羽生結弦、北京五輪での“最後のお礼”翻して現役続行へ!4回転半成功にかける“一発必中”の決心

羽生結弦(JMPA代表撮影)

「5月27日から6月26日まで、幕張、名古屋、神戸、静岡の4か所で12公演を行ったアイスショー『Fantasy on Ice』(以下、『FaOI』)を終えた羽生結弦選手。スケーターやアーティストと楽しそうに過ごす写真が、出演者たちのSNSに次々と投稿されていましたよ」(スポーツ紙記者)

 コロナ禍によって3年ぶりの開催だったため、無事に公演を終えられたその喜びはひとしおだったことだろう。

「■7月1日からはフィギュアスケートの新たなシーズンがスタートしました。本格的に大会が始まるのはまだ先ですが、実戦に向けて気持ちを切り替えていることでしょう」(同・スポーツ紙記者)

 6月18日にはスポーツニュース番組『S-PARK』(フジテレビ系)に出演し、『FaOI』への意気込みや“夢”にかける思いについて明かしていた。

「4回転半というジャンプに向けて、絶対に夢を手に入れるんだという自分の決意表明じゃないですけど……。(中略)■芯の中には4回転半に向けての強い信念があって、その軸は絶対にぶれない」

取材陣に“最後のお礼”をしていた

 また、新シーズンのスタートに合わせて日本スケート連盟のホームページも更新された。

「世界選手権で初の王者となった宇野昌磨選手や、北京五輪と世界選手権でどちらも銀メダルに輝いた鍵山優真選手に加えて、■羽生選手も特別強化選手に名を連ねていました。“今シーズンもより高みを目指して頑張ります”というコメントも発表しており、引き続き、その活躍を見ることができそうですね」(前出・スポーツ紙記者)

 しかし、今年2月の北京五輪では記者に向けて、“最後のお礼”をしていた。

「ジュニア当時から取材してくださっている方もいますし、担当が変わってしまった方もいますが、この演技はもうみなさんに見てもらえないかなって思って。“それはそれでいいか”なんて思っていたんですけど、もし■僕を取材することを選んでいただけるのであれば、やっぱりみなさんへの感謝の思いを込めたいなと思って、今までの道のりを滑っていました。こんな練習でも見ていただいて本当にありがとうございました」

 こう話すと、深々と頭を下げて一礼した羽生。そして、後に続けた言葉は、さらに意味深で……。

『FaOI』静岡公演では、羽生結弦らは和風の高級ホテルに宿泊(ジェイソン・ブラウンのSNSより)

「僕はいつも誠意を持って対応してきたつもりですが、記事を書くことによってみなさんもいろんなことを言われたり、僕自身も傷ついたり、本当にいろいろあったと思います。■ここまで羽生結弦という媒体をすごく大切にしてくださって、ここまで成長させてくださって、本当にありがとうございました」

 “近く引退を発表するのでは?”と思わされたと話すのは、現地で取材していた記者の1人。

「惜しくも転倒してしまいましたが、4回転半が初めて国際スケート連盟から認定されて競技を終え、エキシビションに向けて練習をしていた期間のことでした。■“これまでのスケート人生で落としてきたものを全部”と、羽生選手の歴史を振り返るような9曲での練習を終えての出来事だったので、あまりに衝撃的で……」(現地で取材した記者)

足の状態がよければ4回転半を跳べる

 その後も気持ちは揺れ動き続けていたが、再び4回転半への道を進む決意を固めた羽生。今シーズンで北京五輪の雪辱を果たすことができるのだろうか。成功の可能性をフィギュアスケート評論家の佐野稔さんに聞いた。

「北京五輪での4回転半はアンダーローテーション(回転不足)の判定でしたが、成功まではもう少し。ただ、当然気合だけでは跳べませんので、しっかりとした練習の裏付けが必要だと思います■。4回転半は着氷が重要ですし、北京五輪でケガをした右足が、練習を重ねる中でそれに耐えうるだけの状態なのか……。足の状態がよければ、可能性はあると思います」(佐野さん、以下同)

 羽生は“みなさんが見ている前で(4回転半を)降りたい”とも話しているが、悲願の達成はいつになるのか。

「いちばんいいのは、■国際スケート連盟の公認大会で跳ぶことですよね。9月から始まる『チャレンジャーシリーズ』や、10月からの『グランプリシリーズ』、来年3月の『世界選手権』など、どの大会に出場するかはまだわかりませんが、羽生選手の場合は『グランプリシリーズ』か『世界選手権』の可能性が高いでしょう。例えば、■12月の『全日本選手権』で4回転半を成功させたとしても、国際スケート連盟の認定にはなりませんから」

 とはいえ多くの選手は、いきなりこういった場所で挑むわけではないという。

「新しい技をやる場合■、まずは練習で成功させて、エキシビションやアイスショーで試して、試合につなげていくのが、一般的な段階としては望ましいと思います。いきなり試合で挑戦するのではなく、お客さんのいる緊張感のなかでどのくらいできるのかを見ながら、調整していくのです」

経験を重ねる段階にない選手

中学1年のあどけない羽生結弦と田中刑事('07年『全日本ノービス選手権』公式パンフレットより)

 しかし、羽生はアイスショーを終えたばかりなので、試す場がないまま実戦を迎えることになるが……。

「普段から曲をかけての練習もしていますし、試合前の公式練習は観客も入った緊張感のある状態。■多くの経験を積んでいる羽生選手であれば、練習である程度安定して跳べるようになっていれば、公式練習で調整すれば大丈夫でしょう」(スポーツジャーナリストの折山淑美さん)

 五輪王者、世界王者のタイトルをそれぞれ2度つかんでおり、北京五輪もコーチなしで戦い抜いた羽生には、“一般的な段階”を踏む必要はなさそうだ。

 では、折山さんは気になる羽生の初戦をどうみるか。

「この2年、羽生選手は『グランプリシリーズ』に出場せず『全日本』に挑んでいましたが、完成しきった演技を見せていましたから、『全日本選手権』と『世界選手権』だけでもよいと思います。多くの選手は、プログラムを海外の審判に印象づけたり、審判の判定を見たりするために『グランプリシリーズ』などの国際大会に出ますが、■羽生選手はすでに大会に出て経験を重ねるという段階ではありません。ですから、『全日本』と『世界選手権』だけでも、4回転半を成功させる可能性は十分にあると思います。それほど、超越した選手なのです」

 ゆづの演技が見られる機会が少ないのは寂しいけれど、“一発必中”で北京のリベンジを果たしてほしい!

佐野 稔 元フィギュアスケート選手。'76年インスブルック五輪に出場経験があり、'77年世界選手権では3位となった。現在は複数メディアでフィギュアスケートの解説をしている

折山淑美 '90年代初頭からフィギュアスケートを取材し、'10年代からは羽生結弦を丹念に追っている。'21年には羽生との共著『羽生結弦 未来をつくる』(集英社)を刊行

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