『オクトー』福田P、“感情が見える”&“感情&台詞ゼロ”難役に挑む飯豊まりえと松井玲奈の好演を称賛「心の中で芝居をやっている」

『オクトー』福田P、“感情が見える”&“感情&台詞ゼロ”難役に挑む飯豊まりえと松井玲奈の好演を称賛「心の中で芝居をやっている」

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飯豊まりえさんが主演、浅香航大さんがバディとして出演するプラチナイト木曜ドラマ『オクトー 〜感情捜査官 心野朱梨〜』(読売テレビ・日本テレビ系、毎週木曜23:59~)の最終話が9月8日に放送されます。

「感情の“色”は、嘘をつかない」。愛、悲しみ、怒り、嫌悪などすべての事件には動機となる感情がある。取調室において、そうした感情を見ることで真犯人を見つけ出す心野朱梨(飯豊)。彼女には、人の感情が“色”で見える特殊な力がある――。人の“感情の色”が見える変わり者の女性刑事・朱梨が感情見え見えのエリート崩れ男性刑事・風早涼(浅香)とバディを組んで、目に見えない感情から凶悪事件の真相に迫る新感覚の刑事サスペンスです。

今回、最終話を前により物語を深掘りするべく、本作を担当する福田浩之プロデューサーにインタビューを実施。『オクトー』の成り立ちから、キャスト選出の理由まで熱く、じっくりと語っていただきました。

動機と感情に寄り添う新しい刑事ドラマ

――まずは『オクトー』をやろうと思ったきっかけを教えてください。

僕は、過去に同枠の『ブラックリベンジ』(2017年)や『ブラックスキャンダル』(2018年)、日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(2020年)などを担当してきました。

たとえば『ブラックリベンジ』のときは、“文春砲”という言葉が出てきたときで、週刊誌の契約ライターを主人公にしたり、『ブラックスキャンダル』では、当時、大きく取り上げられていた謝罪会見をキーワードにドラマを作れないかと考えたりするなど、“その時代だからこそできるもの”を念頭に考えてきました。

近年、(常人には)理解できない犯罪が増えていますが、報道によると、事件を起こした犯人は、親御さんからの愛に飢えていたとか、周りから期待されてプレッシャーになっていたとか、裏があることがわかった。

殺意は、憎しみだけではなく、愛や期待など、ポジティブなことを究極に突き詰めても生まれるものなんだと思ったときに、『オクトー』の主人公・朱梨の能力 “感情を色で見ることができる”元となる「プルチックの感情の輪」に出会ったんです。これは、アメリカの心理学者であるロバート・プルチックが1980年に提唱した理論なんですが、これと組み合わせて、犯罪者の感情に寄り添った形で、動機を解明する刑事ドラマを作りたいと思いました。

――本作に出てくる犯罪者たちの犯行には必ず理由があります。そのあたりもしっかりと描かれていますよね。

ニュースでは、犯行動機までは報道できても、どういった感情を持ってその動機にたどり着いたのかまでは報道できないじゃないですか。それは相手を憎んでいたからなのか、愛してほしかったからなのか……その人の“感情”は人には見えないし、誰にもわからないもの。

今回、初めて刑事ドラマをオリジナルで企画したのですが、犯人探し・トリック解明の作品には絶対したくなかった。犯人がなぜ罪を犯したのかという動機、その動機の奥にある感情に寄り添った刑事ドラマを作れば、今までにない作品になるのかなと思いました。

――もちろん犯罪は100%肯定しませんが、犯人の感情がわかることで、なぜ凶行に及んだのか、その理由に近づくことはできるかもしれませんよね。

究極をいうと、このドラマを見ることで“ニュースの見方”が変わればいいなと思っているんです。犯罪に共感する必要はまったくないのですが、犯人の心の奥にあった感情がわかったとき、そういうことがきっかけでも、人は凄惨な事件を犯すことがあるんだなと感じていただきたい。変な言い方になるかもしれませんが、“自分ももしかしたらこうなるのかも……”と身近に感じてもらえたらなとは思っていました。

プライベートを種にして物語を作る

――『ブラックリベンジ』や『シロでも〜』など、常に新しさを感じるオリジナル作品を生み出す福田さん。作品作りにおいて、共通してこだわっているものは?

“一番のオリジナル”って結局、自分のプライベートなことだと思っていて。キャラクターに自分のプライベートを組み込むと、僕が正解を持っているので答えに辿り着きやすくなるんです。僕は、4年前に妻が亡くなったんですが、『シロでも~』の主人公もまさに片親なんですよね。

『オクトー』の警視庁次長・平安衛(船越英一郎)と涼の関係もそうで、平安が子供(涼)を置いて仕事に没頭していましたが、子供はそれでも父親に憧れて警察官になった。じつは僕、ドラマをやっている間は、子供を実家に預けていたのですが、子供は僕の作るドラマが「好きだ」と言ってくれていて……。そういった自分の親子関係を重ね合わせるなど、パーソナルな部分を取り入れようと心がけています。そうすると、極端な話『オクトー』を自分の子供として接することができるんですよ。

――プライベートの要素を組み込んで作品にアウトプットされていく一方で、インプットはどのようにされているんですか?

ニュースを毎朝見て、ニュースに出てくる登場人物でドラマができないか考えています。たとえば、動物園のキリンが脱走したニュースがあったときに、その飼育員さんを主人公にしたらどんなドラマができるのか、それをラブストーリーにできないか、そういったことを毎日考えていますね。

オリジナル作品を作るにあたって、(インプットのために)小説を読むと影響を受けて似たものになってしまう。なので、むしろ子供の気になる言動などをメモするようにしています。たとえば、うちは大きな公園の近くに住んでいるのですが、撮影が終わったあと、1人でグッタリしていたら「パパ、1人でいるのがしんどいんだったら、“パパが好きになる人”を僕が公園で探してきてあげる」と言ってくれたんですよ。その発想ってなかなかないじゃないですか。そういうのはメモに残し、イメージを膨らませて、ドラマに生かすこともあります。

『オクトー』キャスティング理由が明らかに

――ここからはキャスティングについて聞かせてください。飯豊さんを主演に抜擢した決め手は?

朱梨は15年前に親を殺されて、姉・紫織(松井玲奈)の感情を取り戻すために刑事になったし、特殊能力を身につけたがために、いろいろな犯罪者と向き合わなければならなくなった……事件がなかったら、違う仕事をしていた普通の女の子だったと思うんです。

だから、いろいろなものを背負っている女の子を表現するため、ヒーローではなく等身大の人間味のある芝居ができる方を探していました。(飯豊が出演している)ドラマ『岸辺露伴は動かない』を見ていても、いい意味で普通で可愛い。彼女に毎話、凶悪犯罪者と向き合わせたら、苦しいだろうなと思うのと同時に、視聴者の方が背中を押してくれるだろうな、という思いがあってお願いしました。とにかく“強くない”がキーワードでした。

――飯豊さんは身近にいそうな人物をうまく演じていらっしゃる印象があります。

そうなんです。そういった演技が抜群にうまいので“身近にいそうな子がこんなことに!”という狙いですね。

――浅香さんはいかがですか?

浅香さんって殺されたり、裏があったりする役が多かったので、そろそろまっとうなバディをさせてあげたいなという思いもありつつ(笑)、大変な朱梨を支えるお兄ちゃんとして横にいてほしいなと思っていました。バディとして成長していく流れであれば、これまで浅香さんが演じた役にないパターンですし、そっちにふりたいなと思いました。

――そのほかのキャスティングはいかがでしょうか?

警部・雲川幸平役の山中崇さん、南条貴広役のラランド・ニシダさんはとにかく仕事がしてみたかった方々です。特に飯豊さん、浅香さん、山中さんって共通して、自分の演じる役について葛藤される方たちなんですよ。毎カット「今のでよかったですか?」と聞かれるんですが、本作はオリジナルなので、答えがない分、そうやって聞いてくださることはとても大事なこと。さらに3、4話と撮影が進むにつれて、台本が届いた翌日に「自分はこうしたい」「こう言わせたい」と電話がくることもありました。一緒にキャラクターを作っていけたので、本当にありがたかったし、その分楽しかったです。

ニシダさんについては、南条の行く末は決まっていたので、刑事課にいるコメディリリーフかと期待させておいて……と視聴者の方をびっくりさせたい思いはありました。

――キャストから“こんな感情を引き出したかった”という意味で印象に残っていることは?

松井さんは『ブラックスキャンダル』のときに狂気的な役をやっていただいたので、また一緒に面白いことをしたいと思っていました。どうしようかなと考えているときに、いっそのこと、まったく喋らない感情のない役。でも何かを抱えているんだろうな……という役をやってみませんかとお声がけさせていただき、乗ってくださったのが、とても大きいです。紫織という役はキャスティングが大変だなと思っていましたが、松井さんが「やってみたい」と。

松井さんは撮影の合間もまったく喋らない徹底ぶり。台詞はないのですが、ずっと心の中で芝居をされているから、1シーン撮るたびにヘトヘトになるんです。これはなかなかすごかったですね。朱梨役の飯豊さんが紫織の前で涙を流せたり、彼女への思いを膨らますことができたりしたのは、(受け手が)松井さんだからこそだと思いました。

――そのほか、現場で印象に残ったエピソードを教えてください。

船越さんは41年にわたって様々な刑事ドラマをされていますが、キャスト・スタッフに「俺が今までやってきた中でもこんな刑事ドラマ見たことない。自信を持ってやった方がいい」と言ってくださっていて。現場のモチベーションの上げ方がすごいなと思いました。このドラマに寄り添って向き合ってくださっているし、若いキャストにもある種、父親のような存在でいてくれているなと思います。

9話で平安と涼が対峙するシーンは、船越さんと浅香さんが話し合ってできたシーンでもあるので、圧巻でしたし、親子関係を大切にしてくれたからこそ生まれたシーンだと思います。心野姉妹も含め、みなさんが真摯に役と向き合って演じているのを見ると、キャスティング冥利につきるなと思います。

――視聴者的には、感情が色で見えるのでわかりやすいのですが、逆に犯人を演じる役者さんは難しかったのではないかと想像していました。

犯人役の人は、本当の感情とは違う表情をしないといけない。放送されるまではどうなっているのか(どう編集されているのか)わからないので、そのシーンを皆さん丁寧にやってくださった印象があります。だからこそ、自分の感情を表現できるラストの取調室や事件解決後の芝居は、みなさん爆発力がすごくて……。今まで我慢していたものを取り戻すかのように演じてくださっていました。

このドラマは、ある種『古畑任三郎』みたいなもので、犯人と向き合う取り調べが面白いので、犯人側のキャストはじっくり考えましたね。とにかく芝居ができること、感情表現を本気でやってくれる方にお願いしました。

――最後に見どころを教えてください。

最終的には、やっぱり朱梨が家族と向き合う話にしたいと思っているので、親、姉に対してどういう感情をみせるのか。その感情でどう物語が展開していくのか、しっかり終着できればいいなと思っています。あと、朱梨自身が最後にどういう感情を抱くのか、最後までハラハラできるラストになっていますので、楽しんでいただければと思います。

(取材・文:浜瀬将樹)

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