湯浅弘章監督・プロデューサーが語る『潜入捜査官 松下洸平』撮影の裏側

湯浅弘章監督・プロデューサーが語る『潜入捜査官 松下洸平』撮影の裏側

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俳優の松下洸平さんが本人役で主演を務めるTVer初のオリジナルドラマ『潜入捜査官 松下洸平』が現在配信中。

芸能人・松下洸平は実は警視庁の潜入捜査官で、“マフィア幹部”と噂される俳優・佐藤浩市の疑惑解明のため、任務として15年前から芸能界に潜入し捜査をしていた、という設定で繰り広げられるサスペンスコメディです。

TVerプラスでは、企画・プロデュースの小原一隆氏、監督の湯浅弘章氏、現場プロデューサーの唯野友歩氏に独占インタビュー。在京民放5局で実際に放送されている人気バラエティ番組も登場する、前代未聞のドラマが完成するまでの舞台裏に迫りました。

小原P×湯浅監督、チャレンジングな作品で初タッグ!

――まずは、みなさんの関係性から教えてください。

湯浅:僕と小原さんは、完全にはじめまして、ですね。

小原:僕と唯野さんは一度、映画『とんかつDJアゲ太郎』でご一緒させていただいて。監督に関しては(湯浅監督が演出した)映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を観ていて、「良い監督がいるな」と思っていました。そんな中、テレビ東京の浅野(太)プロデューサーからの推薦もあり、唯野さんを通してお願いしたら奇跡的にスケジュールが空いていたと。

唯野:僕は監督の作品をいろいろと観てきて、アーティスティックな映画を撮るのに、連ドラもたくさんやっている、あまりないタイプの方だなと思っていました(笑)。

小原:たしかにそれはありますよね。しかも、『チェリまほ』(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)のような作品から『Sister』みたいなサスペンスまで幅広い。面識はないものの、何でもできる監督だなというイメージがあったんです。今回はテレビ局や映画も舞台になるので、それぞれの裏を知っているということも含めて、監督にお願いするのが一番いいのではないかと思いました。

――湯浅監督はオファーをもらったとき、どんなお気持ちでしたか?

湯浅:内容を聞く前に「一度会ってみましょう」ということでお会いして、あらためて内容を聞いて「やっちまったな」と(笑)。バラエティとコラボするなんて、絶対に大変じゃないですか。でも、すごくチャレンジングな企画ですし、是非やりたいと思いました。

――撮影に入る前、作品についてどんなお話をされましたか?

小原:サスペンスとコミカルが混在した“サスペンスコメディ”にしたい、というのは最初からありました。なので、そこだけは外したくないという話をしつつ、監督からは「バラエティ番組の番宣感が強くならないようにしたいね」と。それと企画の段階から、「ぜひ浩市さんをキャスティングしたい」と監督に伝えていました。

――出演許可をいただいたときには、どんなお気持ちでした?

湯浅:決まっちゃったよ……本当に出てくれるの? って(笑)。

小原:しかも本人役ですからね。松下さんも馬場(ふみか)さんも、本人役で出ていただくということが本当に叶うのかと、半信半疑のまま脚本作りが進んでいきました(笑)。

湯浅:現場では、松下さんや浩市さんから「こういうことは言わないだろうな」「こういうことを言ったらどう?」とたくさんご提案いただきました。浩市さんのゴルフの練習道具とか、私物ですからね(笑)。浩市さんは次の作品の現場でも、「こないだ撮った作品が面白くてさ」と話してくれているみたいで、本当にありがたいです。

主演・松下洸平への厚い信頼「最後にカチッと決めてくれる」

――主演を務める松下さんの印象を聞かせてください。

湯浅:すごくいい人です。現場でもスタッフとちゃんとコミュニケーションを取るし、一緒にやっていると、こっちも楽しくなるような役者さんですね。もちろんお芝居も上手いし、アドリブについていくのも上手いし、今回はバラエティからアクションまで、いろいろと頑張ってくれました。

――「台本以上のシーンになった」と感じた場面はありますか?

湯浅:やはりラストシーンですね。そこまでどんなにコメディで遊んでも、最後にカチッと決めてくれる、というのがあったので。

小原:監督に聞きたかったんですけど、ラストシーンを撮る日に、本当は他の細かい撮影も入っていたじゃないですか。それが前日にズレましたよね?

湯浅:あれは単純に、僕が撮るのが早すぎただけです(笑)。でも、絶対にそのほうがいいとは思っていました。最後の日はラストシーンの撮影だけにしてあげたほうが、気持ちが楽だろうなと思って。ご本人も大事なシーンだとわかっていたし、「あそこに持っていこうね」と初日からずっと話していたので、テイクも一発でした。今日映像が完成しましたけど、本当に泣けますよ。

――映像を観るのが楽しみです。コメディとシリアスのバランスについては、どんなことを意識されましたか?

湯浅:基本的には台本の通りですが、ちょっと前半が重すぎるなと思ったら、コミカルな芝居をしてもらったりすることはありました。たとえばマフィアのシーンとかはどうやってもシリアスになってしまうので、その前後のシーンはちょっとコミカルにしよう、みたいな。

小原:結果、すごくバランスがいいですよね。ずっと緊張しっぱなしで見なくてもいいし、逆にそれがあるから次の緊張感が際立つというか。

――現場の流れで、「ここはちょっとコミカルにしてみよう」みたいなこともあったと。

湯浅:そうですね。あとはシリアスバージョンとコミカルバージョンを両方撮っておいて、編集でどちらかを選ぶこともありました。

――演者さんはサッと対応できるものなんですか?

湯浅:松下洸平ですよ?

――そうでした(笑)。

本人設定ドラマだからこそ譲れない“リアリティ”

――すごく雰囲気のいい現場だったと聞いていますが、実際いかがでしたか。

唯野:本当にみんな仲が良くて、楽しい現場でした。監督がそういう空気作りをしてくださったのは大きいと思います。

湯浅:浩市さんが場を柔らかくしてくださったのもありますね。最初の衣装合わせのときに、「マフィアの佐藤浩市です」と挨拶されたりして(笑)。それでみんながほっこりして、緊張しなくてもいいんだ、という空気を作ってくださったと思います。さっきメイキングを見ましたけど、本当にみんな楽しそうでした(笑)。

唯野:最後にならわしで撮る集合写真は、見学の方たちも映り込む形で撮ったんですよ。

湯浅:見たことないですよね、笑顔のギャラリーがいるっていう(笑)。

唯野:みんなニコニコの集合写真。あれを見たときに、本当に良い現場だったんだとあらためて思いました。

――撮影を終えた今、湯浅監督にお願いしてよかったと感じることを教えてください。

小原:現場の雰囲気作りも含めて、やはり全体的にスムーズでした。本作りが難航したときにも「このシーンをもっとコミカルにした方がいい」とか、監督から的確な一言が入るんですよ。現場のことはお任せですし、プロデューサーとしては楽でした(笑)。

唯野:思い切りがいいんですよね。「ここのシーンいらない!」みたいな。

湯浅:僕が迷うと現場が止まってしまうので、迷っていても「こっちで」と決めちゃうんです。正しいかどうかは置いておいて、監督業としては決断と判断の速さが大事かなと思っています。

唯野:でも、粘るところはものすごく粘るんです。世界観を作る上でのこだわりなので、当然のことなんですけどね。

小原:確かに細かいこだわりはあるかもしれないですね。キューブに貼ってある藤木直人さんのポスターとか、役者事務所の紙とか、リアルにこだわっていらして。

湯浅:本物設定のドラマとなると、やはりリアリティの種類が変わってきますよね。そこで偽物を使っちゃうと興ざめしてしまうので、絶対に守らなきゃいけないラインかなと思っていました。

――“リアル”というのが、大事な要素だったわけですね。

湯浅:そうですね。そこを妥協してしまうと、失うのものが大きいので。朝ドラの『スカーレット』なんて、その単語を使うだけで面白いじゃないですか。そういったリアリティの面白さって、あると思うんです。

まさかの経緯で天海祐希が出演!?  今後のコラボドラマの展望は?

――作中で、特にお気に入りのシーンを教えてください。

小原:僕は台本にはない、天海祐希さんが出ているシーンが好きです。

――最初から天海さんの出演が決まっていたんですか?

小原:いや、松下さんが俳優として駆け出しの頃に“大物俳優のエキストラをやっていた”というシーンを撮りたいとは思っていましたが、相手役は決まっていなくて。ちょうど『合理的にあり得ない』をやっていたときに、天海さんが仲の良い浩市さんに「洸平くんのこと、よろしくね」と連絡を入れてくれたみたいなんです。それを浩市さんから聞いて、天海さんに相談したら出ていただけることになりました。だから、ドラマの中で浩市さんが「天海祐希から『よろしく』って連絡があったよ」と言っているのは、アドリブだけどリアルです。本当に急遽決まったので、台本も監督に書いていただきました。

湯浅:台本を書くのも、すごく楽しかったですね。天海さんも楽しそうでしたし、2人のアドリブも息ぴったりでした。

――ドラマを制作する上で、「実は……」という裏話はありますか?

小原:第3話の『あざとくて何が悪いの?』で顔についたゴミを取る話が出てきますが、(ドラマの撮影は)その収録の“前のシーン”を後から撮るスケジュールだったので、監督から「『あざとくて』のゴミのくだりを前のシーンに活かしたい」とご提案いただきました。もともと台本にあるように見えると思いますが、実際はバラエティ収録を経て、ドラマの台本が変わったシーンです。

湯浅:あれが一番、コラボ感がありますよね。バラエティとドラマがシンクロするって、こういうことかと。あとはやっぱり『全力!脱力タイムズ』ですね。すさまじい分数カメラを回していて、その間ずーっと松下くんが有田(哲平)さんから無茶振りされているんですよ。

――それはすべて有田さん発信で?

湯浅:あれこそ台本ないですよね?(笑)

小原:ないです(笑)。“反省会に松下さんが呼ばれて足止めを食らう”という設定だけでした。有田さんにご挨拶に行ったときに、「収録中にできなかったギャグをやってもらう」とおっしゃっていましたけど、松下さんには特にそういうシーンになるよ、とも言わずに(笑)。

湯浅:もう充分、撮れ高があるなと思ってカットをかけたら、「え、監督こっからだよ?」って(笑)。そこからがすごかったです。唯野さんはずっと笑ってましたよね?

唯野:本当に(笑)。計算して笑いをつくったんだ! と思いました。

――配信を間近に控えて(取材は8月)、自信のほどはいかがですか?

湯浅:民放5局とのコラボドラマは今までにないですし、とはいえ色ものドラマではなく、ちゃんと押さえるところは押さえたドラマになってるので、かなり手応えはありますね。

小原:物見遊山で観に来る方もいると思いますが、ドラマとしての完成度も非常に高いので、きっとコアなドラマファンにも満足してもらえるかなと思います。

唯野:笑って泣いて、本当にジェットコースターみたいな作品です。観ていて気持ちがコロコロと変わるので、とても楽しいと思います。

――今作を通じて、今後見えてきた可能性はありますか?

湯浅:本物の酒を飲むバラエティに潜入して、酔っ払って本当のことを言いそうになる、みたいなドラマはできるなと思いました。本当に飲ませるから、何が起こるかわからない面白さもあるだろうなと。

唯野:僕はもうずっと言ってますけど、ハリウッド映画とのタイアップですね。日本じゃなくて、ハリウッドに潜入捜査するっていう(笑)。

小原:僕はローカル局で、ロードムービー的なものがやりたいです。この作品を制作するまでは、放送局がこんなに協力的にやってくれると思っていなかったんです。大変は大変でしたけど、意外とみなさん面白がってくれたので、可能性は広がった感じがします。監督は「ドラマでやりたい」ともおっしゃっていましたよね?

湯浅:そうなんですよね。たとえば月9の1話に松下くんがゲストで出る、みたいなものだったら、向こうの役者さんともコラボできる。今回は出ていますけど、本来、役者さんってそんなにバラエティには出ないじゃないですか(笑)。なので、ドラマ同士のコラボができたら面白いなと思っています。

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