サザンオールスターズ、年代別『好きな曲ランキング』2世代で1位に輝いた“不滅の名曲”

サザンオールスターズの桑田佳祐

 毎年6月25日は『■サザンの日』! '78年のこの日、メジャーデビューしたサザンオールスターズ。あれから44年──、今でも日本屈指のバンドとして絶大な人気を誇る存在だ。

 ヒットがめじろ押しの彼らの曲の中で、好きな曲とカラオケで歌う曲を全国900人にアンケート。あなたの心に残る“メロディ”は何ですか?

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サザン好きな曲ランキング

 世代を超えて支持を得たのは『■TSUNAMI』。'00年のレコード大賞を受賞し、この年の年間シングル売り上げランキングでトップに輝いた曲。

発売初週で65万枚以上を売り上げた『TSUNAMI』。桑田本人もここまでヒットするとは思っていなかったという

■「音楽に興味を持った10代のころに流行っていて、初めて買ったCDがこの曲でした」(神奈川県 32歳男性 フリーター)

■「サザンの中でエロがなく、歌っても聴いても心に響く曲。ほかの曲も好きだけど、この曲が一番好き」(青森県 37歳女性 会社員)

■「カラオケで合唱するようにみんなで歌うと盛り上がります」(神奈川県 41歳男性 会社員)

「当時付き合っていた彼氏とドライブのときによく聴いていました」(東京都 51歳女性 会社員)

 音楽評論家で、サザンオールスターズについての著書もあるスージー鈴木さんは、

■「彼らがデビューした'70年代後半から'80年代あたりを知らない30代の層には、大ヒットした『TSUNAMI』がサザンの代表曲になるのでしょう」

 と、解説。確かに、年代が上がるにつれ『TSUNAMI』の票数が落ち、3枚目のシングル『いとしのエリー』('79年)やデビュー曲の『勝手にシンドバッド』('78年)が上がってきている。『いとしのエリー』については、

■「ドラマ『ふぞろいの林檎たち』でここぞ、というときに流れるこの曲の印象が強いです」(東京都 49歳女性 専業主婦)

■「初めて聴いたときからメロディーが耳から離れず、ファンになったきっかけの曲です。ずっとファンだけど、この曲を超える曲はまだありません」(北海道 52歳男性 公務員)

「リアルタイムでは知らなかったけど、“懐かしのメロディー”みたいな番組で初めて聴いて、いい曲だなと思いました」(大阪府 34歳女性 パート)

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全国男女900人が選ぶサザンで一番好きな曲

 そして、デビュー曲『勝手にシンドバッド』にはこんな声が。

サザンの名前を世の中に定着させたデビュー曲『勝手にシンドバッド』

■「コンサートで最高に盛り上がる曲。40年以上たっているとは思えないパワーがある」(大阪府 54歳男性 会社員)

「カラオケで“今何時!”とみんなで騒げる。歌っていて楽しい」(埼玉県 57歳女性 専業主婦)

「初めて聴いたとき、衝撃的だった。何を言っているのかわからなかったけど、耳に残るメロディー、軽妙な感覚にハマりました」(神奈川県 59歳女性 専業主婦)

 これらの曲が持つパワーについてスージーさんは、次のように話す。

■「'78年から'79年は『勝手にシンドバッド』『いとしのエリー』で、サザンが日本の音楽シーンに新しい風を吹かせた時期なんです。

■ この2曲は1枚目と3枚目のシングルですが、対極的な作品です。『勝手にシンドバッド』ではジョギングパンツで大騒ぎしながら走り回って歌っていた兄ちゃんが、ビートルズのようにメロディアスないい曲を書いた。どちらも衝撃でしたよ」

 そして「何を言っているかわからない」という意見には、桑田佳祐が紡ぐ歌詞の世界についてこう説明。

■「確かに歌詞の内容もわかるようなわからないようなものが多いです。胸さわぎする腰つきって、どんなだよ、と僕もいまだにわかりません(笑)。でも、曲の2番で江ノ島が見えてきて、自分の家も近くなる、というくだりがありますよね。あの表現が、桑田佳祐のセンチメンタリズムなんです。

■ 光景が浮かんでくるじゃないですか。僕は大阪出身で江ノ島を見たことがなかったんですけど、あの歌詞を聴いたとき、大阪湾の向こうに江ノ島が見えました(笑)」

サザンといえば江ノ島

 次点も含めて、いずれの世代にも支持されている曲が『希望の轍』。桑田が'90年に監督を務めた映画『稲村ジェーン』の劇中歌として発表された作品だ。

■「サザン20周年のコンサートの1曲目がこの曲。それですごく印象に残っています」(愛知県 39歳女性 会社員)

「当時、好きだった人と映画館で一緒に映画を見ながら聴いた曲です」(北海道 42歳男性 会社員)

 この曲はサザンの中でも“特別枠”と、スージーさんは話す。

「キーボードの原坊が出産のために、'86年4月にサザンは1年間の活動休止に入りました。僕はそれ以前を“初期サザン”と呼んでいます。実験的でラジカルな楽曲を多数出しました。それ以降は日本を代表するバンドになったので“メガサザン”。

■『希望の轍』は'90年の発表ですが、“初期サザン”の薫りがするんです。『勝手にシンドバッド』『いとしのエリー』が野球の打順でいうところの3番バッター、4番バッターなら、『希望の轍』は5番、6番。“いぶし銀”のような存在です。

 大ヒットした『TSUNAMI』を今聴くと、僕は少し懐かしいと思ってしまうのですが『希望の轍』は永遠に色褪せない感じがするんです」

 この曲の立ち位置がわかりやすいのが、'18年の『紅白歌合戦』だとスージーさんはこう続ける。

■「平成最後の『紅白』で大トリをつとめ、『希望の轍』『勝手にシンドバッド』と2曲演奏されました。もはや国民的愛唱歌と言ってもおかしくない『勝手にシンドバッド』に並んだということで、この曲がどれだけの力を持っているかがわかりますよね」

 サザンといえば、さまざまなタイプの楽曲でファンを飽きさせない。中でもエロ路線の曲はファンの間でも評価が分かれる。

■「ものすごいタイトルと歌詞だな、とインパクトがあったことを覚えています」(熊本県 42歳男性 自営業)

「この曲をカラオケで歌うたびに爆笑が起こります」(東京都 49歳男性 会社員)

 と、こんな反応があったのが『マンピーのG★SPOT』('95年)。ファンの間では『シュラバ★ラ★バンバ』('92年)『エロティカ・セブン』と合わせて、『エロス3部作』と呼ばれることもあるという。

過激な詞の『マンピーのG★SPOT』。タイトルについて桑田本人は「ほかのフレーズを探したが出てこなかった」と語っている

■「エロを歌うことを目的としているというより、洋楽はもっとエロいじゃない?というのが桑田さんの中にあるのだと思います。

■ もともと彼のベースは洋楽。日本語だと歌謡曲はもちろん、ロックでもセックスを直接的に歌うことがほとんどなかった。そういう部分でも日本のロックの歌詞の領域を広げたいという意志があると思います」(スージーさん)

歌詞に隠された思い

 この“思い”は歌詞にも現れていると、スージーさんは解説する。

■「『夕方 HOLD ON ME』('84年)は“夕方”と“You've gotta”で韻を踏んでいます。同じアルバムに入っている『JAPANEGGAE』('84年)では英語の発音を無理やり日本語にして、“I could never”を“愛苦ねば”と置き換えたり。“初期サザン”のこういった実験的な試みが面白いんです。これも桑田さんの英語に対する妬み、憧れの現れなのかも。

全国男女900人が選ぶサザンで一番好きな曲

 洋楽に対する思いが強いからこそ、歌い方も英語っぽく発音するじゃないですか。それこそサザンのデビュー当時、日本語じゃないなんて叩かれたりしましたけど、変だと言われた日本語はベースに洋楽があったからなんです。それが今や、日本ロックの“普通”になっていますけどね」

 ここまでアンケートについて解説してきたスージーさんの、推しの曲は何なのだろうか。

■「1曲あげて、と言われたら僕は『メロディ(Melody)』('85年)ですね。個人的に自分の浪人時代という屈折した時代に聴いていたということが理由なのですが(笑)。この曲に続くのは……『ピースとハイライト』('13年)かな。歌詞については炎上したりしましたけど、ああいうあっけらかんとしたメッセージソングが大好きなんです。

 ある意味、桑田佳祐の真骨頂という感じがします。あとはそのときの気分などによっていろいろと変わりますね。あ、『勝手にシンドバッド』は殿堂入りということにしてください(笑)」

 デビューして40年以上、日本の音楽シーンのトップを走り続けているサザン。その魅力についてスージーさんは、

「国民的バンドでい続けられる理由は、桑田さん自身の中に内包されている、大衆の前で道化として振る舞う自分が好きということかなと。僕はこれが彼の“業”だと思っているんですけど。マニアックなことでなく、1億人の前で全員を喜ばせたいという気持ちが強いのでしょう。

 ■結果、シングル曲はカラオケで歌えば万人受けする、国民的サザンというものを形作っているのが大きいと思います。アンケートの、カラオケで歌う曲なんて、まさにこのことを反映した結果になっていますよね」

 そして、アルバムを聴くと──。

「そこにエロとか、コミックソングとかメッセージソングといった違うタイプの曲がそれぞれのアルバムに山ほどあります。2段構造になっているんですよ。この両輪の回し方が実にうまいんです。サザンが売れ続けているのは、桑田さんの大衆性と、狂気といったふたつの輪がバランスよく回っているから。

 ■とっつきやすいシングル曲から入った先に、マニアックな世界が広がっている。そこからが“サザン沼”の始まりです(笑)」

 今年で66歳になった桑田。まさに“円熟期”に入った彼は、これからどんな音楽でファンを楽しませ、また喜ばせてくれるのだろうか。その一挙一動から目が離せない!

PROFILE●スージー鈴木(すーじーすずき)●音楽評論家、小説家、野球評論家。『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『恋するラジオ』(ブックマン社)など著書多数。近著に桑田佳祐の歌詞の世界に迫った『桑田佳祐論』(新潮新書)がある。

(取材・文/蒔田 稔)

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