飯島直子・松本明子と『DAISUKI!』を成功させた中山秀征、伝説のバラエティー復活で期待される“再評価”

松本明子と中山秀征と飯島直子の『DAISUKI!』トリオ

 '90年代に絶大な人気を誇った深夜番組『DAISUKI!』 が8月3日、BS日テレの『旅する水曜日』枠で『DAISUKI! 2022夏』(夜9時〜)として22年ぶりに復活する。このニュースにSNSなどでは「懐かしい」「うれしい」「絶対見る」などの声にあふれた。

■大橋巨泉は“趣味を仕事にした”

 芸能評論家の宝泉薫さんにこの一夜限りの復活について聞くと、

■「『DAISUKI!』はマイナスな理由で終わったわけではなく、高視聴率の中、松本明子の出産のために幕が引かれた番組です。22年ぶりとはいいますけど、13年前に中山秀征が司会していた日本テレビ系の『おもいッきりDON!』 でもコーナー的な復活はありましたよね。例えば、これがフジテレビ系の『SMAP×SMAP』の一夜限りの復活だったら度肝を抜かれますけど、そこまでの驚きはないですね」

 と、冷静な分析。若い世代に向けて番組の内容を説明すると、『DAISUKI!』は'91年〜'00年に土曜深夜に放送されていた番組。中山秀征、松本明子、飯島直子の仲良し3人組がゆる〜くいろんな遊びを体験。花見をしたり、スーパーやディスカウントショップで買い物をしたり、物件を探したり、人間ドッグを受診したり……。

「すでに語られていることではありますが、街歩きのような緩い内容のものをそのままダラダラと流すことを、初めてフォーマットとして提示して成功した番組ですね」(宝泉さん、以下同)

 現在のバラエティー番組のあちこちで散見される企画の“元祖”がこの番組にはあると言われている。例えば、宝くじ企画は『10万円でできるかな』(テレビ朝日系)、街歩き企画は『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系)、買い物企画は『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)、飲酒トーク企画は『二軒目どうする?〜ツマミのハナシ〜』(テレビ東京系)や『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ系)……などが思い浮かぶが、

■「『DAISUKI!』はその番組名がすごく曖昧なように、間口がとても広がった。そのため、その後に出てきた番組は“そういえばこういうの、『DAISUKI!』にもあったよね”といった印象を抱きますが、ここではっきり言っておきたいのは、現在バラエティー番組でよく目にする企画の数々は別に『DAISUKI!』が始まりではないということです」

 宝泉さんは、『DAISUKI!』は『11PM』の流れを汲んでいると指摘。『11PM』は、日本テレビ・読売テレビの制作で、'65年〜'90年の平日夜に放送されていた。司会は大橋巨泉さん、藤本義一さんら。

「■大橋巨泉さんは基本的に“趣味を仕事にする”をやった人。あらゆる趣味を番組内で見せていました。それが昭和の高度経済成長期の忙しくて遊べない日本人に、遊びの疑似体験としてピタッとハマった。同時にエロも満たす番組でした。ちなみに、飯島直子は『11PM』のカバーガールとしてデビューしています」

デビュー直後の飯島直子

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 当時の深夜番組は『オールナイトフジ』(フジテレビ系)や『ギルガメッシュないと』(テレビ東京系)などお色気たっぷりのものが人気を博していた。

■「あのころ、深夜番組は女性が見るものじゃないとされていたと思います。男性発信で、男性視聴者を想定して制作されていた。『DAISUKI!』はそこを疑ってみたわけですね。時代の流れで『11PM』は終了しましたが、同じ日本テレビということでスタッフがカブっている部分もあった。『11PM』からお色気を抜いたのが『DAISUKI!』。深夜に男女関係なく見られる番組を誕生させた、その功績は大きいと思いますね」

■中山秀征に代わってから番組がヒット

 実際に盛り上がるのはパチンコや宝くじ、競馬などのギャンブル性の高い企画だったが、

「それだけだとオヤジ臭くなりすぎる。なので、女子受けしそうな季節のイベントなども取り入れていました。また『11PM』は遊びのプロが遊びを指南する感じでしたが、『DAISUKI!』は遊びの素人たちが遊びを体験するといったテイスト。『11PM』よりもずっと腰が低く、それも新鮮で受け入れられやすかったんだと思います」

『11PM』を彩ったカバーガールも、『DAISUKI!』ではCM前のアイキャッチで“大好き”と叫ぶ爽やか女子に。

■「女の子の役割が完全に変わっているんですよね」

 このアイキャッチには若き日の篠原涼子や仲間由紀恵、上原さくら、辺見えみり、原千晶らも出演し、羽ばたいたとされているが、

「■アイキャッチの女の子は固定ではなかったと思います。9年も続いた番組ですから、あまた出演した中から、何人かは売れっ子になっただけの話で。『DAISUKI!』でブレイクしたわけではないですよ(笑)。もちろん芸能プロダクションやドラマのキャスティングに携わる人、雑誌を編集する人などは注目していたと思いますが」

 実は番組開始当初、中山秀征は出演しておらず、メンバーとして出演していたのは吉村明宏だった。

「■スタートの1年後、中山秀征に代わってから番組はヒットしたんです。それまでは正直、パッとしない番組でした。それが、中山秀征を含む3人が東京の下町を歩くだけで12〜13%の視聴率を取るように。中山秀征というのは、女性を気持ちよくさせる達人のようなところがあって。松本明子や飯島直子を気分よくロケさせていたのは、画面を通しても伝わってきましたね。

 ■それは深夜番組をあまり見たことがなかった女性たちにとっても、すごく心地いいものだったと思います。中山秀征には、いい意味で女性が求めていたバラエティー感覚があったんだと思います」

『DAISUKI!』がスタートした'90年代初頭、バラエティー番組といえば『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)、『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系)、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)など、作り込まれた笑いが主流だった。

「ビートたけしや松本人志などが身を削ってやっているようなストイックな笑い、ハードで硬派な笑いですよね。日テレ系の『スーパーJOCKEY』には“熱湯CM”なんて人気コーナーがありましたけど、『DAISUKI!』は当時“ぬるま湯バラエティー”と言われ、賛否両論があったのも事実です」

 ここで宝泉さんは、消しゴム版画家でコラムニストだったナンシー関さんの存在を引き合いに出す。

■「彼女が中山秀征を目の敵にしていた話は有名ですよね。“中山秀征がお笑いを名乗ることが許せない”と。“芸能人が芸以外のものをさらしてもつまらない”というのが彼女の持論でしたから」

■中山秀征の面白さとは

 ナンシー関さんいわく、ギリギリ許されるのは、ビッグ3(ビートたけし、明石家さんま、タモリ)のゴルフ、そして松方弘樹さんや梅宮辰夫さんの釣りまで。

「つまり、自分たちとはまったく違う世界の人が何かやってるから見る価値があるのであって、自分たちと大して変わらないような人間が、何か趣味を興じているようなものを見ても全然面白くない、というのが彼女の意見だったわけです。

■『DAISUKI!』は視聴者の日常と地続きにあるバラエティーだったわけですが、結果的に今の時代の状況を見ていると、意外と芸能人の日常を見せるだけの番組がまあまあ数字(視聴率)を取っているんですよね。硬派と軟派、どちらの笑いが面白いかは別として、ぬるま湯の心地よさみたいなものが時代とともに主流になってきたことを改めて感じます」

『DAISUKI!』を成功させた中山秀征は、『THE夜もヒッパレ』『TVおじゃマンボウ』と日本テレビの番組に次々に抜擢され、しっかりヒットさせていく。

■「中山秀征は緩さを体現しつつ、ものすごくいい仕事をしていたんですよ。'90年代、その評価はとても高くて。ある意味、時代を作った人でもあると思います。当時、日テレ系でみのもんたがやっていた『午後は○○おもいッきりテレビ』を引き継ぐのは中山秀征ではないかと業界では目されていましたから」

次男の活躍に一喜一憂する中山秀征と妻の白城あやか

 現在、中山秀征が『シューイチ』(日本テレビ系)で日曜朝のMCだけにとどまっていることは、むしろ失速感があると宝泉さん。

「■中山秀征は結局、いろんなことをやれる面白さっていうことなんだと思います。それはストイックな芸能論でいうと邪道なんですが、ここ10年くらいで“芸能ってもしかしたら、そっちこそ王道なのかもしれない”という雰囲気が出てきました。例えば現在、松本人志は『人志松本の酒のツマミになる話』やフジテレビ系の『ワイドナショー』などもやっていて、硬派なコントだけで生きているわけではないですよね。

 ■テレビというメディアの地位が昔とは変わってきた中、結局、今の芸能人はマルチに向かうしかない、みたいなところがあるように思います。だから、そういう意味でも、今回の『DAISUKI!』の復活が、“中山秀征再評価”につながったら面白いなという気はします」

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

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