もうひとつの「Matt化」現象、花田優一・落合福嗣にも共通するアスリート二世の道

Matt

 昨年、話題になった有名人のなかでも、異色さでは群を抜いていたMatt。大晦日には『第70回NHK紅白歌合戦』にも登場した。天童よしみと共演して、彼女を「Matt化」させただけでなく、ピアノで『大阪恋時雨』を演奏した姿に驚いた人もいたはずだ。

■大活躍のMatt

 周知のとおり、父親はプロ野球・巨人のエースだった■桑田真澄。次男として生まれた彼も小学校時代は野球をやっていた。本人いわく、

《■父はよくマッサージをしてくれるんですが、いまでも僕の足を揉みながら、この足だったら凄い選手になっていたなんてちょいちょい言ってくるんで、本音は野球をやってほしかったんだと思います》(『GQ Japan』より)

 ということで、素質は十分だったようだ。しかし「■坊主にしたりとかユニフォームを着ることとか、土の上で何かをすることが嫌で」という理由から、ファッションや音楽、すなわち文化系の世界に憧れ、大学時代にブライダルモデルの仕事を始めた。

 そうこうするうち、独特のメイクが評判を呼び、あちらこちらから引っ張りダコに。マツコ・デラックスやローラといった有名人を次々と“Matt化”させたかと思えば、ソフトバンク「ワイモバイル」のCMでは父・桑田との共演も果たしている。

 有名アスリートの二世としては意外な展開だが、こういう人はほかにもいる。ちょっと前には、■花田優一が注目を浴びていた。平成の大横綱と呼ばれた■元・貴乃花親方の長男でありながら、靴職人になり、自身のラジオ番組まで持つ売れっ子に。ただ、今ではすっかり失速してしまった。

 肝心の本職で納期の遅れなどが告発され、信頼を失ったばかりか、自分の師匠だと説明していたイタリアの名匠に「弟子ではない」と否定される始末。どうやら、その人が教える専門学校で授業を受けただけの関係らしい。

 Mattも優一も、なぜ父とは違う世界に進んだのだろうか。いや、このふたりだけではない。桑田と同じ巨人で4番打者を務めた■落合博満のひとり息子・■落合福嗣も「声優界」という違う世界で活躍している。

■「オレ流」二世の落合福嗣

 一昨年から昨年にかけては、テレビアニメ『HUGっと!プリキュア』(テレビ朝日系)やアニメ映画『空の青さを知る人よ』などに出演。子供のころは両親とともに出たテレビでやんちゃぶりが注目されたが、最近はこんな発言をしている。

《■あと個人的に、植物を育てている女の子って素敵だなと感じますね。僕もガーデニングが趣味なんですけど、ガーデニングって毎日ちょっとずつ手入れをしないといけないから大変なんですよ》(『アニメイトタイムズ』より)

 なお、これは大ファンという百合系マンガ『あさがおと加瀬さん。』(新書館)についてのインタビューでのもの。アニメ映画になったときは、出演もした。彼の父は「オレ流」を貫くことで有名だったが、息子もある意味、オレ流の人生だ。

 そして、Mattの父もかなり独特な人である。「KKコンビ」としてともに甲子園を湧かせた清原和博によれば、高校時代、野球部員は学校で寝ているのが当たり前だったのに、休み時間にまでひとりで勉強していたという。

 プロ野球選手になってからは、バブル期に投資で失敗して「投げる不動産屋」と揶揄(やゆ)されたり、登板日漏洩疑惑で出場停止処分を食らったりした。その処分明けの試合から2試合連続で相手を完封してみせたこともある。こうしたメンタルの強さは、Mattにも受け継がれているのだろう。

 受け継がれているといえば、彼がピアノに出会ったいきさつを『うたコン』(NHK)でこう語っていた。

「■父がヒジをケガして、リハビリでピアノをやってたんですよね。そのころ僕は、小学校1年生くらいのときで、それをきっかけにピアノを始めて、独学でここまでやってきて」

 当時、桑田投手がピアノを始めたことは異色のリハビリとして話題になった。変わり者と呼びたいほど独創的で、メンタルの強い父を見て育ったことは、彼に大きな影響をもたらしたはず。だからこそ、親と同じ道を選ばず、ありきたりでない生き方を堂々と突き進んでいるのではないか。

 オリジナルな生き方を貫くという意味で、この3人の父は似たタイプに思える。それが息子たちの個性的な生き方につながっているのだろう。

 今は子供が親と違う道を選んでも、何の問題もない時代。今後もアスリート二世のなかには、あえて文化系を目指すような人が出て来るに違いない。ただ、さすがにMattを超えるほどの存在はなかなか現れないだろう──。

PROFILE
●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

関連記事(外部サイト)