ディーン・フジオカ、“表現者”としてのエネルギーの源「自分をサプライズし続ける」【連載PERSON】

ディーン・フジオカ、“表現者”としてのエネルギーの源「自分をサプライズし続ける」【連載PERSON】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON〜人生を変えたテレビ番組」。今回は、Huluオリジナル『パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル〜』のSeason2(全6話)で主演を務めているディーン・フジオカさんです。

2004年に香港でモデル活動をスタートしたあと、映画『八月の物語』(2005年)の主役に抜擢されて俳優デビューしたディーンさん。その後、台北、ジャカルタなどで活動したのち、2011年に日本へ。アジアの縦軸で活躍する中、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015年)、大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)の出演、映画『Pure Japanese』(2022年)の企画・プロデュースなど、俳優業はもちろん、アーティストやプロデュース業もマルチにこなす表現者として、多くのオーディエンスを熱狂させています。

そして、ディーンさんが『パンドラの果実』で演じているのは、科学犯罪対策室を創設し、最先端科学にまつわる事件の捜査を担当する小比類巻祐一。アドバイザーで、天才科学者の最上友紀子(岸井ゆきの)とともに、法整備や警察機構の対応が追い付いていない犯罪や不思議で不可解な事件、事件の裏に隠された科学そのものを捜査によって解き明かしていく様を描きます。

ディーンさんには、『パンドラの果実』に挑むにあたっての運命的な出会いや主題歌に込めた思い、小比類巻に対して感じていることなどを語っていただきました。

主題歌「Apple」の秘密

――Season1から続いて、岸井ゆきのさん、長谷部勉役のユースケ・サンタマリアさんとの共演です。手ごたえはいかがですか? 

2人とも面白くてムードメーカー。それぞれのスタイルがあって、現場の空気を華やかに明るくしてくれています。僕も、同じ時間を過ごすのであれば、楽しく・いい思い出になった方がいいと思うのですが、そこに対してのパッションを感じるような方々ですね。

――新メンバーの奥田玲音役・吉本実憂さんの印象を教えてください。

彼女はアクションにすごく興味を持っていて向上心があるんです。僕は撮影用に使う武器、ボクシングの道具、運動する機材をたくさん持っているので、それを現場に持っていくと、すごくテンションが上がって盛り上がっていましたね。

――Season2の脚本を読まれたとき、どんなことを思われましたか?

(地上波で放送された)Season1では描けないような配信らしい思い切った展開になっているなとワクワクしました。

――「Huluだからこそできた」と感じたところは?

まずいろいろな銃が使えるようになったし、血のりの質感や分量も変わってきたと思います。あとは音ですね。より、そういった細かいディテールも楽しんでいただけると思います。

――本作のテーマを咀嚼する際、大変だったのか、もしくは、興味深く取り組めたのか、どちらでしたか?

このテーマに関しては、個人的に興味を持って向き合っていました。新しいテクノロジーが生み出すものには光と闇が常にあるわけですよね。社会の構造や法律が整備されて、徐々に人々の日常に恩恵をもたらす形になっていると思うんですけど、最先端の部分って常に価値観が揺さぶられると思うんです。「これをやれたら便利だけど、逆の角度から見れば……」というのは常にあって、何を選ぶかは人類次第。神と悪魔の対話みたいだと感じていました。

じつは主題歌の「Apple」を作るときにこだわった部分なんですけど、(さまざまな事件に対応する中で)小比類巻が常に問われてくるわけじゃないですか。小比類巻は、科学がもたらす光を信じたいと思っていて、医学的には死亡と診断されている妻(亜美/本仮屋ユイカ)を冷凍して延命させようとしている……。この行動は側から見たらどう映るのか。人によってはエゴだというかもしれないけど、その行動は愛がゆえなんですよね。

科学の発達が人間をどう揺さぶるのか、テクノロジーに対する興味ももちろんありますし、それが人間たちや社会にどう影響していくのか……個人的には興味を持って挑めました。

――もともとこうしたテーマに興味はあったんですか?

昨年末に『Musical Transmute(ミュージカルトランスミュート)』というライブツアーを20公演したのですが、コロナ禍においては、お客さんが声を出すことができない。どうやれば“そこにいること”を選んでいただいた方に、意味を感じてもらえるのかを考え抜いた結果、初めて脚本を自分で書いて、演出ありきのライブを行いました。

そのとき、インスピレーションのもととなったのが『パンドラの果実』で扱っているような生命工学。「DNA」や「ウイルス」が人類にどのような影響を与えたのかなど、まったく同じところを掘り下げていたタイミングでこのプロジェクトのお話をいただいたので、とても奇遇だと思いましたね。(『パンドラの果実』で)使っている言葉も、自分がメモ帳に書いていたようなキーワードでした。

――本作でも描かれる最先端技術や科学が進んでいますが、ディーンさんは希望を感じているのでしょうか?

状況や使い方次第だと思います。本作は虚構としての物語となっていますけど、そうした世界を疑似体験できるからこそ、実社会においてどういった方向に舵を切ったほうがベターなのか、というディスカッションのきっかけになるのかなと思っています。いち個人では想像力が及ばない部分も、フィクションだからこそ到達できるところもあると思うので、すごくタイムリーだなと思って演じていました。

――小比類巻の気持ちを作るうえで大切にしていたことは?

科学犯罪対策室の室長という立場、家庭の中での父親・夫としての素顔、という構造を作ったあと、中盤で妻を冷凍保存している事実が出てきたときに、そうした決断にいたった思考の流れを、視聴者の方に体験してもらえたらと思っていました。「(小比類巻は)思考を巡らせながらいまの答えにたどり着いたけど、あなたならどうしますか?」と提示できたらなと。

もうひとつは娘との関係ですよね。娘が誘拐されて、最終的に(Season1の)ラストスパートで小比類巻が暴走していく。仕事人としてはあるまじき行為をするんですが、そこも娘を思うがゆえの行動。善悪というよりも、奥深いところで問われている感じになればいいなと思っていました。神と悪魔の対話のような感覚で、どちらも否定できないし、どちらも肯定できない。そういったスレスレの感情をこめて作ったのが主題歌の「Apple」。小比類巻を演じる上で、彼が言語化できない部分を表現した側面もありました。

――小比類巻は亜美の死や各話で描かれる死など、さまざまな死に直面していますが、彼は、それぞれの死について何を見つめていると想像しますか?

もちろん彼も人間が生まれたら死ぬということは理解していると思うんですよ。死を自然ではない形で迎えてしまった人たち、殺されてしまった人たちにおいては、事件を解決していくプロとして、仕事として扱っているわけですよね。でも、一方では医学的に死亡と診断された妻を冷凍保存している……。その矛盾が人間らしいなと思っています。その矛盾も根本には愛があるからなんですよね。最初に脚本を読んだときに、このキャラクターの魅力はそこだなと思いました。

“先輩”中井貴一からのアドバイスに感銘

――ここからは、ディーンさんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。幼い頃、よく見ていたテレビ番組は?

アニメをよく見ていましたね。日曜の朝に放送されていた戦隊モノだったり、『ドラえもん』や『サザエさん』だったり、映画館やテレビでジブリを見たり……。あと、NHKで平日午前中に子供向けの番組をやっているじゃないですか。学校を休んだときにあれを見ているときの罪悪感というか背徳感というか……体調を崩して休んでいるんですけど、あのなんとも言えない気持ちはよく覚えていますね(笑)。

――お気持ち分かります(笑)。『パンドラの果実』のSeason1はTVerで配信されていましたが、TVerはご利用されていますか?

作品をチェックするときにTVerで確認することがあります。あと、自分が出演させていただいている作品が、TVerでどう楽しんでいただけるのかも気になりますよね。制作の方からいい報告を聞くと、やっぱり嬉しいですよ。ランキングがすべてだとは思っていないですけど、そこで1位になって嫌な気はしないじゃないですか。『パンドラの果実』Season1の最終話もTVerさんで多くの方にご覧になっていただいたと聞いて嬉しかったです。みなさん忙しいから、そういったプラットフォームはとても大事だと思います。

――役者をするにあたって感銘を受けた先輩からの言葉はございますか?

いろいろありますが、中井貴一さんに「バラエティも本気でやれ」と言われたことがあります(笑)。番宣でバラエティ番組に出たときに「役者だからと力を抜くのではなくて、そういう場でも全力を尽くそう」と言われて。自分としてはスッと心に入った言葉ですね。

さまざまな番組に出させていただきますが、ただ挨拶して「はい」「いいえ」だけ答えて、ドラマや映画の宣伝をして……と終えることもできるんですけど、そうではなくて、一つひとつの番組や企画にはそれぞれの魅力や特性があると思うので、そこで自分ができることを全力で果たすと、きっと自分も楽しいし、見てもらっている方も楽しいと思うんです。そんな貴一さんの言葉は印象的でしたね。

――ディーンさんは俳優業のほか、アーティストやモデル、映画プロデューサーなどさまざまなジャンルで活躍されています。そのエネルギーやモチベーションはどんなところにあるのでしょうか?

根本のエネルギーは「やりたいと思うからやる」に尽きるのですが、願わくは、それを必要とする人に届けばいいなと感じています。

効率を考えたり、賢く立ち回ったりすることでうまくいく局面もあるんですけど、それだけやっていると、次に何をすればいいのか分かってしまうので、どんどん消化試合みたいになってしまうんですよね。だから、自分をサプライズし続けなければいけないし、刺激を与え続けなければいけないし、自分が楽しまなければいけない。

新しいことをやるときは、必ず障害や困難がつきまとうので、もちろん不自由な状況の中でやらなければいけないこともあります。慣れていない環境でやるとケガをするときもあるけど、その痛みも含めて、次につなげていく。そういう成長の過程なのかなとポジティブにとらえています。

そんな姿を見て「自分も挑戦していいんだ」と思ってもらえる人がいるんだとしたら、そういう姿勢は崩したくないなと思います。ジャンル問わず、言語問わず、そういったチャレンジする機会をいただけるのであれば、今後も前向きにトライしていきたいですね。

(取材・文:浜瀬将樹、写真:松本理加)

■衣装クレジット
ヘアメイク/森智聖 スタイリスト/渡辺慎也(Koa Hole inc)
シャツ?35200カットソー?14850パンツ?29700シューズ?59400(すべてSHAREEF/シャリーフ)

問い合わせ:Sian PR / シアンPR
03-6662-5525

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