活を送っていて、自分にひとかけらの自信もなかったから。

 けれど、今世で自分の子供を持たなかった私に課された残務が何かを考えたとき、私のやるべきことはこれなのだとこの歳になって思い至った。

 幼い子供にもペットにも罪などあってはいけない。

 ふと、昭和という元号に想いを馳せる。

 平成生まれの君が知らない、たった60年と僅かな間に、戦争と高度成長期とバブル期があった激動の時代。

 昭和に生まれ、その元号が平成に代わるまでを、新潟、東京、ロスアンジェルスと移り住んで過ごした私。まだ幼くて多感な年頃だったせいもあるだろうが、とにかくめくるめく世界の変化を目の当たりにしていた。

 昭和は、何かがとても真っ当で、何かが激しく狂っていた数十年だったのだと思う。

 すっかり記憶から消え去っていたはずなのに、あの波乱万丈すぎた幼少期と思春期の日々が最近やたらと鮮明に蘇るのである。

「あの頃はよかった」などと懐かしんでいるのではなく、すっかり忘れたと思っていた昔の自分が突然フラッシュバックしてくる。

 色んな出来事が私にもあった。実際に経験したことが、実はあれは絵空事だったのではないか、とか、映画のワンシーンを自分の体験だと思い込んでいるのではないかと錯覚してしまうほどあの時代は変化に富んでいた。

 何をあんなに怖がっていたんだろうと今じゃ笑える話、絶対に墓場まで持っていくと10代にして決めた秘密、誰にももしくは本当に親しい人以外には話していない沢山の事象。

 昭和があったからこそ私は、暇あり多忙あり幸あり不辛あり山あり谷ありの平成を何とか完走し、令和にたどり着けたのだとしみじみ思う。

 元号が令和になって、若さから遠ざかった私は、変化も山も谷も求めなくなった。いつも君に言っているが、淡々とゆらゆらと過ごすことが今の私には一番の幸せだ。

 って、また遺書みたいになってきちゃったよ。あーあ。

 大人になるにつれて、自分が変わっていくことは絶対に必要。人は変化と共に成長するから。

「君は本当に変わらないね」って誰かに言われたとして、それは誉め言葉でも何でもない。変わらない部分があるのは素敵なことだが、何も変わらない=何も成長していないこと。

 令和になってすぐから私たちを震撼させ続けている新型コロナウイルス。まだまだ不安が拭えないし、私はこんなにも長い間ひとつのことに怯えながら過ごした経験がない。

 けれど、いつか収束してくれることを昨日も今日も明日も信じている。

 過去から学び未来を創る、それが生きていくということ。何かを犠牲にした後には幸せがきっとやってくる。

 周りの人々が、大事な秘密を打ち明けるかのように、「2020年は土の時代から風の時代に変わったんだって」と言っている。

 時代がただただ良い方向へと変化を遂げるのを望むのは都合がよすぎるのだろうが、恐怖や不安に心を圧迫されるような日常は誰も望んでいない。

 ただ、「いつまでも続く当たり前の日常」なんてものは決してないことを、私たちは今こそ学ばなければならないのだと思う。

小竹正人

敬具

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS、25枚目のシングル「雨のち晴れ」が発売中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。 作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。

2021年2月28日 掲載

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