『ドラゴン桜』は『半沢直樹』にすがりすぎ!「春のがっかりドラマ」を斬る

(左上から時計回りに)鈴木亮平、吉岡里帆、櫻井翔、広瀬すず、長澤まさみ、阿部寛、石原さとみ、綾野剛

 4月から始まった春ドラマも大方が最終回を迎えた。

■春ドラマでがっかりしたのは……

「■今期は『大豆田とわ子と三人の元夫』(火曜夜9時・フジテレビ系)をはじめとして各局よいドラマが多かっただけに7月からの夏ドラマは期待値が高くなってしまうでしょうね」

 とはテレビウォッチャーの■吉田潮さん。良作が豊富な今期でもやっぱり生まれてしまうのががっかりドラマ。ライターの■田幸和歌子さんは、

「がっかりポイントは、この顔触れでもう少し面白くなったのでは?という残念感から選びました」

 前出の吉田さんは、

「■それなりに期待して見たけど面白くなかった作品を選びました」

 と、前置きしたうえで

 がっかりドラマを挙げる。

 1つ目は『■レンアイ漫画家』(木曜夜10時・フジテレビ系)。漫画一筋で恋愛下手な天才漫画家・刈部清一郎(鈴木亮平)と夢なし、彼氏なし、仕事なしの「ダメ男ホイホイ」と呼ばれるアラサー女子・久遠あいこ(吉岡里帆)が繰り広げるハートフルラブコメディー。初回視聴率は6・5パーセント、17日放送の最終回は5・8パーセントと最後まで低視聴率に苦しんだ。

『レンアイ漫画家』(木曜夜10時・フジテレビ系)に出演していた鈴木亮平と吉岡里帆

「■鈴木亮平が民放連続ドラマ初主演で新境地のラブコメということで楽しみにしていたんです。だけど役が合ってなさすぎる! 

 ■引きこもりの天才漫画家という役なんですが、鈴木亮平が演じると威圧的になってしまう。ドタバタ感を出そうとして彼が怒鳴ったりするのですが、あの体格でそれをやられるとビクッとしてしまう(笑)。鈴木亮平の生まれ持った迫力がこの役では裏目に出た気がします。例えば高橋一生のような優男が演じたらぴったりな役だと思うんですが」

 と、役者や原作はよいもののミスキャストを指摘する。

「ヒロインの吉岡里帆もかつて『カルテット』('17年TBS系)で演じたような性悪役のほうが合う女優さんだと個人的には思っています。一生懸命な女子役が鼻につくというか……」

 続いてがっかりに選ばれたのは、■石原さとみ、■綾野剛の恋愛もの■『恋はDeepに』(水曜夜10時・日本テレビ系)。

『恋はDeepに』(水曜夜10時・日本テレビ系)に出演していた綾野剛と石原さとみ

■キャストのよさが生かされていない!

 渚海音(石原さとみ)とツンデレ御曹司・蓮田倫太郎(綾野剛)の恋模様を描くラブコメディーという触れ込みで期待度が高かったが……。

「■この2人の大人の恋愛ものが見られると思って楽しみにしていたのに石原さとみの正体が人魚って……。最後は海に還るって……。

 ■見たいのはファンタジーじゃなくてリアルな大人の恋愛という意味でがっかりでしたね。

■ 綾野剛は『カーネーション』('11年NHK)の周防龍一役、『最高の離婚』('13年フジテレビ系)の上原諒役と女性の胸をときめかせる優しい男を演じるのがうまい。今回も優しい男ではあったけど、ストーリーが子どもっぽくてこれじゃない感が拭えませんでした」

 続けてヒロインの石原さとみについても、

「■石原さとみもリアルを上手に演じられる女優さんなので本当に残念! ヒロインが海から来た生物という段階で冷めてしまったんですよね」

 田幸さんも、同作を挙げる。

「石原さとみさんは可愛く、魅力的でしたが、プロモーションビデオみたいでした。それと、これは誰もが指摘していますが、『MIU404』や映画『ヤクザと家族』で改めて綾野剛の素晴らしさを感じていただけに、“見たい綾野剛はこれじゃない!”が大きいです」

 と、キャストのよさが生かされていない設定を指摘。

「SDGsムーブメントによる海洋汚染問題を取り上げる時代性、「現代の人魚姫」というテーマ設定は面白いと思うのですが、だとしたらもう少し脚本を練ってほしかった。もともとファンタジー実写モノは、日本はあまり得意じゃないジャンルですが、そうした難しい題材に挑んでいるからこそ、期待してしまう部分もありました」

■なんでもBLにしたがる……

 吉田さんが3つ目に挙げたのが『■あのときキスしておけば』(金曜夜11時15分・テレビ朝日系)。

『あのときキスしておけば』(金曜夜11時15分・テレビ朝日系)に出演していた麻生久美子、松坂桃李、井浦新。井浦新と窪塚洋介の息子・愛流が親子役なのが映画『ピンポン』ファンらの間で話題に

 ポンコツで夢も覇気もなく生きていたスーパーの従業員・桃地のぞむ(松坂桃李)。唯一の趣味が漫画を読むことだったが、ある日その作者・唯月巴(麻生久美子)とお近づきに。いい感じになり始めた矢先に彼女は事故で帰らぬ人となり、涙にくれる桃地の前に現れた見知らぬおっさん・田中マサオ(井浦新)は巴だった!という新手の入れ替わりものならず乗り移りもの!? 脚本は恋愛ドラマの名手で知られる大石静、と話題だったが。

「■恋愛ものが見たかったのに制作側が男同士のイチャイチャを見せることに固執しているような気がする。『おっさんずラブ』の成功以降、テレ朝はBL風をやりたがる。

■ そのせいで桃地(松坂)と巴(麻生)の恋愛がちゃんと描かれてなくて、巴を好きというより漫画家への尊敬の念だけが強くて、おじさんに変わった彼女を愛し続けることへの説得力がない。男と女としての恋をちゃんと描いてほしかった。

■ 主要キャスト3人は本当に上手で好きな俳優さんなので、私の欲しかったドラマではなかったという意味でがっかりですね。結局、巴は初回で死んじゃってるので、2人がハッピーエンドになるという結末ははなから否定されてしまったし」

 それでも『あのキス』の見どころはあるという。

「井浦新演じる田中マサオ夫婦(妻役はMEGUMI)の行方や、三浦翔平の振り切った演技など面白い箇所はけっこうあるんですけどね。キャストの期待値が高かっただけにがっかりのほうに入れさせてもらいました」

 吉田さんは最後に、

「今まで挙げた3作はがっかりはしたけど最後までは見ているんですよ。だから嫌いなドラマではないんです」

 と言う。

「最後まで見られなかったのはもうがっかりというより、個人的な好き嫌いで嫌いな作品ですね」(吉田さん)

 として挙げたのが、

『■ドラゴン桜』(日曜夜9時・TBS系)と『■ネメシス』(日曜夜10時半・日本テレビ系)だ。

■残念な部分が目立つ話題の2作品

『ドラゴン桜』(日曜夜9時・TBS系)に出演している阿部寛

『ドラゴン桜』は、'05年に放送された15年後を描いたもの。低偏差値の生徒が弁護士・桜木建二(阿部寛)によって東大を目指すというストーリーは変わらない。前作は、生徒役に長澤まさみ、新垣結衣、山下智久などを迎えて大ヒットを飛ばしたが。

「■なんで今ドラゴン桜?っていう。目新しさがないし、前のほうが面白かった。今回の生徒は最初からわりと優秀で、生徒と桜木の関係よりも大人たちの拝金主義のほうが色濃く出ていてあまり好きではない。

 ■さらに江口のりこ、及川光博、山崎銀之丞など前年の同枠でやっていた大ヒットドラマ『半沢直樹』から引っ張ってきたようなキャストが目立つのも大人の拝金主義が感じられて気になる(笑)。

『ドラゴン桜』(日曜夜9時・TBS系)で生徒役の南紗良、平手友梨奈、King&Prince・高橋海人、加藤清史郎。前作はすでに売れている生徒役だったため小粒ともいわれるが、南沙良などこの先期待大!

 田幸さんも、

「生徒たちは魅力がありますが、土地買収とか、受験と関係のない話の割合が多すぎる気がしますし、決めゼリフなどの演出も『半沢直樹』の成功体験にすがりすぎで、“TBS日曜劇場”色が強すぎに見えます」

 と、半沢臭を指摘。

「また、DV、毒親、発達障害など、さまざまな家庭の事情や社会問題などを盛り込んでいるのはいいと思いますが、いかんせん「東大受験」があまりに遠すぎる。

 “今”ならではのテクノロジーをもっと駆使した勉強法を

いろいろ盛り込んでくれるのではないかと勝手に期待していただけに、(YouTubeの活用などいくつかはありましたが)発見やワクワク感、納得感がなく、がっかり感が否めません」

 続いて、吉田さんは「嫌い」として、田幸さんは「がっかり」として挙げたのが『ネメシス』。

 ポンコツ探偵(櫻井翔)と天才すぎる助手(広瀬すず)が超難解な事件を次々に解決する一話完結もので視聴率は初回こそ11・4%で2ケタを記録したが、徐々に落ち込み第5話からは7%台と低迷。

『ネメシス』(日曜夜10時半・日本テレビ系)に出演していた嵐・櫻井翔と広瀬すず

「■視聴率を参考にはしていませんが、変動が大きいものはそれなりに意味があるのではないでしょうか。櫻井翔のポンコツ役はハマっていてよかったのですが、探偵ものと特殊能力者という手あかがつきすぎた設定がちょっと好きになれない」(吉田さん)

 田幸さんも、

「広瀬すず×橋本環奈の“眼福”感や、江口洋介、仲村トオルなどのおじさん勢、豪華ゲスト俳優陣、入江悠監督ということで期待しましたが、

ちょっと寒いパロディーだらけのガチャガチャした前半からの、唐突に大きな話になるシリアス展開など、残念ながらついていけませんでした」

 しかしこれらは監督のせいではなく“日曜夜10時半”枠ドラマの縛りによるものと田幸さんは見ている。

「シリアスな中に変にギャグを入れようとすることでスベリがちな印象があります。

 高評価だった『3年A組〜』('19年)もラジオ体操などのギャグ部分が浮いていると思いましたし、『ニッポンノワール』('19年)なども。若者向け枠ということを意識しすぎているためか、極端な展開になるケースが多いことも気になります」

■良作も多かった春ドラマ

 がっかりもあればうっとりも。両者入り乱れて「忙しかった」(吉田さん)春ドラマたち。最後に「うっとりドラマ」を挙げてもらうと、

 今期はテレビ朝日以外全局で推しドラマがあった、と吉田さん。

「NHKは稲垣吾郎・吉田羊の『きれいのくに』(月曜夜10時45分〜)、永作博美・芳根京子主演の『半径5メートル』(金曜夜10時〜)、松坂桃李主演の『今ここにある危機とぼくの好感度について』(土曜夜9時〜)。日本テレビは『コントが始まる』(土曜夜10時〜)、TBSは北川景子・永山瑛太主演の『リコカツ』(金曜夜10時〜)、川口春奈主演の『着飾る恋には理由があって』(火曜夜10時〜)。テレビ東京は『生きるとか死ぬとか父親とか』(金曜深夜0時12分〜)、『ソロ活女子のススメ』(金曜深夜0時52分〜)。魅力ある作品なのでぜひ見てほしいので説明は省きますが、7月からの夏ドラマは夏枯れと言われているうえに東京五輪が実現されれば重なるので、あまり期待できないのが残念ですね」

 夏枯れ伝説に負けない名作に期待大!

がっかりドラマを選んでくれたのは……
●吉田潮さん(よしだ・うしお)●テレビ評論家、ライター、イラストレーター。週刊新潮にて「TV ふうーん録」連載、テレビ『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める

●田幸和歌子さん(たこう・わかこ)●ライター。主な著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』、『KinKi Kids おわりなき道』、『Hey! Say! JUMP9つのトビラが開くとき』など

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