吉本興業、芸人のYouTube本格進出で生まれた「テレビ業界からの不信」

カジサックとヒカキンのコラボ動画もさっそくアップされた(カジサックのYouTubeチャンネルより)

 いまだ収束の兆しが見えてこない“新型コロナウイルス”。経済の混乱は著しく、倒産する大手企業まで出始めている。各業界が受けるダメージは計り知れず、エンタメ業界も厳しい状況が続いている。

 そんな中で4月、吉本興業とクリエイターサポート事業を展開している『UUUM』が資本業務提携を締結したことが発表された。それにより、今後は吉本に所属するお笑いタレントのYouTubeチャンネルをUUUMと共同で運営していくことになるという。

 UUUMの創業者で代表取締役の鎌田和樹氏は自身のツイッターで■《吉本興業さんのYouTubeチャンネルをUUUMにて全力サポートさせて頂きます》でツイートし、コラボ第一弾として、カジサック(キングコング梶原雄太)のチャンネルに、UUUMのトップクリエイターであるHIKAKINがゲストとして登場した。

 これまでは、仕事が少なくなってしまったり、あるいは居場所がなくなった芸人がユーチューバーになる例はあったが、多くの人気芸人がYouTubeチャンネルを開設するようになっている。

■テレビの先行きが不安になったらYouTubeと組む?

 実は吉本興業はすでに『OmO(オモ)』というお笑い、ファッション、音楽、グルメ、など様々なコンテンツごとにYouTubeチャンネルをまとめたマルチチャンネルネットワークを運営している。そこに参加している芸人ユーチューバーはカジサックをはじめ、EXIT、霜降り明星から中川家、今田耕司といったベテランまで実に800人に及ぶというのだ。

 今後はこうした吉本芸人たちをUUUMがサポートしていくことになり、吉本のネットワーク事業はさらに巨大化すると思われるが、UUUM側にとっても今回の提携は渡りに船だったという。

「今年4月にUUUMの人気クリエイター・関根理沙さんが退所しました。2月には日本で5位の登録者数(545万人)を誇るトップクリエイターの木下ゆうか(フードファイター)ほか、有名クリエイターが次々と退所しています。

 株価も'19年12月に5000円台だったのが、現在では2000円前後までに下落している状況です。吉本芸人のなかにはクリエイターとしての才能を持つ芸人は多い。そんな“宝物”を多く抱える芸能事務所と提携することで、再浮上を狙っているのでしょう」(広告代理店社員)

 UUUMは公式サイトで、

■《YouTubeチャンネルでのコラボレーションや、合同イベント開催、吉本興業のサポートによるUUUMクリエイターのマスメディアでのキャスティング推進など、両社所属の芸人、タレント、クリエイターのバリュー最大化に向け、様々な取り組みを実施してまいります》

 と発表。提携によってすでにテレビでの露出があるヒカキンや、はじめしゃちょーのようなトップクリエイターの人気急増が見込まれ、さらにクリエイターたちのテレビ露出が増えることになり、たしかに両社にとってメリットの大きいものだったと思われる……が、果たしてそううまくいくのかと、懸念する声もある。YouTubeチャンネルを運営する雑誌の編集者はこう語る。

「■どの程度かわかりませんが、そもそも800ものチャンネルをしっかりとサポートするのは難しいのではないでしょうか。吉本タレントのマネジメントにばかり力を注ぐことになると、自社クリエイターたちのサポートがおろそかになる恐れがあります。そうなればさらに退所者が増え、UUUM自体が崩れることになるでしょう。

■ 今回の提携は既存のクリエイターたちにとって必ずしもメリットがあるとは思えません。心配するユーチューバーは多いです」

 またキー局プロデューサーは“テレビとYouTubeの業界的関係性”についてこう語る。

「■これまで吉本とテレビ局はいわゆる“蜜月”の関係でした。しかし、“コロナでテレビの先行きが不安になったらYouTubeと組むのか”と勘ぐる局員は多いです。

■ また、今は物珍しさもあって、人気ユーチューバーのテレビ出演が見受けられますが、“テレビ的なタレント性”がなければ生き残れるとは思えません。ユーチューバーの主戦場あくまでYouTube。つまり、自ら“企画を立てて、プレイヤーとしても出演しプロデュースも行う”立場です。

■ テレビに出たことのあるユーチューバーの多くからは、進行台本が決められてかつ、チームプレイが要求されるテレビの文脈は“魅力を発揮しづらい”との話も聞きます」

 手放しで喜んでいるのは両社の関係者だけということか。この提携が吉とでるか凶と出るか、それがわかるのはコロナが収束したときか──。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌などで取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。

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