小田和正や松任谷由実が提供した「校歌」にも使用料が? JASRACの“著作権事情”

「校歌」を作ったミュージシャン。左から布袋寅泰、小田和正、松任谷由実

■《子どもの学校の校歌にJASRACが物申しているらしい。校歌の歌詞を記載できないって、それJASRACに金を納めろってことやんな。すげえわJASRAC》

 9月中旬、ツイッター上にこんな投稿がなされ、ネット上で波紋が広がった。投稿には学校から配布されたプリントの画像も添付されており、そこにはこんな記載が……。

■《JASRACからの指導により、卒業式などの式典のご案内に校歌歌詞を掲載できなくなっています》

 自校の校歌であるにもかかわらず、歌詞を印刷物に掲載することが自由にできないとは、どういうことなのか。

 一般社団法人『日本音楽著作権協会』こと『JASRAC』の担当者も、この投稿を把握していたようだが、

「■こちらとしてはそのような指導をしたり、使わないでくれという主張はしていないんですよ。今回のことについては事実関係がわからないので、こちらとしても、なぜ掲載できないのかお答えすることができません」

 と話したうえで、一般的な事例について説明する。

「JASRACが許諾の対象としているのは、あくまで当方に権利を預けている楽曲だけです。著作権法では、歌詞や楽曲を使用するときは、作った人の許諾が必要です。しかし例外もあり、学校教育における授業では、基本的には自由に他人の著作物を使用することができます」(担当者、以下同)

■学校行事の印刷物にも“著作権”

 ただし、これにも条件があるそうで、

「■例えば1クラスの人数分だけ歌詞が記載された印刷物を配布するのは、許諾は必要ありません。運動会や卒業式のような全校生徒が集まる場合で、全員に配布するときは、著作権法35条の《部数》という項目に照らし、著作権者の利益を不当に害する部類に入るものとして、許諾が必要となっております」

 要は学年全体や学校全体で行う大規模な “授業”や“行事”で、歌詞を掲載したものを配布する場合には許諾手続きと使用料が必要になる、ということだ。では、その使用料はいくらなのか……。

「■教育機関で使用する場合は、通常の半額になります。1曲の歌詞のみを印刷物に掲載する場合、100部以内は800円、1000部までが900円、2500部までだと975円。これに消費税がプラスされます。あくまで、JASRACに権利を預けている作家さんの場合です。学校のHPに校歌を掲載するのは無料です」

 良心的と感じられる価格だが、とはいえ学校行事に使う印刷物にお金がかかるなんて……と思った人も少なくないはず。その点については、

「■そもそもお金が発生しないケースがほとんどなんですよ。依頼主の学校が使用する場合には、使用料は請求しないでほしいという例外規定を設ける作家さんも少なくないですし、学校に権利を譲渡するケースもありますから」

 有名アーティストが作詞作曲した校歌を持つ学校は全国にいくつもあるが、どのように扱っているのか。各学校に話を聞いてみた。

■いっさいの許諾をえていない学校も

 神奈川県にある横浜創学館高等学校の校歌は、小田和正が作詞作曲したもの。

「■15年ほど前に、学校名を変えることになり、それに伴って校歌も変えることになったのです。そこで当時の学校長が、地元のミュージシャンにということで、本校の卒業生ではありませんが、小田和正さんに熱いメッセージを送ったところ、快く引き受けてくださいました」

 楽曲を制作するだけでなく、こんな“神”対応も。

「■学校に来ていただいて、合唱部に指導していただきました。10年たったときには、生徒会から一緒に歌ってほしいとお願いをしたんです。そうしたら、9月の文化祭に来ていただいて、生徒と一緒に校歌を歌っていただきました」

 透明感のある歌声でファンも多い小田。さぞ、その権利関係については厳しいのかと思いきや、使用料はゼロ。

「■入学式や卒業式などで校歌の歌詞を掲載して配布していますが、それは小田さんの個人事務所に許諾を得ています。本校の卒業証書はファイル形式になっているのですが、開くと片面は卒業証書、もう片面は校歌の歌詞を記載しています。小田さんは卒業式のときには必ず花束を贈ってくださいますよ」

 山梨県立笛吹高等学校では、『粉雪』などで知られるレミオロメンの藤巻亮太が作詞作曲した校歌がある。

 県立石和高校と県立山梨園芸高校が統合され、'10年4月に開校した。

「藤巻さんが石和高校の卒業生だったこともあり、本校の1期生が藤巻さんに校歌を作ってほしいとお願いしたそうです」

 と説明する。歌詞の許諾についてはどうか。

「■卒業式では、生徒と保護者や来賓の方々に配るリーフレットに歌詞を掲載しています。校歌を作った際に、学校長と当時の山梨県の教育長が、当時、藤巻さんが所属していた事務所から許可をいただいております」

 こちらも使用料はかからず、さらに今年6月には10周年を迎えたということで、藤巻は同校でライブも行った。

 元BOOWYの布袋寅泰が作詞したのは栃木県宇都宮工業高等学校の校歌。

「■作曲が本校の卒業生であるサックス奏者の渡辺貞夫さんで、その知り合いだった布袋さんに作詞を頼まれた経緯がありました」

 と明かして続ける。

「■卒業式で生徒のご両親には、校歌の歌詞が記載された“しおり”をお渡ししています。本校の生徒には、事前指導をしていますし、体育館内に歌詞が掲示してあるので、配布はしておりません。集会など校歌を歌う場面などでは、そのたびに事務所に問い合わせて対応しております」

 と権利関係には細心の注意を払っていると語る。

 いっさいの許諾を得ていない学校もある。その理由について長崎県立奈留高等学校は、

「教育に使用するということと、全校生徒が28名という少数なので、JASRACさんや荒井さんの事務所にも許諾申請はしておりません」

 と話す。作詞作曲をしたのは、ユーミンこと松任谷由実(旧姓・荒井)。母校でもなければ、出身地に縁があるわけでもない。五島列島の奈留島とのつながりはなにか。

「■本校は昔、島にある分校だったので、校歌がなかったのです。とあるラジオ番組に校歌を作ってほしいと1人の生徒が投稿したところ、荒井さん本人の耳に入り、'74年に作っていただくことになりました。結局、校歌は別に作ったのですが、せっかく荒井さんに作っていただいたので、“愛唱歌”として歌い継がれているんです」

 ユーミンは作曲の構想について、奈留島から出て行ってしまう人が多いので、出て行ってしまった人も歌える曲を作ったと語っている。曲を聴き、目を閉じれば、郷里の景色が浮かびそう。ほかにもさだまさしやつんく♂など、有名アーティストが作った校歌は全国にまだまだある。その学校のために作ってくれた校歌は、ずっと胸を張って自由に歌い継いでほしい。

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