同じ予算なのに「8万円の人」と「2万円の人」の差とは? 高見えする買い物術

※写真はイメージです

 洋服にバッグ、コスメにシューズ……シーズンごとに街にあふれる新作を前に目移りしては、衝動買いでムダ遣いしたり、何を選ぶか決めかねてヘトヘトになったり。買い物で、こんな経験をしたことはありませんか?

 名門ブランド・GUCCIの元店長として、顧客獲得数ナンバーワンを持続させた経験のある横田真由子さんは、■「モノ選びには“上質なものを少しだけ”=“ミニマムリッチ”の精神が大切」と言います。VIP客のモノ選びを目にするなかで女性としての優雅な生き方を学び、現在はライフスタイルコンサルタントとして活躍する横田さんに、後悔しない買い物をするための秘訣を伺いました。 

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■選択肢を絞っていくこと

 日々の暮らしは決断の連続です。

「今日、何を着ていくか?」「ランチに何を食べるか?」といった小さな選択から、人生を左右するような重大な選択まで、多くの決断に神経をすり減らす毎日です。

■ 情報もモノもあふれている昨今、選択肢が膨大であればあるほど、私たちは疲弊していきます。「これしかない」と言われるほうが、ラクなのかもしれません。

 昔、洋服を買おうと倉庫のように広いお店に入ったとき、色とりどりのフリースが天井までぎっしり並べられた棚の前で、途方に暮れたことがあります。選ぶ楽しみよりも疲労感のほうが大きく、結局、何も買わずに立ち去りました。この中から1着を選ぶことは、永遠に不可能のような気がしたからです。

 今なら間違いなく、定番の白か黒、もしくはネイビーの商品を選ぶので迷うことはありませんが、当時は「新色のほうが新鮮かな?」「たまには違う色がいいかな?」と、心が揺れるばかりでした。

 この経験から、自分が販売員をしていたときも、お客様は種類があればあるほど迷われて、買わずに立ち去るだろうと思っていました。

 そこで、気をつけていたことがあります。

 どのようなシーンでどんなふうに使いたいのか、ご希望やニーズをお聞きして、商品を3つまでに絞って差しあげることです。そして、それぞれのメリット、デメリットを的確にお伝えすると、自然と選んでいただけました。

■ ですから、買い物をする際に大切なことは、例えば「◯◯なシーンで」「こんな使い方をしたい」「こういったものと合わせたい」ということを、あらかじめイメージしておき選択肢を絞っていくことです。

■買い物にはひとりで行くのがベター

 前述したように、現代に生きる私たちは、ときに「決める」ということがストレスになっているのではないでしょうか? 洋服から生き方まで、選択肢が多すぎることは不安のもとです。ストレスを感じ、心がだんだん不安定になります。かつての私と同じで、天井まで並んだ色とりどりのフリースを常に見上げている状態に陥ります。

 決断しなければならない場面が多いから、知らない誰かが書いた口コミを信じて、思わずポチッと購入ボタンを押していませんか? 「安いから」ということだけを決め手にしていませんか?

 ■安易に買っては飽きて、また欲しくなっては買い、いらなくなって捨てる、を繰り返していくと、永遠に「本当に満足する決断ができない、不安スパイラル」から抜け出せなくなってしまいます。このスパイラルに陥ると、自分の好みや方向性さえ見失う恐れがあります。

 逆に、本当に満足したものを選択できたときには、目指すべき方向性がわかり、自信となるのです。

「誰が何と言ってもこれが最高」と誇れるモノを選べるようになるには、まずは自分のことをよく知ることです。■自分にとっては何が快適で、何が不快なのか、ひとりの時間に心の声をしっかり聴いて、それをごまかさないことです。時間をかけて何度も吟味することになりますが、■この「よく聴く」「よく見る」というプロセスが大事なのです。

 20代のころは、よく友人と一緒に買い物に出かけました。流行(はや)りのモノを次々と手に入れ、盛り上がっていましたが、2人で出かけると、どうしても友人の持ち物がうらやましくなり、同じモノを買ってしまいます。だんだんと自分らしさが何なのかがわからなくなり、「こんなことを繰り返していたら、生き方までブレてしまうな」と思ったことがあります。 

 それぞれの個性があるから、似合うモノはひとりひとり違います。なので、買い物にはひとりで行くことをオススメします。■どんなに流行していても、「私らしくないモノには手を出さない」「質の悪いモノは買わない」「納得いくまで試着する」、といったマイルールを決めると、時間をかけても本当に価値のあるモノを見極め、最高の選択ができるようになっていきます。

 流行遅れになることなど、心配しなくてよいのです。いつの時代も自分らしく、質の高いモノを着ている人は、一目置かれます。■情報を鵜呑(うの)みにするのではなく、実物を自分の目で見て、生地を触ったり、着心地を確かめることをしなければ、本当によいモノは見極められません。

 時間をかけても、自分にとって最上のモノを選んでいくプロセスは、真の「私」で生きていくことにつながります。

■洗練された「高見えコーデ」のコツ

 かつて私が憧れたお客様は、ビンテージのエルメスのジャケットに、無印良品のオーガニックコットンのTシャツというスタイルでした。

 今でいう「高見えコーディネート」です。1点だけ目をひく、コーディネートの核になるモノ以外はリーズナブルなアイテムでした。

 もちろん、そのお客様が高見えしていたのは、ぜい肉のない均整のとれたプロポーションだったことも大きいのですが、■「コーディネートは、抑えるべきところを抑えていれば、品格が保てる」と感じたのです。そのとき30代だった私は、これからは「品格」や「洗練」を意識する着こなしを目指したいと思いました。

 ほかにも、さまざまなお客様を見てきたなかで、■多くの洗練された女性の買い物術に共通していたのは「メリハリをつけること」でした。

 例えば、10万円の予算で上から下までコーディネートするなら、2万円のモノを5点買うより、8万円のモノを1点と、5千円のモノを4枚買うことをオススメします。

 なぜなら、前者は「2万円の人」になってしまうからです。同じ予算なのに、後者は「8万円の人」になります。

■ この8万円のモノを選ぶときは、きっといつも以上に熟考しますよね? 「自分の体形に合っているか」「色は飽きないか」「素材は上質か」「5年以上は着るか」など、安易に選ばないはずです。そうやって選び抜いた一着は、着続けるほど自分らしくなじみ、なくてはならない相棒となります。

 そんな一着を身につけていると自信がつき、所作も自然と洗練されていくのです。

 私が買い物術に影響を受けた女性がもうひとりいます。当時、私は20代、有名なスタイリストさんのアシスタントとしてアルバイトをしたことがありました。

 その女性は40代、仕事が乗りに乗っているころで、分刻みでスケジュールをこなす売れっ子でしたから、彼女のプライベートな買い物も頼まれていました。あるとき、「化粧品を買ってきてほしい」とメモを渡されました。

■ そのメモを見て驚いたのですが、洗顔石けんは、ドラッグストアで売っているハチミツ入りの500円くらいのモノ、化粧水もリーズナブルなヘチマコロンでしたが、クリームだけは2万円以上もする高級なモノでした。

 その女性は華やかでゴージャス、美しい肌に隙のないメイクがトレードマークだったので「500円の化粧品なんて」と驚愕(きょうがく)しました。このメリハリをつけた買い物の仕方は、若い私には衝撃的で、「なるほど」と勉強になったことを覚えています。

 経営者としても辣腕(らつわん)をふるっていたその方は、■「大切なところには惜しみなく投資し、ほかにも同じような効果が期待できるものは、徹底的にコストを抑える」という姿勢がありました。

 そのころ薄給だった私は、いつも「お金がない」と嘆いていましたが、■自分の使える予算の範囲内で、ちょっと贅沢するモノと、節約するモノを見極めれば、それなりに満足できることを学んだのです。当時、身につけたこのお金への接し方は、今でも実践している“ミニマムリッチな買い物術”につながっています。

横田真由子=著『本当に必要なことはすべて「ひとりの時間」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング刊) ※画像をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

<プロフィール>
■横田真由子(よこた・まゆこ) ◎ミニマムリッチ(R)コンサルタント/オフィスファーレ代表。株式会社ケリングジャパン(旧GUCCI JAPAN)販売スタッフとして有名人やVIP客の担当となり、3年で店長に昇格。顧客獲得数ナンバーワンとなる。VIP客の物選びに女性としての優雅な生き方を学び、独自の「大人エレガンス」を実践する契機となる。 
 2004年、『オフィスファーレ』を設立。ただ使い捨てるのではなく、選んだものを大切に手入れしながら愛し抜く姿勢に真の豊かさを感じ、「上質なものを少しだけ持つ人生」=「ミニマムリッチ(R)ライフ」を提唱し、セミナー、講演、執筆活動を行う。著書に『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング)など。

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